巨人岡本に1差とする111打点目、村上の一打に優勝にかける思いをみた
九州学院時代の村上 宗隆内野手
これぞ4番の仕事だった。ヤクルト村上 宗隆内野手(九州学院出身)が、2点差を追いついて、なおも迎えた4回二死満塁から左中間へ3点適時二塁打を放って見せた。広島の大瀬良からの値千金の勝ち越し打。自慢の逆方向への打球で、チームに力を与えた。
初球は甘く入ってくるスライダーだった。見逃した。やや高めだったとはいえ、打ちごろの球だったが、手が出なかった。2球目。同じようなスライダーをフルスイングした。結果は空振り。明らかに力が入っていた。しかし、村上は成長を見せる。引っ張ることを捨てて、打点を優先させる打撃に徹した。気持ちを切り替えたからこその左中間への打球だった。
第一打席はカウント0-3からの直球をフルスイングした。結果、右翼線へのタイムリーとなったが、本来の打撃ではなかった。なかなか打球が上がらず本塁打が出ない。岡本との本塁打争いは並走したままで、相手広島の鈴木に1本差に詰め寄られている。しかし、今はチームの優勝が大事といわんばかりに本塁打をいわばあきらめて、勝利のための打撃を見せた。
この日、4打点をマークして通算111。巨人岡本に1差とした。ここにも負けられない戦いがある。今の村上とすれば、打点の方が大事なのかもしれない。
九州学院3年夏のことだ。決勝で敗れて1年夏以来の甲子園を目前で逃した。坂井 宏安監督に「監督さんをもう一度甲子園に連れていきたかった」と涙した。自分よりもチームの方が大事だった。その気持ちは東京五輪でアーチとなって表れ、今もヤクルトの優勝のために打点を稼いでいる。
残念ながらこの日は敗れた。チームを勝たせることができなかった。しかし、村上に「フォア・ザ・チーム」の精神がある限り、歓喜の日が訪れるに違いない。