アイシングの「マスク作用」に注意しよう
特に成長期にあるアスリートはアイシングの「マスク作用」に注意しよう
投球後に肩や肘を氷などで冷やすアイシングは「必ず行う」という選手がいる一方で、「アイシングをしない方が調子がいい」と感じる選手も少なくありません。アイシングはメリット・デメリットの両方が混在しますが、明らかな炎症症状が見られる場合は患部を冷却し、他の組織が炎症によるダメージを受けないようにすることが大切です。以前に書いたコラムもぜひ読んでみてください。(参考コラム:ケガをしたときに行うアイシングのメリットとデメリット)
さて今回はアイシングの「マスク作用」というお話をしたいと思います。皆さんが普段着用するマスクからも想像できると思いますが、マスクというのは「覆うもの」。アイシングを行うことは痛みを軽減させることにつながるものですが、これが習慣化してしまうと本来気がつかなければいけないレベルの痛みを「覆ってしまう」「隠してしまう」ことになって、ケガを悪化させる可能性が指摘されています。特に成長期にあるアスリートは骨の先端(骨端軟骨)が柔らかく、骨が腱や靱帯などに引っ張られて痛みを起こす場合があります。成長期の代表的なスポーツ傷害として膝のオスグッド病や腰椎分離症、リトルリーガーズショルダー(上腕骨近位骨端線離開)などが挙げられます。
デッドボールや打撲など突発的に起こるアクシデント的なケガについては、患部を冷却することが第一選択肢であると考えられます。しかし野球のように繰り返し動作を行うことによって起こる慢性的な痛みなどは、アイシングを行うことによって痛みを感じにくくしてしまい、本来であれば「痛くて投げられない」状態であっても「痛みを感じないので投げることができる」ようになってしまうかもしれません。
痛みは体からの「SOSサイン」であり、アイシングは「SOSサイン」を隠してしまう側面も持ち合わせています。特に慢性的な痛みを抱え「アイシングを行えばプレーはできるけれど、アイシングをしなかった翌日は投げられない…」といった場合は、一度医療機関を受診して医師の診察を受けるようにしましょう。
文:西村 典子
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