試合レポート

【愛知】準決勝 大府 vs 小牧南

2023.10.30


8回まで投げた大府、注目の長野君

大府が逆転で、県大会ベスト4の小牧南を下して決勝進出

<第136回愛知県全尾張大会:大府7ー4小牧南>◇29日◇準決勝◇阿久比スポーツ村
この秋の県大会では、旋風を巻き起こしたといってもいい小牧南杜若といった私学の強豪校を相次いで下して、秋季県大会のベスト4に進出した。準決勝ではその後の東海地区大会では初優勝を飾ることになる豊川に敗れ、3位決定戦でも豊橋中央に敗れて惜しくも東海地区大会進出の快挙は逃したものの、県大会での健闘は高く評価されていた。今年の、愛知県の21世紀枠代表候補推薦校という声も高い。

大府は、知多地区1位校でシードとして臨んだ県大会だったが、初戦で中京大中京と当たり敗れた。夏も優勝した愛工大名電を、最後まで追い詰めたということでも話題になった。東浦から異動して2年。「ようやく自分の考えがチームにも浸透してきたという感じがしている」という中嶋勇喜監督は、この秋もそうだけれども、「何とか私学4強の一角を食いたいという思いでやっているのですが、いい戦いはできてもまだ厳しいかなというところ」というのも本音だ。しかし、「確実にいい戦いができるようになってきている」ということも実感している。それだけに、この全尾張大会のような大会でも実績を残して、チームとしてはさらなる自信にしていきたいという思いでもある。そんな公立校の両チームの戦い。好試合が期待された。

大府のエース長野 晴太投手(2年)は、この夏に愛工大名電相手に好投したということもあって、注目度も高い。ただ、この秋は県大会からやや調子が下降気味になっていたという。そんな心配もあった中でのこの日の先発である。

大府は初回に、2死一塁から4番・大野 陸真外野手(2年)の右中間三塁打で先制する。しかしその裏、小牧南は長谷 健司内野手(2年)と深井 啓稀捕手(2年)という1番、2番の連続安打で無死一、二塁とする。1死後、4番の鈴木 大路内野手(2年)が左翼線に二塁打して2人がかえり逆転。さらに、捕逸で三塁まで進むと、大池 泰造外野手(2年)の右犠飛でこの回3点が入った。小牧南としては、県大会からの勢いを、そのまま示したといえようか。さらには、前日の1回戦も大成との大乱戦を9対8で何とか凌いできている。

こうして、接戦を制していくことでも、チームとしての自信を高めていっているのではないだろうかと思わせる戦いぶりでもあった。
大府の長野投手は、初回、球が集まりすぎたということもあって、捉えられたが、2回以降は5回まで3人ずつで抑えていく。そして、こうして長野投手が立ち直っていくところで5回、大府は1死から失策と連続四球で満塁のチャンスを作ると、4番・大野が中前打で2者をかえして同点とした。小牧南の𠮷田将人監督は、ミラクル的に上手にスローポールで交わしてきて、この秋の大躍進の原動力でもあった松本 晃征投手(2年)を5回で諦め、6回からは1年生ながら力のある江原 涼太投手を送り出した。江原投手は、気合の投球で、「エイッ!」と、声を上げて投げ込んでくることもあった。ただ、前日の大成との大乱戦で完投し150球近く投げていたということで、その疲労が残っているのではないかという心配はあった。

こうして同点で迎えた7回、大府は1死満塁としたところで6番に途中から入っていた柴 準人外野手(2年)が中犠飛を放ってついに逆転する。さらに8回にも、1死二、三塁から2番・有瀧 和貴内野手(2年)が厳しい球をしっかりとスクイズして、さらに1点を追加する。こうなると、試合の流れとしても大府に傾いていくかなという感じもしていた。

それでも8回の小牧南は、2死から1番の長谷からの3連打で1点を返してなおも一、三塁。同点機も作ったのだが、ここは、大府の長野投手が踏ん張った。そして、9回にも大府は代打・澤田 亮汰外野手(2年)の適時打や、9番・武輪 温翔捕手(2年)の左前打などで2点を追加して、結果的にはこれがダメ押しというような形になった。大府は代打が出たということもあり、9回は2人目としてマウンドに登った蛭川 啓冴投手(2年)が歯切れのいい投球でしっかりと抑えた。

大府の中嶋監督は、「長野は、一時は調子を落としていたのですが、球自体もよくなってきたかなと感じています。チームの戦い方としては、東浦の時から言ってきたことですが、後半勝負ということで、そこからモチベーションを上げていくということはできたと思います。前半は、松本投手の緩い球にハマってしまってフライアウトも多かったのですね。そのあたりは反省点です」と、言いつつも、シーズン最後の大会でチームとしての雰囲気もいいという感触は得ていたようだ。

小牧南は、1番・長谷、2番・深井のセンスの良さが感じられた。安打を打てるポイントを知っているという感じのしなやかな打撃で、これはそのまま伸びていけば、さらに期待できる逸材かなということも言えようか。吉田将人監督としても、「打てる順みたいな感じで打線を組んでいるところもありますが、それがいい形になっているのかもしれません。今日は、8回の3連打の後で同点にしておきたかったところでしたが、そこが痛かったですね」と、試合を振り返っていた。それでも、この秋の戦いでの好成績に関しては、「OBの方たちも、とても喜んでくれていますから、そうしたことも、チームとしての励みになっていきます」と、来春以降に関しても、大いに期待できそうなコメントでもあった。
取材・文=手束 仁

この記事の執筆者: 田中 裕毅

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