花咲徳栄vs大分商
開幕戦にふさわしい投手戦を制した花咲徳栄。好投手・川瀬堅斗を打ち砕く
高森陽生 ※2019年10月20日の秋季関東大会より
2020年甲子園交流試合の開幕戦となった花咲徳栄と大分商の一戦。この試合はタイプの違う2人の投手が投手戦を作って見せた。
先にマウンドに上がった花咲徳栄の先発はエース・高森陽生。左スリークォーター気味の高さから130キロ台のストレートを両サイドに投げ分けるコントロール。さらに切れ味の鋭いスライダーやチェンジアップを集める打たせて取る投球。1塁側のプレートを使っている分、横の角度を付けた投球で大分商打線を抑えていく。
一方の大分商のエース・川瀬堅斗。大会前より注目されていた右腕はセットポジションから動き出して、少し上体を反るような形で力をグッと溜め込んで、コンパクトなテイクバックからトップに右腕を持っていき上からしっかりと振り下ろす。
角度の付けたストレートは140キロを超えるシーンもあった。加えて高校のOB・森下暢仁を参考にしながら改良を重ねた落差の大きいカーブは100キロ台と緩急も抜群。さらに120キロ台のスライダーなど球速差に角度を付けたボールを次々繰り出していく。
高さを活かす川瀬と横の角度を使う高森の、それぞれ異なる投手のピッチングは次元の高さを感じさせる試合は初回から動いた。
先攻の花咲徳栄が1番・南大輔の相手のエラーをきっかけにチャンスを作ると、一死満塁から5番・中井大我の押し出し死球で先制。さらに6番・渡壁幸祐のライトへのタイムリーで3点を奪った。
川瀬堅斗 ※2019年10月23日の秋季九州大会より
その後も花咲徳栄は毎回ランナーを出しながらも、あと一本というところで川瀬が踏ん張る。緩急の利かせた曲がりの大きいカーブと鋭く落ちるスライダーを上手く使った打たせて取る投球。勝負所で変化球を使って強力・花咲徳栄打線を封じ込めた。
早く追いつきたい大分商は6回、一死から1番・渡辺温人の内野安打からきっかけを作り、3番・岩崎 竜也のヒットなどで二死一、三塁。ここで4番・末田 龍祐の打球を相手がエラーして1点を返した。
しかし反撃もここまで。花咲徳栄・高森の巧みな投球術に終盤にチャンスを作れず、花咲徳栄が初回の3点で逃げ切った。
勝利して甲子園を去る花咲徳栄。埼玉に戻れば独自大会が待っている。1失点完投の高森は「これで終わりではないので、この勝利を活力にして埼玉ではこれ以上の投球を見せたいです」と独自大会への強い覚悟を示した。
一方、敗れた大分商。注目右腕・川瀬は9回を投げきって被安打8、与四死球7、奪三振5、自責点2という結果。地区予選を含めて昨秋の県大会で1試合平均10点を超える花咲徳栄打線が相手だと考えると、しっかりと結果を残せた。
だが、1試合平均してだいたい2四死球だった昨秋のコントロールを考えると、この試合は乱れていた。特に序盤の制球の乱れが結果として敗れることとなった。それでも1球1球の質は高く、聖地・甲子園で投げ込んだ149球は全国に知られることになった。甲子園での経験をきっかけに次のステージでのさらなる成長を期待したい。
(取材=田中 裕毅)