横浜創学館vs慶應義塾
昨秋の教訓生かした横浜創学館・山岸2失点完投、決勝は「挑戦者」
山岸翠(横浜創学館)
横浜創学館と慶応義塾による決勝進出をかけた一戦は、前半と後半では全く違う試合展開となった。
前半は緊迫の投手戦となった。
4回まで横浜創学館は山岸 翠、慶応義塾は荒井 駿也、前田 晃宏の2人がマウンドに上がった。この投手たちを前に、横浜創学館は1安打、6四死球で、慶応義塾は3安打、無死四球とそれぞれがランナーを出しながらも、投手陣が粘りを見せる投球を見せてスコアが動かない。
1対0と横浜創学館がリードをしていたところで迎えた5回に、均衡が崩れた。
横浜創学館は1番・倉谷 快誓のヒットでリズムを作ると、4番・長井 俊輔のタイムリーで2対0とすると、7番・齋藤 慶太朗の三塁打で、この回一挙4得点と、主導権を握った。
援護を受けた横浜創学館・山岸だったが、6回に7番・坪田 大郎、7回には2番・横地 広太にタイムリーを許し点差を縮められるなど、6回以降は互いにヒットが出始め、試合が目まぐるしく動いた。しかし「逃げずに強い気持ちで向かっていった」と攻める姿勢を忘れずに低めにボールを丁寧に集め続け、慶応義塾打線に連打を許さない。
7回にはセンター・倉谷の好守にも救われる形でリードを保ったまま、山岸は9回を投げ抜き、5対2で慶応義塾を下した。これで横浜創学館は13年ぶりの決勝進出を果たした。
試合を振り返れば、慶応義塾打線の破壊力はさすがだった。3番・真田 壮之、4番・今泉 将らを筆頭に、上位から下位までしっかりバットを振り切れる選手がそろっていた。反動を大きく使うわけでもなく、コンパクトな構え方でボールを待てる選手が多い。桐蔭学園、桐光学園といったチームに勝利し、6試合で平均49得点、1試合平均8.2得点の破壊力は伊達ではなかった。
しかし、準々決勝で強打・日大藤沢と対戦していた山岸にとって、やることは同じだった。
「相手はどんどん振ってくる強打者揃いでした。だから三振を取れたらラッキーくらいに思って、積極的だからこそ小さく動くボールを使って、打たせて取る投球を心がけました」
春の大会を終えてから使い分けられるようになった縦、横のスライダーにシンカーを織り交ぜて、先頭打者を出さぬように、連打を許さずに1つ1つアウトを積み重ねて最終的に0点に抑えることに徹した。
事実、三振は4つだけと有言実行の投球だが、この投球が出来るようになったのは昨秋の苦い経験があった。
「鎌倉学園と対戦した時に、追いついてもらった直後に連打を許してしまったんです。そこからは投げ急がないようにしています。ピッチャーは3割打たれますが、7割は打ち取れるので、それをどこで取るのか。それを今日の試合も考えていました」
経験を確実に自分の血肉にして成長してきた山岸擁する横浜創学館は、聖地まであと1勝と迫った。「横浜には勝ったことがないので、相手は強いですが、チャレンジャー精神で立ち向かっていきたいと思います」と挑戦者で戦うことを誓った。
森田監督にとっては母校との対戦となるが、「前回も決勝で横浜でしたが、倒さないと甲子園がないので、頑張って勝ちたいと思います」と母校相手に13年前のリベンジに燃えていた。初の甲子園の切符を掴めるか、28日の決勝戦が楽しみだ。
(文=田中 裕毅)
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