試合レポート

日本ウェルネス沖縄vs佐賀北

2022.10.24

全てが勉強、全てが良い経験

日本ウェルネス沖縄vs佐賀北 | 高校野球ドットコム
上原律己

 <第151回九州地区高校野球大会:日本ウェルネス沖縄6-2佐賀北>◇23日◇1回戦◇タピックスタジアム名護

 「このようなグラウンドコンディションは、僕らはほぼ経験がない。勝つことも大事だけど、粘り強くできたことは良い経験になったかなと」。試合後、日本ウェルネス沖縄・五十嵐監督は、今ではなくもっと先を見据えた言葉を発した。学校のグラウンドがない日本ウェルネス沖縄の野球部は、毎日球場やその他のグラウンドを借りて練習を重ねている。

 「もちろん、雨でぬかるんでいるときは、どこにも貸しませんからね」。この新チームになって、公式戦でも雨が降ったことはなく、練習試合で1度あったくらいだという。その中で、九州地区高校野球大会初出場の日本ウェルネス沖縄が、甲子園優勝経験校の佐賀北に勝利したことは、何ものにも変え難い大きな喜びであり、良い勉強、良い経験となった。

初回で明暗分かれる

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大濱安綺

 初回、佐賀北は先頭の田中 幹太郎内野手(1年)が右前安打で出塁するも、盗塁失敗。2番・山下 大晴内野手(2年)も左前に運んだが、次打者が併殺プレーに倒れ、2安打ながら3人で攻撃を終了してしまう。するとその裏、日本ウェルネス沖縄はエラーとヒット、犠打、四球で満塁のチャンスを得る。ここで5番・大濱 安綺内野手(1年)が中前へ運び先制点。その後、エラーと暴投で難なく3点をボードに刻みこんだ。

 4回にも1点を加えた日本ウェルネス沖縄。投げてはエース上原 律己投手(2年)が、2回から5回まで佐賀北打線をノーヒットに抑える快投を見せた。

 このままでは終われない佐賀北は6回、2死から2番・山下、3番・星野 功旺外野手(2年)に連打が生まれて二、三塁のチャンス。「ストレートに強い好打者。キャッチャーの新城と話して、申告敬遠しようと」。上原は4番・小柳 啓誠捕手(2年)との勝負を避け、5番・中村 太飛内野手(1年)と対峙。見事、右飛に斬ってとった。

粘る佐賀北。最後はエース対4番

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二塁打を放つ小柳

 だが佐賀北も7回、2死二塁から9番・山口 大翔外野手(2年)が左前へ運ぶ適時打で二走の末次 侑太外野手(2年)が生還。「さあ、ここからだ」と意気上がるベンチだったがその裏、マウンドの宮副 愁司投手(2年)と内野手の連携が合わず牽制ミスで二走を三塁へ進ませてしまう。

 ここで日本ウェルネス沖縄の上原が、センターへ高々と打ち上げる犠牲フライ。流れを渡さないとばかり、投打で躍動する上原。8回、小柳に二塁打を浴び1死二、三塁のピンチにも、センターへ抜けようかという当たりを、自ら処理しての投ゴロと二ゴロに斬り得点を許さない。9回も2死走者なし。勝利まであと一つと迫ったが、ここから佐賀北も見事な粘りを見せる。

 前打席で適時打を放っている山口がセンターとライトの間に落とすヒットで出塁すると、1番・田中の打球はレフトの頭上を襲う適時二塁打。続く山下は、雨で滑った球が頭に当たる死球。タンカで運ばれる山下を見送る中、「やっぱり気になって。(集中は)難しかったのですが、何とか切り替えていこうと」した上原だったが星野に四球。満塁で前打席に二塁打を打たれた小柳との勝負。

 4番かエースか。この試合、一番の盛り上がりを見せた上原の144球目を捉えた小柳だが、思い切り引っ張った打球は三塁手のグラブの中へ。當銘 愛渉内野手(2年)が三塁のベースを踏んでゲームセット。

 上原の活躍が一番の勝因だが、雨と悪いグラウンドコンディションの中、エラー4つに暴投2つの佐賀北に対し、エラー1つ、暴投1つと、日本ウェルネス沖縄の野手陣の堅守も光った。「クロスファイヤーで来る、インコースが抜群でとても良い投手でした」と五十嵐監督。九州大会初出場の日本ウェルネス沖縄が、見事初勝利を飾った一戦だった。

(取材=當山 雅通

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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