試合レポート

関東一vs都立城東

2020.08.04

好投手・林平太郎を打ち崩した関東一。林攻略のために徹底した攻め方

関東一vs都立城東 | 高校野球ドットコム
ホームランを放った重政拓夢

 昨夏の東東京を制した関東一。そして秋は都大会ベスト4に進出した都立城東。今年の東東京を牽引しているチーム同士の熱戦が[stadium]ダイワハウススタジアム八王子[/stadium]で実現。試合は関東一が初回から猛攻で主導権を握ったが、その前に互いの作戦を見ていきたい。

 「この1年間は彼で戦ってきましたので」という内田稔監督の想いで2年生エース・林平太郎をこの試合でもマウンドへ送る。林本人は疲れがないと感じていたが、「疲れはなくはないと思いました」と内田監督は少し不安に感じながらベンチから見守った。そして先発の林は「打たれることはわかっていたので我慢強く投げていく」ことを心がけた。

 一方、関東一は林攻略の術を米澤貴光監督は都立城東の林について「コースにしっかりと投げてくる投手なので、引っ掛けた打球を打たずにいこう」と試合前は対策を講じていた。しかしいざ対戦すると、ボールが来ていないことを感じ、選手には「左打者はセンターから逆方向。変化球はよけないように。そして右打者は引っ掛けた打球は打たないように」と指示を出す。

 その指示を聞いたうえで1番に座った重政拓夢は「外ギリギリを投げてくるので、打席もギリギリまで踏み込んでいきました」と語る。また武器であるスライダーが抜け気味だと察知してベンチへ共有。その上でストレートを狙う方向へ絞った。

 さらに3安打の出利葉翔は「左打者は引っ掛けた打球が多かったので、逆方向に打てるように練習をしたきた」と準備をしてきた。

 こうして互いが作戦を持った中で初回、関東一は5番・岡澤敦也や6番・出利葉のタイムリーなどで4点を先取。得意の速攻で関東一がペースを握る。この段階で林は「今までであれば振ってもらえた厳しいコースにボールを投げても見逃されてしまい、ボール先行になってしまった」と関東一の徹底した見極めに苦しんだ。



関東一vs都立城東 | 高校野球ドットコム
都立城東先発・林平太郎

 このまま追加点を奪いたかった関東一だが、都立城東・林が開き直る。「ストレート先攻にするためにも打ち損じを待つようにしました」とカウントを整えることを優先され、0点が続く。

 すると、関東一先発・領家佑馬が捕まる。
 「落とす系の変化球に手が出てしまったので、割り切ってベルト付近のボールに絞って打ちに行きました」という都立城東・内田監督の指示を聞き、5番・林の四球と6番・陶直史、7番・高垣豊の連打でピンチを招き、9番・松本誇太郎のタイムリーで2点を失った。

 だが4回、1番・重政が関東一打線に火をつける。2ボールからの高めのボール球を上からかぶせてレフトスタンドへ。「上から叩いた分、角度もつけられたので打った瞬間わかりました」という高校通算27本塁打目となるホームランから一挙8得点を重ねて試合を決定づけられた。

 都立城東・内田監督も「林のシュートする高めのストレートを引っ張られたのは初めてです。凄い打球でした」と脱帽の一発だった。

 最後は関東一2番手・市川祐都立城東を抑えてゲームセット。関東一が12対2のコールドで勝利した。

 次の試合は大森学園との一戦となった。米澤監督は「1試合1試合戦えることに感謝して挑んでいきたいです」とコメントした。2年連続夏の東東京の頂点へ、このまま一気に駆け上がるのか。

 一方、敗れた都立城東の林。昨秋から急成長を遂げて注目選手となった。秋からも注目投手の1人として周りからマークされる。「入学時よりも想像以上に精神的に成長出来ました。それは経験を積めたからだと思いますが、力を入れるとまだフォームにブレがあるので、体幹を強化してコントロールに磨きをかけていきたいと思います」とさらなる成長を誓った。

 この敗戦を糧に秋に再び好投を見せることを楽しみにしたい。

(記事=田中 裕毅)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.31

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在34地区が決定、佐賀では佐賀北、唐津商、有田工、龍谷がシードに

2024.05.31

【鹿児島NHK選抜大会】鹿児島実がコールド勝ち!川内商工は終盤に力尽きる

2024.05.31

夏の愛知大会は6月28日から開幕!決勝戦は7月28日【愛知大会要項】

2024.05.31

【鹿児島NHK選抜大会】鹿屋農が"強気の勝負"で勝機を引き寄せ4強入り

2024.05.31

【北信越】富山県勢4校が12年ぶりの県勢V狙う、茨木擁する帝京長岡にも注目<地区大会>

2024.05.31

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在34地区が決定、佐賀では佐賀北、唐津商、有田工、龍谷がシードに

2024.05.26

【近畿大会注目チーム紹介】実力派監督就任で進化した奈良の名門・天理。超高校級の逸材3人を擁し、緻密な攻守で全国クラスのチームに!

2024.05.26

【春季関東大会】白鷗大足利が初優勝!最後はタイブレークの末サヨナラ死球で幕切れ!

2024.05.26

【近畿大会注目チーム紹介】エース頼み脱却を目指してきた京都国際。「素質はプロ入り左腕と同等」の2年生左腕の台頭と打線強化で京都の大本命に成長!

2024.05.28

交流戦開幕、初戦の注目は髙橋宏斗vs.今井達也の初対決!

2024.05.21

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.05.15

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.13

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在29地区が決定、愛媛の第1シードは松山商

2024.05.19

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在30地区が決定、青森では青森山田、八戸学院光星がシード獲得

2024.05.21

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在33地区が決定、岩手では花巻東、秋田では横手清陵などがシードを獲得〈5月20日〉