Interview

阿部慎之助を育てた名伯楽から教わった打撃理論で成長し続ける高野山のスラッガー・渡邉大和【前編】

2021.04.05

 センバツ出場の市立和歌山や、名門の智辯和歌山に注目が集まる和歌山県の高校野球だが、高野山にもプロ注目の打者がいる。その名は渡邉大和(3年)。高校通算19本塁打の強打者で、昨夏の独自大会では[stadium]紀三井寺野球場[/stadium]の左翼席に特大の本塁打を放った。秋季大会には複数球団のNPBスカウトが視察に訪れており、自身も卒業後のプロ入りを視野に入れている。

高校入学後は正反対の指導理論に困惑

阿部慎之助を育てた名伯楽から教わった打撃理論で成長し続ける高野山のスラッガー・渡邉大和【前編】 | 高校野球ドットコム
渡邊 大和(高野山)

 和歌山県橋本市出身の渡邉は友人に誘われたことがきっかけで、小学4年生から野球を始めた。今でこそ177㎝、93㎏の立派な体格をしているが、小学生の時は周囲よりも小柄だったという。

 体が大きくなったのは中学時代で、ヤングリーグの和歌山ホークスに入ってから。食事に対する意識が高まったことで、体つきが大きく変わり、打球が飛ぶようになった。また、和歌山ホークスの指導者によるアドバイスも効果的だったと話す。

 「押し込みというか、ボールに当たる時にバットに乗せることを教えてもらって、ホームランの確率が上がったと思います」

 打撃の才能が開花したことで、中学時代は通算で10本前後の本塁打を放ち、複数の強豪校から誘われるようになったが、「和歌山から甲子園に行きたかった」と高野山への進学を決意。野球部は全寮制のため、親元を離れて過ごすことになった。

 「最初は不安もありながら来たんですけど、周りにチームメイトがいたので、全然心細くなくて、ノビノビとできました」と初めての寮生活にも順応し、1年秋からは三塁手のレギュラーも掴む。さらに飛躍しようというタイミングで出会ったのが、昨年4月に就任した伊藤 周作監督だった。

 伊藤監督は大学野球で実績を残した70歳のベテラン指導者で、中央大で監督をしていた時には阿部 慎之助(現巨人二軍監督)を指導した経験もある。そんな伊藤監督と渡邉の打撃理論は正反対で最初は不安に感じていたという。

[page_break:主将就任で気持ちの持ち方に変化]

主将就任で気持ちの持ち方に変化

阿部慎之助を育てた名伯楽から教わった打撃理論で成長し続ける高野山のスラッガー・渡邉大和【前編】 | 高校野球ドットコム
渡邊 大和(高野山)

 以前の渡邉は長打を狙うためにアッパースイングに近い形で打っていた。しかし、伊藤監督は「それでは振り遅れが多くなるから、上からのスイングに変えろ」と指示。初めは戸惑いもあったが、「速い真っすぐにも対応できるようになって、今の方が打てるようになったので凄いと思います」と名将の指導力の高さを体感した。

 打撃改革の成果は昨夏の独自大会でいきなり発揮される。1回戦の神島戦では2安打1打点と4番らしい働きを見せると、2回戦の向陽戦ではインコースのストレートを完璧に捉えて、レフトへ超特大の本塁打を放つ。「しっかりスイングできたので、その時のスイングが一番良かったと思います」とこれまでの本塁打の中でも最も手応えのある打席となった。その本塁打は打球速度がかなり速い弾丸ライナーの打球だったが、これが渡邉の打撃の真骨頂だと伊藤監督は分析する。

 「アイツの打球は当たった時に凄い打球が行くんですけど、俗にいう中距離バッター、ライナー性の打球なんですよ。放物線を描くようなタイプじゃないので、ホームランもけっこう損しているかもしれないです」

 他の打席の映像を見ていても、捉えた時の打球は低いライナー性の打球が多いように感じられた。フェンスが高い球場では確かに本塁打になり損ねることがあるかもしれないが、その分、外野の間を抜く長打が多く見られるような選手になるだろう。

 また、広角に強い打球を打てるのも渡邉の強みだ。「センターから逆方向に遠くに飛ばすことを意識してやっています。その中でインコースが来たら、しっかり引っ張って飛ばすイメージですね」と普段から逆方向への意識を強くしているという。本塁打を狙ってむやみに振り回すのではなく、コースに応じて左右に打ち分けられる点も高く評価できるポイントだ。

 下級生から打の中心選手として活躍していた渡邉は、新チームで主将となる。まだまだ野球への取り組みに対して隙があると感じていた伊藤監督が、渡邉にチームの看板選手としての自覚を持たせるために任命したのだ。

 中学時代にも主将の経験があったが、あまり口数の多いタイプではなく、「大丈夫かなと心の中で少し思っていた」と就任当初は不安を感じていたようだ。それでもここまでは問題なくこなせているようで、「しっかり周りを見られるようになったので、自分としても良い感じになったと思います」と自らの成長を実感している。

 主将になったことで、周囲を引っ張る意識が芽生え、「気持ちの持ち方が凄く謙虚になってきたので、僕としては一番嬉しいですね」と伊藤監督が求める選手像にも少しずつ近づいてきた。

(記事=馬場 遼

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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