試合レポート

日大三vs早大学院

2022.04.08

日大三、大苦戦も好投手リレー&無失策の堅守で逆転勝利で夏のシード獲得

日大三vs早大学院 | 高校野球ドットコム
先発・松藤孝介(日大三)

<春季東京都高校野球大会:日大三2-1早大学院>◇8日◇3回戦◇[stadium]スリーボンドスタジアム八王子[/stadium]

 昨秋ベスト4の日大三と実力校・早大学院の一戦。日大三は7回まで0対1まで負けていたものの、8回に2本の犠牲フライで逆転に成功。2対1で逃げ切って4回戦に進出し、今夏のシード権を獲得した。

「負けなくて良かったです」

 日大三・小倉監督が語るように、早大学院の2年生右腕・西山 恒斉内野手の投球の前に苦しみ、7回まで無得点だった。しかし8回表に、2つのエラーから無死三塁のチャンスを作ると、犠飛で1点を返し同点。その後、またも相手の守備のミスからチャンスを作り、再び犠飛で勝ち越しに成功した。

 まさに大苦戦だったが、それでも負けなかったのは、守備陣と投手陣の働きが大きかった。先発の183センチ左腕・松藤 孝介投手(3年)が踏ん張った。しなやかな腕の振りを生かしたオーバーハンドで、120キロ後半〜130キロ前半の速球には伸びがあり、両サイドに決まる。さらに120キロ前後のスライダーを投げ分け、しっかりとゲームメイクできる。リードする川崎 広翔捕手(3年)は「右打者の内角に強い球を投げられる投手で、練習試合で抑えることができていたので、しっかりと攻めることができました」と好投を演出した。5回裏に1点は取られたが、5.2回を投げて、3奪三振、被安打4と最少失点に抑えて味方の逆転を呼び込んだ。

 松藤の後に投げたのが、リリーフの安田 虎汰郎投手(2年)。176センチ、73キロと均整が取れた体格から力強い速球を投げる。常時133キロ〜136キロの速球は威力抜群で、数字以上に見栄えがする。川崎は「直球がかなり走っていたので、コーナーをついて押す投球を心がけました」と語る。

 ピンチの場面になっても力強い直球で押した。強力な早大学院打線を振り切り、勝利を収めた。「投手陣がよく投げてくれました」と小倉監督も活躍を評価した。

 守備陣も無失策で投手陣の好投を引き出した。内野手、外野手ともに球際の処理はレベルが高く、難しい姿勢からでも正確なスローイングができるのも、冬の練習が実を結んでいる証拠だろう。

 今夏のシード権を獲得した日大三。打撃陣では反省する材料はあるが、勝ち進んだからこそ、課題修正にも取り組める。4回戦では強い日大三の姿を見せたいところだ。

[page_break:日大三を苦しめた背番号6の143キロ右腕は岐阜出身の逸材。文武両道を極めるために早大学院へ]

日大三を苦しめた背番号6の143キロ右腕は岐阜出身の逸材。文武両道を極めるために早大学院へ

日大三vs早大学院 | 高校野球ドットコム
西山(早大学院)

<春季東京都高校野球大会:日大三2-1早大学院>◇8日◇3回戦◇[stadium]スリーボンドスタジアム八王子[/stadium]

 早大学院先発の背番号6・西山 恒斉内野手(2年)が日大三を苦しめた。179センチ、82キロと、体格は今年の早大学院の選手の中でも際立つ。バランスよく左足を上げて、真っ向から振り下ろすフォームから繰り出される直球は、最速は143キロで、常時120キロ後半〜133キロ程度(最速135キロ)だ。

 突出して速くはないが、球が全く高めに浮かない。低めにしっかりとコントロールされていて、高めにいっても腕を振り抜いているため、球質にも重さを感じる。

 高めに浮いた直球と、最初から狙って投げる高めの直球とでは、明らかに後者のほうが打ちにくい。日大三打線は高めの直球に手を出してしまい、凡フライとなっていた。小さく落ちるスプリット、緩いカーブをテンポよく投げるため、打者からすれば狙い球が絞りにくいこともあった。

 小倉監督は高めの球に手を出さないように「ゾーンを下げて、自分の打てるゾーンを打て」と指示をしていた。しかし、早大学院のバッテリーは事前準備をしっかりとしていた。クリーンナップには変化球中心、下位打線には直球主体と、メリハリの効いた配球で挑んでいた。

 8回表、無死からエラーで出塁を許してしまい、さらに西山自身の牽制悪送球もあった。早大学院・木田監督、日大三・小倉監督ともに口にしていたが、かなり力んだ牽制球だった。エラーからの出塁で、焦っていたのもあるのだろう。もう少し大事にいくか、慎重にプレーをしていれば結果は変わったかもしれない。それでも日大三相手に好投した事実は変わりなく、試合後、取材対応を終えた西山は小倉監督から褒められていた。

 岐阜市出身で、中学時代は各務原シニアでプレー。当時から最速139キロ右腕として評判は高かった。文武両道を実現するため、早大学院に進み極めたい思いがあったという。春先は故障もあったが、しっかりと乗り越えてマウンドに立った。

 背番号6の内野手でもある。降板した8回裏は遊撃手に回ったが、その身のこなしからも明らかにレベルは違っていたが、本人の希望としては将来は投手に専念したいという。

「早稲田大学に進んでプロ野球を目指したい」と目標を掲げた西山。残り1年半、西東京を盛り上げてくれる右腕となりそうだ。

(取材=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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