ハムスト肉離れとHQ比
ヒップリフトは自重でできるハムスト強化のトレーニング。足の位置をお尻から遠ざけるとより強度が高まる。
走っている時や切り返し動作の時などに太ももに違和感を覚えたり、ブチッという音を聞いて動けなくなってしまったりした選手がいるかもしれません。筋肉の損傷によって起こるケガを一般的な総称として「肉離れ」と言いますが、これは筋肉を覆っている筋膜や筋線維の一部が損傷し、機能低下を起こした状態です。肉離れの原因としては、柔軟性や筋力が低下した状態や、ウォームアップやクールダウン不足、疲労物質の蓄積などが挙げられますが、筋力のアンバランスもまた原因の一つとされ、特にランニング時によくみられる太もも後面(ハムストリングス)の肉離れは筋力のアンバランスが大きく影響していると考えられます。
ハムスト肉離れ予防の指標として使われるのがH/Q比(=ハムスト・大腿四頭筋の筋力比)です。太ももの後面と前面の筋力比と考えてもよいでしょう。太ももの前面部にある大腿四頭筋を1としたときのハムストの筋力を数値で表し評価します。通常は大腿四頭筋の筋力がハムストよりも強いのですが、さらに大腿四頭筋の筋力が強くなったり、もしくはハムストの筋力が弱くなったりするとH/Q比が減少し、ハムストの肉離れを起こしやすくなります。
H/Q比は0.6を下回ると、ハムストの筋力強化が必須となり、0.5を下回ると肉離れを起こす可能性が高くなるといわれています。H/Q比を測定するためには専用のマシンが必要となりますが、測定するマシンがない場合はレッグエクステンション(大腿四頭筋)やレッグカール(ハムスト)の挙上重量を参考にするとよいでしょう。
大腿四頭筋ばかりが強くなってしまうと後面にあるハムストの筋肉はいつも伸ばされた状態になりやすく、ゴムが伸ばされて強度を失い、やがて切れてしまうようにハムストの筋肉を傷めやすくなります。ハムスト肉離れの再発を防ぐためには、自重でできるヒップリフトやレッグカールをはじめ、デッドリフトなど行って、ケガをする前よりもさらにハムストの筋力強化を行うことが大切です。これと同時にストレッチなど筋肉の柔軟性を高めるようなセルフコンディショニングもしっかりと行うようにしましょう。
文:西村 典子
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