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可能性を求める高校野球に対しての否定的発言に憤る都立日野・嶋田雅之監督

2020.05.01

可能性を求める高校野球に対しての否定的発言に憤る都立日野・嶋田雅之監督 | 高校野球ドットコム
都立日野ナイン(写真は2019年秋季東京都大会より)

 チームとしては、何も出来ないままに3月、4月が過ぎていった。

 「緊急事態宣言が出されてからは、まったく何も出来ていません。正直、腐っています。
 宣言が出される前は、ちょっと集めて話をしたことはありましたが、宣言が出された後は、選手たちとも会ってもいません。集めてはいけませんからね。こんな状況になってますが、選手たちに対しては、特にこれをやりなさいというような自己練習用のメニューは出していません。各自が、それぞれの自覚の上で、個人練習をしていくということしかありません。まあ、うちの子たちは、それが出来る子たちだと信じてはいますけれども」

 電話の向こうでそう語っていたのは2013年夏の西東京大会では準優勝を果たすなど、都立校としては上位常連校として近年の実績を積み上げてきた都立日野の嶋田雅之監督だ。

 「新入生に関しては、何人入って来てくれるのかさえもわかっていません」

 通常であれば、毎年春休みの3月25日以降に入部希望の新入生を集めて顔合わせをするのだが、今年はそれも行えなかったという。
 辛うじて、体験入部の際に名前を書いてくれている生徒に関してはある程度はわかるくらいだという。都立日野の場合は、入学後に入部希望者として入ってきた生徒が、日々の練習を通して伸びていくというケースも多い。入試の際に、一応、中学時代の野球経験者がどれくらいいるのかなということを調べたくらいだという。そんな生徒がどれだけ来てくれるのか、それも把握出来ていないという。

 そして新学期をまたいで、2カ月以上も休校が続いている状態に関しては、嶋田監督自身も、ただただ我慢の状況であるという。

 「とにかく、(大会を)やって欲しいということしかない。その気持ちだけで毎日過ごしています。もちろん、選手たちだって、そこ(最後の夏)を目指して練習してきているわけですから、その可能性は、最後まで諦めたくないですね。
 ネットとか、いろんなメディアなんかからも、いろんな否定的な意見があるじゃないですか。『野球だけ、どうして特別なんだ』とか、『インターハイが中止になっているんだから、野球も中止が当たり前だ』という人もいます。だけど、インターハイの競技と野球とでは、大会のシステムも事情も違うんですよ。

 そこを理解しないで、一律に、『野球だけ特別なのか』とか言って、意見している意味が分からないですよ。指導者が諦めたらダメだと思いますよ。我々としては、最後までやれる可能性を求めていってあげるということです。それをギリギリまで求めていってあげないといけないと思います」

 と、社会の同調圧力や、高校野球が開催の可能性を求めて粘っていることに対しての批判に対しても憤っていた。

 「3年生の最後の大会は、やらせてあげないといけないんです」
 この思いは非常に強く感じられた。

 一方で、予定していた夏休みに入っての恒例の新チームの長野県や新潟県の遠征合宿もキャンセルせざるを得なかったという。さらには、最悪の事態になった場合でも、どこかで3年生の試合はさせてあげないといけないという使命感も抱いている。

 「正直、高校生たちも精神的にも疲れてきてはいると思います。冬の間に、頑張って、耐えて鍛えてきた子たちのことを思うと…。このまま大会がやれないとなったら、残念としか言いようがない」

 学校としても、極力集まらないということなので、嶋田監督自身も、どうしても必要な業務郵便の発送などの作業で学校へ行った以外は学校へ行っていないという。

 「誰もいない、グラウンドを見つめていると、虚しくなりますよ」
 嶋田監督の偽らざる気持ちでもあろう。

(文/手束仁

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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