試合レポート

愛知産大工vs名城大附

2023.04.17

愛産大工が3点差を追いつき中盤に逆転、注目のエースが締める

愛知産大工vs名城大附 | 高校野球ドットコム
天野 京介(愛知産大工)

<春季高校野球愛知県大会:愛知産大工11-8名城大附>◇16日◇1回戦◇熱田愛知時計120スタジアム

 新型コロナウイルスの蔓延によって、夏の選手権大会が中止となった2020年。その年の夏には、愛知県では代替大会として夏季大会が開催された。そこで決勝まで進出して準優勝となった愛知産大工。それを見て入学してきた世代が今春に最上級生となる。その中の1人として、今秋のドラフト指名候補ということでいえば、愛知産大工天野 京介投手(3年)も、その候補選手として注目されている。

 もっとも、この日の愛知産大工の先発は天野ではなく、背番号10の左腕・赤木 慶次朗投手(3年)だった。その赤木を援助したい打線は、初回から活発だった。1死後、松本 新大内野手(3年)が中前打で出ると、しっかりバントで送り、2死二塁から4番・久保 大輝捕手(3年)の左越え二塁打、さらに澁谷 遼太外野手(3年)の中前打と続いて2点が入った。

 ところが、名城大附もすぐに反撃した。上空は風が強く舞っているということもあって、先頭打者の海老 壱喜内野手(3年)の打球は風にも乗った左翼フェンス直撃の三塁打となった。1死後、畑中 優輝内野手(2年)が中犠飛を放ち1点を返す。4番・豊永 候士朗外野手(3年)も中前打すると、すぐに二塁盗塁を決める。そして、5番・野呂 天祐捕手(2年)の打球は風に戻された感じで右前にポトリと落ちて、これが同点打となった。

 3回に愛知産大工も、森 永遠内野手(3年)の三塁打と2番・松本の右前打で再びリードを奪うが、その裏、名城大附は4番・畑中以下の3連打に暴投なども絡んで同点として、さらに逆転する。なおも代わった2人目の右サイドハンドの内田 愛斗投手(3年)からも2死後、貝沼 絢太投手(2年)自らが左翼線へ2点二塁打を放って6対3とした。

 追いかけたい愛知産大工は4回からエースの天野を投入する。天野自身も、「ベンチの雰囲気が悪かったので、自分が頑張って雰囲気を変えていかないといけないと思っていた。ストレートを中心として抑えて、チームを元気づけていきたいと思っていた」という投球は、最速148キロを表示したこともあるという直球でグイグイ通して4回、5回はすべて三振で抑えた。

 そして、自身の言葉通りチームも元気を取り戻して、5回に死球や暴投に失策もあったが、3点を取り返して同点とした。さらに、6回には7番丹羽 響内野手(3年)と渕山 遼和内野手(3年)という下位の連打で、チャンスを作り、名城大附の先発貝沼を引きずり下ろす。そして2人目・伊藤 琉来投手(3年)に対しても1死満塁から当たっている2番・松本の左前打で2者をかえして逆転。さらに重盗後、佐藤 峻外野手(3年)も左前打で2者をかえしてこの回4点。松本は、この日は4安打と大活躍した。秋から最も伸びた選手と、鈴木将吾監督も評価している。

 愛知産大工は7回にも3人目として登板した1番をつけている渡辺 彗投手(3年)から途中出場の持田 浩太(3年)の二塁打と渕山の三塁打でさらに1点を追加した。

 4~8回まで1人の走者も許さないパーフェクトリリーフで投げていた天野だったが、9回先頭の代打・岩崎 来飛(3年)に当たりそこないながら内野安打を許す。すると、そこから少しリズムを崩して、連打を浴びるなどして2点を献上してしまった。このことに関しては、本人も、「9回のマウンドは反省しかないです。走者を出すと気にしすぎてしまうというところがあるので、そこは今後の課題だと思っています。しっかりと勝てる投手になっていきたい」と、将来の目標もプロ入りに置きながらも、まずは今のチームの中で勝っていくことを一番の目標としている。

 そんな天野に対して、鈴木監督は、「登板してすぐに、チームのムードを変えられたのはさすがと言っていい」と評価した。そして、その背景には、主将でもある久保捕手のリードも大きかったとしている。「いつも、バッテリーには、チームの主力としては人格がないといけない。トップステージを目指していくのであれば、周囲を見られる選手として成長していかなくてはいけない、ということは言っています」という。それが、久保捕手は主将としても、確実に実行できているようになっている。それがチームとしてもいい雰囲気を作っていかれるようになっているのだと捉えている。今大会から夏へ向けて、愛知産大工は台風の目となっていきそうな雰囲気は十分に持っていそうだ。

 一時はリードしていた名城大附は、結局、相手のエース登板で流れが変わったところで、リードを守り切れなかったというのも痛かった。それでも、渡邉修一監督のしっかりとしたチーム指導の確かさは見られていた。風が強く舞っていて飛球処理などは難しいかなという中でも、好守がいくつか見られた。

(取材=手束 仁

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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