Interview

大阪桐蔭の控えだからこそ芽生えた気持ちを胸に、近畿大・左腕の挑戦【前編】

2022.04.20

 2018年に大阪桐蔭のメンバーとして甲子園で春夏連覇を経験した近畿大・森本昂佑投手(4年)。高校時代は控え投手ながら当時から、左腕として140キロを超える速球を投げ、センバツでは2試合に登板した。卒業後は関西屈指の名門である近畿大に進み、ハイレベルな投手陣の中で奮闘している。大学ラストイヤーを迎えた森本に高校時代の思い出について語ってもらった。

憧れたブランド

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高校時代の森本昂佑

 小学2年生の時に大阪南海ボーイズで野球を始めてから投手一筋だった。「打てないし、遠投も5メートルも投げられない状態でした」。最初から周りよりも秀でた選手というわけではなかったが、努力を重ねて中学1年生の時にはカル・リプケン12歳以下世界少年野球大会日本代表に選ばれるまでになった。

 大阪桐蔭に進むきっかけとなったのが、中学2年生の時に出場したタイガースカップ。甲子園で行われたこの大会で森本は133キロをマークした。すると、視察に来ていた西谷浩一監督から「うちに来ないか」と誘いを受ける。小学6年生の時に藤浪晋太郎投手(阪神)を擁して春夏連覇した姿を見てから大阪桐蔭に憧れを持っていたこともあり、迷いなく大阪桐蔭に進学することを決めた。

 だが、「意識が高いし、凄い球を投げるし、圧倒されました」と入学早々から周囲のレベルの高さに戸惑うことになる。当時は2学年上に高山優希投手(日本ハム育成)、1学年上に徳山壮磨投手(DeNA)、そして同級生に根尾昂内野手(中日)、横川凱投手(巨人)、柿木蓮投手(日本ハム)と、後にプロ入りする投手が多数揃っていた。

「入った時に自分もブルペンで良い球を投げていた自信があったんですけど、隣に根尾が来て、146キロとか投げていました。ヤバいなと思って、ちょっと自信なくしました」

 中学時代に実績を残していた森本ですら、埋もれてしまうのが大阪桐蔭の選手層だ。最上級生になるまではメンバー争いに食い込むことができず、2年生の時に出場した甲子園はスタンド応援。春には優勝を果たしたが、「嬉しい半面、悔しい気持ちがありました」と複雑な心境だったようだ。

 それでも2年秋には2ケタ背番号ながらメンバー入り。「やっと高校野球ができるなという気持ちでした」と気持ちが奮い立った。とはいえ、プロ注目投手が3人もいるチームにおいて、出番が限られていたのは事実。「先発できるピッチャーが3人もいて、崩れることはないですけど、崩れた時にサポートできるように、ずっとブルペンで用意するというのは心がけてやっていました」と自分の出番がいつ来ても良いように最善の準備だけは行っていた。

[page_break:「記憶がない」マウンドが貴重な体験]

「記憶がない」マウンドが貴重な体験

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森本昂佑

 そんな森本に晴れの舞台が訪れたのが3年春の甲子園。1回戦の伊万里(佐賀)戦で14対1と大量リードした9回表に登板した。しかし、「記憶がないくらい緊張した」と本来の投球ができず、いきなり連続長打で1点を奪われてしまう。その後も無死満塁とピンチが続いたが、そこから三者連続三振で切り抜け、何とか1失点で乗り切った。

 さらに準々決勝の花巻東(岩手)戦でも19対0で迎えた9回表に登板。安打を1本許したが、141キロをマークして無失点に抑えた。甲子園で投げたのはこの2試合だけ。中学時代にもタイガースカップで甲子園のマウンドを経験しているが、それとは全く違うものだったという。

「中学の時はエースでしたが、高校は2ケタの背番号で投げるとなったので、こんなにメンバーがいる中で投げて良いのかなと思ったりしていました」

 自分がエースであれば、堂々と胸を張ってマウンドに立てるが、自分より優れた投手がいるのに投げることには申し訳ない気持ちもあったようだ。

(取材:馬場 遼

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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