「熱男リレー」と日誌を通じて前を向き続けた諫早。活動再開したチームの現在
活動を再開した諫早の練習の様子 ※写真提供=諫早野球部
プロ野球が三度延期となり、なかなか先行きが見えない日本野球界。その中で少しずつ活動を再開させ、野球界に活気を与えている高校が出てきた。長崎県の諫早もその中の1つである。
分散登校と言う形だが、5月11日から学校が再開。各学年半分の生徒たちが学校に登校して授業を受ける。そして放課後の部活動にも参加する、人数は半数でも当たり前のように送れていた学校生活が少しずつ戻ってきている。
「運動量が減っていますので、まずはランニングなどを中心に個人練習をメインにしながら再開しました」
選手たちの指導にあたる木寺賢二監督に電話取材をすると、活動状況をこのように語る。いきなり全力で練習に入るのではなく、まずは体づくりから着手。同時にストレッチなどを重点的に行う、冬場に近い練習内容でスタート。ランニング5割、ノックやティーバッティング3割、ストレッチ2割くらいの目安で時間配分を行い、ケガを防ぎながら調整をしている。
この分散登校は2週間程度の継続が予定されている諫早だが、4月中は17日から活動を自粛していた。この期間中は選手間で決めた練習メニューと普段から取り組んでいた野球日誌を継続することで再開までの間は準備をしてきた。
「打撃班など8つほどのグループがありまして、そこで話し合いをして自粛期間でやることが決まったので、こちらからノルマは作っていません。また、これまで取り組んできて成果を感じていた野球日誌を継続するためにどうするのか、選手たちと考えてグループLINEで共有することにしました」
野球日誌を通じて選手たちが自分の事だけではなく、チーム全体まで視野を広げられてきたことに、木寺監督は成果を感じていた。それを継続するために考えた末にLINEがあったわけだが、こうした過程を改めてみると、諫早の特徴でもある「自分たちで考えて、行動する」ことが存分に発揮されているのがわかる。
他にもモチベーション維持のために、福岡ソフトバンクホークスの松田宣浩選手から始まった「熱男リレー」を一言コメントと添えてリレーを選手たちの発案でやっているとのこと。そのコメントと野球日誌を見て、木寺監督は選手たちの前向きな姿に驚いていた。
「『やるべきことをやろう』と伝えていますが、こんな状況なので『夏の大会ができるかどうか』と考えてしまいますし、3年生のことを考えると辛いですよ。それでも、選手たちは客観的に見たうえで、前向きなコメントをするんです。ですので僕の方が元気をもらっています」
まだ確定ではないが、夏の大会の開催に向けて前向きな動きは出ている。「3年生の節目の大会として、どんな形であれゲームをやれたらとは思っています」と木寺監督も夏の大会への想いを語る。一歩ずつ前へ進んできたが、その先に夏の大会があるのかどうかはまだわからない。それでも準備を続けていくことが未だ練習できないチームに元気を与え、そして3年生の将来にとって大事なことではないだろうか。
(取材=田中 裕毅)
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