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大阪桐蔭や仙台育英が理想か 球数制限に見る投手運用の理想と難しさ

2022.12.31

大阪桐蔭や仙台育英が理想か 球数制限に見る投手運用の理想と難しさ | 高校野球ドットコム
山田 陽翔(近江)

 近年は、投手の球数制限が設けられるなどにより、先発完投型の本格派が減っていることから、継投で勝ち上がる高校が増えている。

 以前なら、高校野球とはいえエース格の投手は、120球ほどで完投をしていたことが多かった。今回、先発完投型の投手を挙げるならば、近江(滋賀)のエースだった山田 陽翔投手(西武5位)ぐらいだろう。

 その山田と夏の甲子園で投げ合った鳴門(徳島)の冨田 遼弥投手(3年)も、予選は1人で投げ抜いた(4試合28イニング)が、100前後でパフォーマンスが下がっており、夏甲子園の初戦、浮いた球の99球目を近江横田 悟内野手(2年)に右中間を破られて逆転を許した。

 さらに、市立船橋(千葉)の逆転劇で話題になった相手の興南(沖縄)の生盛 亜勇太投手(3年)はもちろんのこと、鹿児島実(鹿児島)の赤崎 智哉投手(3年)も100球前後で、落ち始めて最終的には試合終盤に逆転を許した。

 このような展開の背景には、球数制限を意識した練習と実戦の取り組みがあると見ている。以前であれば、エース格の投手はある程度は負荷をかけながら、100球を超えても抑える場面が多々あった。しかし、この世代は新型コロナウイルスの影響で、練習と実戦不足と球数制限が重なってしまい、投げ込み不足などから投げる体力が例年よりも低い傾向の可能性が高い。そのため、先発をどこまで投げさせるべきかが、難しいとも言える。

 現代的で理想的な投手運用はやはり大阪桐蔭(大阪)だ。春は2022年のセンバツ大会の投手起用はバランスが取れていた。夏の甲子園では2022年の仙台育英(宮城)、2021年の智辯和歌山(和歌山)の投手起用は無理なく投げられていた。

[page_break:仙台育英・大阪桐蔭・智辯和歌山の投手データ]
大阪桐蔭や仙台育英が理想か 球数制限に見る投手運用の理想と難しさ | 高校野球ドットコム
仁田 陽翔・湯田 統真・古川 翼・髙橋 煌稀・斎藤 蓉(仙台育英)

 データは下記になる。

・2022年夏の甲子園=仙台育英

古川 翼 8.2回 124球 防御率3.12 8奪三振
斎藤 蓉 14.2回 213球 防御率1.23 12奪三振
髙橋 煌稀 12回 188球 防御率0.75 8奪三振
仁田 陽翔 4回 81球 防御率0.00 5奪三振
湯田 統真 5.2回 122球 防御率6.35 6奪三振

・2022年センバツ=大阪桐蔭

川原 嗣貴 18回 229球 防御率1.50 19奪三振
前田 悠伍 13回 198球 防御率0.00 23奪三振
別所 孝亮 4回 78球 防御率0.00 3奪三振
南 恒誠 1回 17球 防御率0.00 3奪三振

・2021年夏の甲子園=智辯和歌山

中西 聖輝 23.2回 360球 防御率0.38 22奪三振
塩路 柊季 6回 80球 防御率0.00 8奪三振
伊藤 大稀 3.1回 49球 防御率5.40 0奪三振
智辯和歌山高橋令 2回 30球 防御率0.00 3奪三振
武元 一輝 1回 24球 防御率9.00 0奪三振

 この3校を見ると、2番手投手に100球に近い球数から200球前後任せられるかどうか、さらに3番手に関しても、50球前後を投げられる投手が必要になっていく。イニングで見ても、エースの調子が悪くない前提にはなるが、毎試合盤石な体制として回跨ぎを含めた、リリーフに置ける投手や2番手投手に1試合任せられるかも非常に大きい。

 この投手陣のマネジメントこそが、現代の高校野球の理想と言っても過言ではない。

(記事:ゴジキ)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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