試合レポート

【東京】関東一センバツ当確! 抑えの坂井が気迫の完投!8年ぶり5度目の頂点に<秋季地区大会>

2023.11.06


関東一創価の一戦は決勝戦らしい引き締まった好ゲームであった。
創価は、これまでの試合と同じように左腕の森山秀敏を先発に起用したが、関東一はこれまで抑えで登板することが多かった坂井遼が先発した。「彼には気持ちの強さがあるので、彼に任せようと思いました」と関東一の米澤貴光監督は語る。
試合は序盤、両投手の好調な立ち上がりで得点が入らない、緊張した展開になった。3回裏関東一は、この回先頭の7番・市川歩が粘って四球で出塁した。市川が出塁して、8番、9番で送り、1番・飛田優悟や2番・坂本慎太郎で得点を入れるというのが、関東一の得意のパターンであった。しかし鍛え上げられた創価の内野陣はしっかりバントシフトを敷いて、8番・小島想生や9番・坂井に送らせない。それでもワイルドピッチで二死二塁となり、1番、俊足の飛田は一塁ゴロ。森山が一塁ベースカバーに入る。飛田は俊足だけに、アウトになったものの間一髪であった。「あそこはよく守りました」と創価の堀内尊法監督は言う。二塁走者の市川は、平凡な内野ゴロであるにもかかわらず、ホームに還っていた。セーフならば1点が入っているところだった。守る方も攻める方も一瞬のスキも許さない。3回裏の攻防はこの試合を象徴するようなハイレベルな戦いであった。
ピンチを切り抜けた創価は、6番で主将の井路端広明がライトスタンドに入る本塁打を放ち、創価が1点を先制する。この試合で坂井が投じた数少ない失投を井路端は見逃さなかった。

その裏関東一は、2番・坂本慎太郎の中前安打に続き、3番・高橋徹平が打った強い当たりのゴロは、創価の投手・森山の右足を直撃した。結果として1-6-3の併殺となったが、打球が当たった森山は、治療のためベンチに下がる。マウンドに戻った後も、森山の投球のバランスがどうもおかしい。創価の堀内監督がベンチから森山に「大丈夫か?」と声をかけ、森山は手で〇をして応えたが、投球数が増えてきたこともあり、限界に近づいていた。
そして6回裏関東一はこの回先頭の坂本が中前安打。3番・高橋が死球。4番・越後駿祐が送り、5番・熊谷俊乃介の中前安打で坂本が還り同点。中堅手がハンブルする間に高橋も還り逆転した。その後も関東一のチャンスが続いたが、森山に代わってマウンドに立った土居賢士郎が踏ん張り、創価も持ちこたえる。
関東一の坂井は、井路端に本塁打を打たれた後は1人の走者も許さない。「チェンジアップやカーブが低めに決まり、テンポよく投げることができました」と坂井は言う。8回表には左翼手の坂本のファインプレイもあり、創価は攻撃の糸口を見いだせない。
創価投手陣は苦しい投球が続き、7回裏も一死満塁のピンチを迎える。ここで関東一の5番・熊谷は3ボール0ストライクで押し出しのピンチ。7回裏の途中から土居をリリーフしている長谷川輝は、1球ストライクを投げた後、熊谷は三ゴロを打つ。創価の三塁手・中川俊則は落ち着いて処理し、まず三塁ベースを踏んだ後、本塁に送球し、捕手の井路端が三塁走者にタッチして追加点を許さない。
しかし8回裏の関東一の攻撃で四球の走者が二塁に進み、一死二塁になったところで創価は投手を長谷川から川瀬優吾にスイッチする。ここで8番・小島が三塁打を放ち、1点を追加。小島も9番・坂井の中犠飛で生還し、さらに1点を追加した。
関東一にとっては貴重な追加点を得て、9回表の守りを迎える。一死後、創価の3番・田村蓮太郎は左前安打を放つ。田村の安打は、4回の井路端の本塁打以来の安打であったが、坂井は落ち着いている。創価の4番・高橋球児を三振、5番の小宮己輝を二ゴロに仕留め試合終了。関東一が8年ぶり5回目の優勝を決めた。
勝った関東一の選手も敗れた創価の選手も試合終了後、涙を流した。それだけ、気持ちのこもった試合であった。敗れた創価の堀内監督は、「すべてにおいて、力をつける必要があります」と語った。創価は高いレベルで決勝戦らしい好ゲームを展開したが、この敗戦を教訓に、さらにレベルアップをしていくに違いない。

関東一に勝利をもたらした最高のヒーローは完投した坂井だ。米澤監督が期待する坂井の気持ちの強さが、緊張の大一番で物を言った。坂井はこの夏、5回戦の日大豊山戦で、延長10回のタイブレークから登板し、敗戦投手になった。先発の畠中鉄心が足を吊った状況での登板。3年生の捕手の衛藤冴仁が負傷で出場できないなど、坂井を責められない状況での登板であった。米澤監督も「彼の責任ではないです」と言う。それでも、坂井にとってつらい経験であったのは確かだろう。そうしたつらい経験をしつつ、3年生や周囲の人たちに励まされ、鍛錬を重ねたことが、決勝戦の好投につながった。
1番の飛田から下位打線に至るまで、足を絡めたスキのない攻撃、堅い守り、左腕の畠中にこの日完投した坂井と、関東一は優勝にふさわしい戦力を持ったチームであった。センバツもあるが、まずは明治神宮大会での健闘を期待したい。

この記事の執筆者: 鎌田 光津希

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