Interview

谷口朝陽(西武育成2位)、自ら気づいた「無限の可能性」、登板わずか3試合でNPB入りの驚くべき背景<インディゴソックス ドラフト指名6人全員インタビュー④後編>

2023.12.18


西武から育成2位指名を受けた谷口朝陽内野手(広陵出身)。高校時代は、広陵の控え投手。ベンチ入りは1回のみだった。高い身体能力は注目されていたが、ケガもあって力を発揮できなかったのだ。

谷口は「1年でNPBに行く」という大きな目標を立てて徳島インディゴソックスに入団。わずか1年で、NPBへの扉を開くまでの軌跡を追う。

▼インタビュー前半はこちら
高校補欠選手が1年後NPBへ! 西武育成2位・谷口 朝陽の「徳島夢物語」<インディゴソックス ドラフト指名6人全員インタビュー④>
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150キロを投げるためにフィジカルを鍛える

「1年でNPB入り」。この大きな夢を達成をするために、課題だったのはフィジカルだ。
「チームメイトは全員大学生以上で先輩ばかり。まず体つきから違いました。なので、入団前からも含めてフィジカルを強化して、先輩たちに負けない大きい体、そして絶対に150キロを投げることを目指しました。そこに俊敏性、敏捷性といったスピード系、柔軟と、自分のフォームにあわせて必要なトレーニングを全部やりました。
もちろん闇雲にやったわけではありません。自分の場合は広陵の時から投げる際、肘を曲げたままで、『引っかく』みたいなイメージで投げていました。まずはそのフォームをイメージするところから始めました。そのなかで、リリースの瞬間に肩で投げるイメージが沸いてきたので、肩などイメージに従って必要な部位を鍛えるようにしました」
谷口はトレーニングと治療ができるチームの施設「インディゴコンディショニングハウス」に通い詰めた。

谷口が掲げた目標は、150キロを投げることだった。
広陵のとき、コントロールが一番の課題だったんですが、スピードも決して速くなかったんです。だから『とにかくどちらかをまずは求めよう』というなかでスピードを選んだんです。徳島投手陣は全員スピードが速いので、誰よりも速い球を投げないと目に留まらないと思ったんです。だからスピードでアピールすることにこだわりました」

インディゴソックスのトレーニングメソッドを受ければ、投手の球速は最低5キロはアップする。広陵時代は最速145キロだった谷口の球速も153キロまでアップした。

「わずか3試合登板でNPB入り」の真相

谷口朝陽が指名を受けた瞬間

しかし、「投手」谷口には大きな問題があった。
「一番の課題だったコントロールを克服するまでには至らなかったんです。やっぱり制球が悪ければ四球をきっかけに失点に繋がるので、信頼できないと思うんです。もちろん打者を抑えるためには球速も絶対必要だと思っているんですが、コントロールと両立できなかったのは自分の実力不足だったと考えています」

リーグ戦での登板はたったの3試合。それでもNPBに入れたのにはわけがある。改めて書くが、谷口は投手ではなく、野手として指名をうけたのである。
インディゴソックスの荒井健司オーナー兼GMが内幕を話してくれた。
「谷口の身体能力の高さは非常に魅力的で、チームとしては投手よりも野手としての可能性を感じていました。実際に試しに打たせてみると、球団でも一、二の飛距離だったんです。なので入団直後に二刀流を薦めました。しかし本人は『ピッチャーに専念したい』という。
球団としては、本人の意思を尊重して、今年は投手をやりながら、徹底的にフィジカルを鍛えて、ケガの多かった身体を強くする。2年目に二刀流なり野手を経験させてNPBを狙う。そんな考えでした。
しかし、西武ライオンズさん含めいくつかの球団は谷口の可能性の大きさに目をつけてくれていました」

谷口もすでに気持ちを切り替えている。
広陵のときからずっと『野手もやってみたらどうだ』と言ってもらっていました。徳島でも『二刀流に挑戦したらどうだ』と言ってもらっていたんです。自分の身体能力に期待してくれていたのはわかっていましたが、自分は投手としてNPBに行きたかった。
というのも、広陵のころは、周りに能力の高い仲間ばかり。自分の身体能力なんてまだまだだと思っていたんです。自信というより『負けたくない』をモチベーションにしていましたから。
ただ今回、西武が野手で自分を指名してくれました。これからは自分のポテンシャルに期待しようと思っています。まだ守備には不安がありますが、『出来ない』じゃなくて、『やるしかない』。野手で活躍します」
インディゴソックスの厳しい環境の中で、谷口は身体が鍛えられると同時に、自信もついたのだった。

インディゴソックスで得た「感謝の心」

谷口朝陽

NPBで谷口が目指すは、松井稼頭央監督のような「何でもできるプレイヤー」だ。
「動画でプレーを見ていましたが、とにかくカッコいいですよね。左右どちらでも打てて、どこでも守れる。肩も強いので、本当に何でもできる選手だと思いました。ああいった選手になりたいので、しっかり頑張りたいです」

激動の1年を振り返って何が成長したのか、という問いかけに少し考えたのち、谷口はこう答えた。
「この1年で自分を応援してくれる人が増えた。NPB入りをはたしたことを喜んでくれる人がいました。それは徳島に来なければわからなかった。親、先輩、支えてくれたスタッフがいて、ファンに出会えました。その存在を忘れることなく、NPBでもプレーしたいです。
徳島では全部1人で色んなことをやることが多かったので、周りの人への感謝の気持ちが強くなりました。徳島は周りのレベルが高いので必然的に高い意識で取り組みますけど、自分で考えてトレーニングをしないといけないです。
この思いはNPBでも成長の力に変わると思うので、ここまで支えてくれた人たちへ恩返しするためにも頑張ります」

走力を生かした広い守備範囲に強肩、さらにロングヒットを出せるバッティング。持てる能力全てを出しきって、まずは支配下登録。そして西武ドームでの活躍と、谷口 朝陽は徳島インディゴソックスで磨き上げたポテンシャルで大暴れを誓う。
(取材・文=田中 裕毅)

【徳島インディゴソックス指名6人全員インタビュー】他の記事はコチラから

この記事の執筆者: 田中 裕毅

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