乙訓vs龍谷大平安
乙訓が龍谷大平安との大一番を延長戦で制す
昨秋の決勝と同カードが3回戦で早くも実現。本来は同日に[stadium]太陽が丘[/stadium]で行われる予定だったが、多くの来場者が予想されるため、収容人数の多い[stadium]わかさスタジアム京都[/stadium]に会場が変更となった。多くの観衆が見つめる中で行われた一戦は息を呑む大激戦となった。
龍谷大平安の背番号20の左腕・松岡 夢貴(3年)。秋の乙訓戦でも先発し、6回途中2失点と好結果を残していた。だが、この日は初回から乙訓打線が襲い掛かる。二死から四球と安打で一、二塁のチャンスを作ると、5番・谷口 大空(3年)の右前適時打で1点を先制。さらにその後、二死満塁となり、7番・伊藤 竜輝(3年)が四球を選び、追加点を挙げた。
乙訓の先発は最速146キロ右腕のエース・北見 隆侑(3年)。府内屈指の好投手と呼び声高く、市川 靖久監督は「北見で負けたら仕方ない」と信頼して送り出した。
1回裏の龍谷大平安は四球と暴投で二死二塁のチャンスを作ると、4番・吉田 元(3年)が左越え適時二塁打を放ち、1点差とする。
両投手ともに立ち上がりで失点を許したが、2回以降は立ち直りを見せる。松岡は変化球を巧みに使った投球で上手く交わし、北見も力のある速球とキレのある変化球で龍谷大平安打線をねじ伏せる。
次の1点が重要になりそうな展開で試合が動いたのが5回裏。先頭の9番・松岡が四球を選んで出塁すると、犠打と内野ゴロで二死三塁と一打同点の好機を作る。この場面で1ボール2ストライクから投じた5球目が暴投となり、松岡がヘッドスライディングで生還。相手のミスで龍谷大平安が同点に追いついた。
龍谷大平安は6回からエースナンバーの石田 琉稀(3年)を投入。乙訓は石田に対して7回表に二死一塁から4番・星田 大輔(3年)の中越え適時二塁打で1点を勝ち越すと、8回表にも無死二塁から伊藤の中越え適時二塁打で1点を追加。乙訓が着々と勝利に向けて近づいていた。
2点を追う龍谷大平安の9回裏の攻撃は、一死から7番・高杉 雄大(3年)が中前安打で出塁するも続く代打・伊藤 愛都(2年)が三振に倒れ、二死となる。続く石田の打席で高杉が盗塁を決めて二塁に進むが、石田に足して2ボール2ストライクとなったところで、市川監督は「これでいけるかなと」思ったという。しかし、そこから石田がボールをよく見極めて四球を選ぶと、1番・實谷 大周(3年)がライトに適時二塁打を放ち、高杉が生還。1点差としてなおも二、三塁と一打逆転サヨナラの場面となった。
ここで打席に立つのは2番・早川 瞬(3年)。1ボール2ストライクと追い込まれながらもしぶとく食らいつき、三遊間を破る左前適時打を放つ。左翼手が前進守備を敷いていたため、二塁走者は生還できなかったが、起死回生の同点打となった。
このままサヨナラ勝ちを決めたい龍谷大平安だったが、3番・高田 英治(3年)が捕邪飛に倒れ、サヨナラとはならず。試合は延長戦に突入した。
10回表、乙訓は連打で無死一、二塁のチャンスを作ると、龍谷大平安は1年生の岩井聖をマウンドに送るが、6級連続でボールとなり、無死満塁2ボールの場面で降板。この窮地に背番号10の林 慎之介(3年)が登板するも9番・北見に押し出しの四球を与えると、続く1番・石本 泰誠(2年)の左犠飛で追加点を許す。さらに一死満塁から3番・西山 夢空(3年)が走者一掃となる左中間への3点適時二塁打を放ち、リードを5点に広げた。
粘り強さに定評のある龍谷大平安でも北見相手に5点差はあまりにも重かった。その裏の攻撃は先頭の吉田が死球で出塁するも無得点。北見は最後の打者を空振り三振に仕留めると、ガッツポーズを見せ、仲間と喜びを分かち合った。
北見は164球の熱闘で10回を投げ切った。「嬉しいですが、ここは通過点であるという認識です。優勝して甲子園で勝つためにやってきたので、ここは大きな山場でしたが、すぐに切り替えて、20日の試合(4回戦)に全員で集中したいと思います」と勝利を喜びながらも既に次なる戦いを見せていた。
敗れた龍谷大平安は26年ぶりとなる2勝未満での敗退となった。4月以降は学校の方針で練習試合や練習時間が制約され、思うように強化が進まなかったと原田 英彦監督は肩を落とした。
「コロナ禍で練習試合ができない、練習時間が限られているという中で、やり尽くすことができなかったですね。3年生は可哀そうな年代だったので、なんとか全国に行かせてやりたかったんですけど、残念です」
春に続いて早い段階での敗退となったが、苦境から何度も這い上がって数々の栄光を掴んできたのが龍谷大平安だ。有望な下級生も多く、これからの巻き返しに期待したい。
(文:馬場 遼)