大野、新垣を取材したころの「沖水」が復活する予感
春季県大会を優勝した沖縄水産ナイン
今年もいよいよ高校球児の夏がやってくる。6月7日には沖縄で夏選手権の組み合わせ抽選会が予定されている。6月18日には甲子園を目指した戦いがスタート。今年はどのチームが7月17日に予定されている決勝戦で笑顔を浮かべるのだろうか。
今年の沖縄勢力図で「復活」の2文字を実現させようとしているチームがある。
沖縄水産だ。昨年秋は4強に進んだ。優勝した興南との準決勝では延長14回タイブレークの末に7対8で敗れる惜敗だった。今年の春は優勝した。実に25年ぶりのことだった。全国優勝の経験がある沖縄尚学に快勝しての結果だった。のちにダイエー(現ソフトバンク)で活躍した新垣渚投手を擁して1998年春夏連続で甲子園に出場したあの強さを復活させようとしている。
2016年に就任した上原忠監督が、2年連続夏甲子園準優勝という沖縄水産の一時代を築いた故・栽弘義氏の教えを引き継いで、復活への道のりを実現させようとしている。中部商、糸満で甲子園出場を経験して「優勝請負人」とまで言われている。「今日はエンジョイベースボール」といい、この春の決勝戦を勝ち抜いた。
「栽さんが残してくれたものを我々が残していかないといけないんです」。
3年前に上原監督を取材した時に熱く語っていた言葉がよみがえる。興南が春夏連覇、沖縄尚学はセンバツで2度、全国優勝を経験している。今や沖縄の高校野球のレベルアップは全国が認めるところだが。その裏には、弱かった時代に苦労して沖縄の高校野球の土台を作った人がいたことを忘れてはならない。豊見城で全国区になり「沖水」で優勝を狙えるチームを作り上げた栽元監督の遺志は上原監督に引き継がれている。就任から6年。それが実りを迎えようとしているのだ。
思い返せば、大野倫投手を擁して準優勝した91年の甲子園が自分自身の甲子園初取材でもあった。98年新垣を擁した春夏連続甲子園出場も取材する縁に恵まれた。あのころのように、新垣などのスター選手に頼らない全員野球を実践する「沖水」ナインが、再び夏甲子園で躍動する姿を見たい。
(記事:浦田 由紀夫)