豊岡は17人の3年生の意識をまとめて、前へ進んでいく
「厳しい状況ですね。なかなか動きが取れない中で、どう向かっていくのがいいのかということで悩んだ」
そう言うのは、飯能南で指導していた時代には現横浜DeNAの武藤祐太を育てて、無名校をベスト16まで導いたという実績もある豊岡の北能徳監督である。
北監督は指導方針として、日頃から野球の技術だけではなく野球を通じて幅広く色々なことを学んでいくようにということを自分自身のテーマとしている。例年、オフの時期などには部員たちには、「積極的に本を読んで、自分の知らない世界や知らないことを学んでいくようにしなさい」という指導はしていた。だから、今回のコロナ騒動での練習自粛となった時にも、むしろ読書の機会だということで、積極的に勧めていた。
「読みたい本があったら、(自分の持っている本を)どんどん持っていってもいいぞ。野球関連のDVDもあるから、持っていって勉強していいぞ」
ということで、いろいろな学びの機会を与えていた。
現実には、期末試験前の2月14日に試験準備期間となって以降、ユニフォームを着ての練習はやれていないという。
「県内のほとんどの公立校はそうだったと思うんですけれども、4カ月くらい何もやれていませんね。選手たちは、それでも身体を動かしたり、何かやりたいですから、近くの公園を見つけたり、中学時代の仲間と場所を見つけてやったりというところもあったようです。ただ、それでも周囲の目もあってなかなかやれてはいません」
これが本音のようだ。それでも、北監督はいいトレーニングメニューが見つかれば、その動画を送ったり、普段のトレーニングメニューの確認などはしていた。学校で作ったメールサービスのグループを通じて学校からの課題も出された。そこに部活のグループを一つのクラスのようにして、情報交換や読書感想文もどんなジャンルでもいいから3冊以上ということにしていた。
「このシステムは、今後にも使えるのではないかと思っている。それぞれの生き方や、どんな風に将来のことを考えているのかとか、生徒たちのいろんな考え方がわかってきた」
読書の効果は、そんなところにもあったようだ。
4月になって、季節外れの雪が降ったこともあって、グラウンドの天蓋が落ちてしまうというアクシデントもあったという。その修復作業もあったようだ。
そのものは6月1日から再開されてきたのだが当初は、午前中に半分、午後からは半分という分散登校となっていた。それぞれ実質3時間くらいしか滞在はしていないという状況だった。さらには、10日から20日までは前半は出席番号1~20番の生徒が1日授業。後半は21番以降の生徒たちが1日授業という形で組まれている。そんな状況なので、部活動までは、まだなかなか復活は出来ない状況だ。
22日からようやく通常授業に戻ることが予定されているので、部活動としてもその週からの復活ということになりそうだ。とは言うものの、当初は1日1時間程度で週3回という形になりそうだという。だから、実質は整備して、アップしたら、キャッチボール程度ですぐに終わりということになってしまいそうだ。
学校としての再開スケジュールは出ても、今のところはまだどうにもならないというところも現実だ。現在のチーム構成は3年生が17人に対して2年生は5人というアンバランスなところもある。
ただ、今は3年生17人の気持ちをまとめて、「1回1回(の練習)が、それぞれの発表会だ」という意識を育んでいる。そんな状況下で、新入生に関しては、6月の学校再開から、やっと入部説明会が出来て目途が立ってきたという。
埼玉県の場合は、夏の独自県大会が8月になってからの開催ということになったので、調整期間は他の都県よりは多少はある。したがって、7月いっぱいを準備期間として捉えている。ただ、学校の試験もずれ込んでくるので、熱中症対策も含めて、練習日程も考慮していかなくてはならない。
3年生の中には、受験勉強の立ち遅れを心配している生徒もいるという。そのあたりは、本人の意思優先で行くが、「何とか、気持ちをまとめて挑みたい」という思いで臨んでいくつもりだ。
(記事=手束 仁)
関連記事
◆埼玉県も独自大会開催へ 8月8日に開幕
◆第937回 【埼玉大会総括】花咲徳栄5連覇達成!2019年夏を熱くした埼玉の強豪たち
◆第997回 2020年の埼玉は春日部共栄、聖望学園、浦和実だけの強豪だけではなく、秋の県大会に出ていない山村学園も脅威!