投球後にアイシングをした方がいい場合
投球動作を繰り返し、炎症症状が見られる場合はアイシングをすることも一つの方法
セルフコンディショニングの一つとして投球後に肩や肘を冷やす投手をよく見かけるようになりました。昔は「肩を冷やさない」と言われていたことを考えるとスポーツ科学、スポーツ医学の進歩とともにコンディショニング方法も刻々と変化が見られます。さらに最近はアイシングをすると筋肉や関節の動きが悪くなるので、行わない方がいいという意見もあります。さまざまな研究や現場では考え方の相違が見られますが、これもまたコンディショニングの進歩に欠かせない議論の一つでしょう。アイシングのメリット・デメリットについては以前のコラムに掲載していますので、ぜひこちらも参考にしてください。
さて本題の「投球後にアイシングをした方がいい場合」について、簡単にまとめておきたいと思います。投球後に痛みや熱感など炎症症状が見られる場合は基本的に患部を冷やして炎症を抑えるようにします。冷却することによって一時的に患部周辺部の筋肉や軟部組織も冷やされ、血流が抑えられるため、動きづらさを感じるかもしれませんが時間の経過とともに改善していきます。炎症症状が抑えられると関節可動域をはじめとする関節機能の回復が期待できます。
《投球後に肩や肘に炎症を起こす可能性のあるケース(例)》
・久しぶりに投球した場合
・下半身がうまく使えず、肩や肘に過度な負担がかかるフォームで投げ続けた場合
・マウンドの傾斜や硬さなど、普段とは違ったマウンドで投げた場合
・投球数がいつも以上に増えた場合
・連投した場合
・以前に肩や肘をケガした経験がある場合
一方炎症症状はあまり見られず、むしろ筋肉の張りや疲労による柔軟性の低下などが見られる場合は、軽く動かしたり、インナーマッスルを刺激して肩や肘周辺部を動かすようにするほうがよいと考えます。特に投球動作を繰り返し行っているので、肩前方部の筋肉は縮んだ状態であり、肩後方部は引き伸ばされて張ってしまい、本来の筋力を発揮できない状態になりやすいと考えられます。肩前方部のストレッチや背中や肩後方部の筋肉を収縮させるようなエクササイズなどを取り入れて本来の筋バランスを回復させることが大切です。
投球後の状態を自分で把握し、痛みや筋肉の張りとは違った違和感を覚える場合などは選択肢の一つとしてアイシングを行うことも考慮しましょう。
参考書籍)「野球を科学する 最先端のコンディショニング論」笠原政志著/竹書房
文:西村 典子
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