Column

選手11人・部員15人で秋季四国大会に出場 川島(徳島)の「ONE TEAM」

2019.11.21

 2007年2月に首都圏から居を四国地区に移し13年目。「さすらいの四国探題」の異名を背に四国球界でのホットな話題や、文化的お話なども交え、四国の「今」をお伝えしている寺下友徳氏のコラム「四国発」。

 第60回では2年連続秋季四国大会に出場した川島(徳島)の話。選手11人・部員15人から強豪校を次々と破った理由を紹介しつつ、これから全国各地で大きなテーマとなるであろう「少人数校が勝ち上がる方法」を考えていきます。

少人数でも2年連続秋季四国大会出場の川島(徳島)

選手11人・部員15人で秋季四国大会に出場 川島(徳島)の「ONE TEAM」 | 高校野球ドットコム
部員15人(選手11人・マネージャー4人)で2年連続秋季四国大会出場を果たした川島

またも久々の「四国発」ですが、まずはこれを言わないと。「侍ジャパントップチーム第2回WBSCプレミア12優勝、おめでとうございます!」2020東京五輪へ向けてばかりでなく、野球界に勇気を与える頂点獲得。同じ11月17日(日)明徳義塾が明治神宮大会2回戦で敗れ2019年の公式戦がほぼ幕を閉じた四国地区の私たちも、彼らの勇敢さを見習って、2020年へと進んでいきたいと思います。

 ただその半面、四国における野球人口、それ以前の人口減少は「野球部員減少」という現実となって表れています。しかも最近ではこんな現象も起こっています。

 「徳島県では『特色選抜』(中学校でのスポーツや文化活動の実績を評価する入試)という形で各校に一定の推薦枠があるんですが、最近では中学野球の有望選手がラグビーやレスリングなどの特色選抜を利用するケースが出ているんです。徳島県では中学校でラグビーやレスリングの部活がないからなんですけど、正直野球部にとっては痛いですね」

 こう話すのは川島(徳島)・山根 浩明監督。2010年センバツには21世紀枠初出場で前年・明治神宮大会王者の大垣日大(岐阜)に延長戦までもつれ込む好勝負を演じ、その後も県内強豪の地位をキープ。秋については昨年県大会初優勝、今年も準優勝を遂げ、2年連続で四国大会出場を果たしている指揮官です。

 だが、そんな川島ですら昨秋の四国大会は選手15人。そして今年は選手わずか11人(2年生4人・1年生7人)。4名(2年生のマネージャーを加えても15人。逆に言えばこの少人数で四国の舞台まで進んでいる事実は高く評価されるべきでしょう。

 では、なぜ15人は少人数校のハンデを……いや、主将の三木 希海(2年・遊撃手)はこう言い切ります。
「先輩たちから15人でもできることを教えてもらいましたし、少人数だと気持ちをもってできます」。
 聞けばその手法も実に明確化されていました。

[page_break: 「4原則」と「不利な状況設定」。そして「ONE TEAM」/先輩越えの「四国大会1勝」以上、そして夏の初甲子園へ ]

「4原則」と「不利な状況設定」。そして「ONE TEAM」

選手11人・部員15人で秋季四国大会に出場 川島(徳島)の「ONE TEAM」 | 高校野球ドットコム
秋季徳島県大会署初戦の徳島商戦・激闘のスコアボードを見ながら校歌を歌う川島の選手たち

1.役割をはっきりさせる
2.背伸びせず、プロフェッショナルに徹する
3.守りからリズムを作る、複数失点を防ぐ
4.練習から競争する状況を作り出す
 
 明文化はされていませんが、山根監督が普段選手たちに言っていることはこの「4原則」です。

 1・2のところで1番を打つ三木 希海であれば、出塁率を上げるためのセーフティーバントをフリーバッティングから鍛えています。3・4で言えば投手は「テンポを大事にしている」岩本 義樹(2年)から三塁手で先発する小川 拓海(1年)へのリレーを基本線に、希海・滉成(1年)の三木コンビも控え、ねじ伏せようとする意識を排除しています。

 そこに加えて私が感心したのは、ともすると各チームが「自分たちの野球をしたい」がために陥りやすい「不利な状況を想定し忘れる」準備が川島には間違いなくできていました。

 練習からケースバッティングでは「数点ビハインドの状況からいかに逆転するか」を中心に取り組み、練習試合で状況が生まれた時にそれを実践。さらにここで出た課題と収穫を公式戦に落とし込むサイクルにより「練習試合で4~5点差を追いつくケースができたことが秋の逆転勝ちにつながりました」(主将の三木希)。

 よって3回表の時点で2対10というスコアから延長10回・15対14でサヨナラ勝ちした初戦・徳島商戦、延長12回を制した2回戦・徳島池田戦、「複数得点を取る」チームコンセプトを体現し逆転で快勝した準々決勝・生光学園戦。そして4点ビハインドから大会3度目の逆転勝ちを飾った準決勝・小松島西戦という勝ち上がりの経過は、彼らにとっては必然だったわけです。

 加えてマネージャー4人も用具の出し入れをテキパキとこなすなど、彼らの効率的な野球に大きく貢献。主将が県大会終了後、ラグビーW杯・日本代表の言葉を借り「15人でONE TEAMになれたことがよかった」と話したのも、15人の結束を感じていたならではの言葉だったといえるでしょう。

先輩越えの「四国大会1勝」以上、そして夏の初甲子園へ

 こうして2年連続3度目の地元開催・秋季四国大会に駒を進めた川島ですが、大会では新田(愛媛)の前に「目に見えないミスを見逃してくれず」(山根監督)0対6と完敗。「先輩を超える四国大会1勝以上」は次なる宿題に終わりました。

 ただ、チームは下を向いてはいません。指揮官はこう選手たちの様子を話してくれました。

 「四国大会後にミーティングをしても『15人でやれることを証明したい。次は春の四国大会で勝って借りを変えそう』という声が出ていました。僕も含めてチャレンジを続けていきたいですね」

 そう、失うものは何もありません。まずは先輩超え、その先にある夏の甲子園初出場へ向け、川島の「ONE TEAM」は続いていきます。

(文・寺下 友徳

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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