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浦和学院7年ぶり出場で4強や全国初の取り組みなど 2022年は躍進と改革の1年に

2022.12.31

 浦和学院が7年ぶりにセンバツに出場しベスト4進出、聖望学園が13年ぶりの甲子園出場、昌平が秋季県大会優勝、初の4地区交流戦開催と躍進と改革の1年であった埼玉県高校野球の2022年を総括したい。

新生・浦和学院がセンバツ・ベスト4進出。華々しい初陣を飾る

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宮城 誇南(浦和学院)

 昨夏後、森士監督が監督を勇退。昨秋からは長男の森大新体制になり初めての甲子園となった浦和学院。センバツは7年ぶりの出場である。

 もちろん、宮城 誇南投手(3年)、金田 優太内野手(3年)、八谷 晟歩内野手(3年)など昨夏の柱となり得るメンバーが残っていたが、森大氏はそこへ冬場の体づくでさらに超攻撃野球という上乗せをする。

 大分舞鶴(大分)、和歌山東(和歌山)、九州国際大付(福岡)を破り、準決勝の近江(滋賀)戦では山田 陽翔投手の前に延長の末サヨナラで敗れるも、フルスイングをする選手が増えた結果、甲子園でも伊丹 一博外野手(3年)、金田、鍋倉 和弘内野手(3年)、高山 維月捕手(3年)の2〜5番まで全員が本塁打を放つという強打のイメージを全国の高校に植え付けることに成功した。

 また、投手陣も準決勝でエース宮城に無理をさせず、他の投手を使った結果の敗戦であり、宮城、金田、浅田 康成投手(3年)、芳野 大輝投手(3年)と左右共に先発完投能力のある最速140キロ超えの投手を複数揃える陣容になった。

 森大新監督の甲子園制覇は次回へ持ち越しとなったが、まずは立派な初陣を飾った。

[page_break:聖望学園が13年ぶりの甲子園出場]

聖望学園が13年ぶりの甲子園出場

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岡部 大輝(聖望学園)

 センバツベスト4、春季関東大会も制した、浦和学院が優勝大本命と言われていた夏の大会であったが、埼玉大会では前評判で大本命と言われる高校が、甲子園にたどり着けない現象が続いている。

 今大会の聖望学園はというと、昨秋はベスト4進出をしているのだが、今春の結果により夏はノーシードでしかも最激戦区のブロック。昌平春日部共栄大宮東上尾などと同ブロックにおり、勝ち上がることさえ厳しい状況。

 だが、一戦一戦勝ち上がるごとに力をつけ、岡部 大輝投手(3年)、東山 陽紀外野手(3年)の2枚看板で乗り切ると、決勝まで勝ち進む。

 一方の浦和学院は順調に勝ち進んだが、準決勝で宿命のライバル・花咲徳栄を倒し迎えた決勝は、ややエアポケットに入ったような状況に。聖望学園はこの試合、岡部が神ピッチを披露し、センバツベスト4の強打の浦和学院打線を4安打完封、1-0で勝利する。

 実は現役時代に上位進出も大事なところでことごとく浦和学院の前に敗れ去ったOBの川畑 諒太氏が、岡部投手に間合いの長短や緩急などプレート捌きの部分をアドバイスし、それが奏功したようだ。

 聖望学園が13年ぶりの甲子園出場を決め、大阪桐蔭(大阪)にこそ大敗を喫したが、甲子園でも1勝を飾った。ちなみに、今夏をもって岡本監督が勇退した。

[page_break:昌平が浦和学院に勝って優勝、これまでの私学4強に変化が]

昌平が浦和学院に勝って優勝、これまでの私学4強に変化が

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昌平の優勝シーン

 新チームとなり、今秋の埼玉は飛び抜けた高校がいない。しかもAシード・花咲徳栄が初戦敗退するなど波乱含みの大会に。その中で昌平は投打にバランスの良さを感じた。

 今年の代は投手陣は左腕エース渡邊 俊輔投手(2年)、浦和学院戦で好投した1年生左腕・石井 晴翔投手、1年生の140km右腕・佐藤 立羽投手や安定感のある佐藤 勇心投手(2年)など枚数も多く、打線は上位下位満遍なく長打が飛び出すなど投打にバランスが良い。

 それを支えているのは旧チームからの柱、4番・捕手で主将の齋藤 陽貴捕手(2年)だろう。リード面では申し分なく、好打者タイプだが、ツボに来れば長打も放つ。内容の悪い試合では自らがチームメートに厳しい言葉を放ちチームを鼓舞できるピッチ上の監督だ。

 地元開催となった関東大会は、スーパーシードで出場も初戦で慶應義塾(神奈川)に打ち負けたが、今年の代のポテンシャルは高い。新チームの浦和学院は田中 樹人投手(2年)、伊藤 充輝投手(2年)、鈴木 夕稀投手(2年)、月野 龍投手(2年)など投手陣がチームを引っ張り、春日部共栄聖望学園山村学園を破り決勝進出。

 関東大会初戦では横浜(神奈川)に敗れたが、まずまずの陣容。旧チームに比べるとやや打線が小粒だが、それでも喜屋武 夢咲外野手(2年)や三井 雄心内野手(1年)など好打者はいる。

 また、秋初の関東出場を決めた山村学園も、右サイドの鹿島 駿吾投手(2年)、1年生左腕・西川 歩投手がチームを引っ張り、勝ち上がるにつれ打線も徐々に本領を発揮し関東大会でも1勝を挙げた。

 今大会は昌平山村学園の台頭が目立つ形に。春以降どうなるのか注視していきたい。

[page_break:埼玉の新たな試み。全国初の4地区選抜交流試合開催]

埼玉の新たな試み。全国初の4地区選抜交流試合開催

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鈴木 百太(深谷商)

 野球人口の減少が叫ばれている昨今。埼玉も例外なく部員不足に苦しむ高校は多い。部員が少ないと当然チームとして地区予選を勝ち上がることは難しい。

 現埼玉県高校野球連盟 監督会会長、花咲徳栄・岩井監督が音頭を取り、全国初の試みとなる各校から原則1名の4地区選抜交流試合が開催された。この交流試合を定期的に開催することで、文字通り、他校の選手や監督同士の交流はもちろん、例え所属チームが弱く強豪校にいなくとも、選抜チームで活躍することで、上のレベルで戦うことを望む選手のモチベーションになれば。

 岩井監督も
「レベルの高い生徒の中でゲームをし、何か感じたものを所属チームに持ち帰ってもらえたら。ゆくゆくはこの場に立てることを子供達の目標にしてもらえたら」
と、県のレベルの底上げも含め願望を述べた。

 実際に地区予選で敗退した生徒の中にも、例えば深谷商鈴木 百太内野手(2年)など、今回の交流試合で目立った選手もいた。是非、今後も定期的な開催を望みたい。

(記事:南 英博

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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