試合レポート

智辯和歌山vs熊本西

2019.03.28

熊本西は力及ばず、接戦に持ち込ませなった智辯和歌山の破壊力

 熊本県勢初の二十一世紀枠での出場となった熊本西智辯和歌山という、全国でも指折りの名門との対決を前に、横手文彦監督は「どこが相手でも接戦を戦い抜きたい。相手が相手なので、泥臭くやるしかない」と、県立校らしい地に足がついたコメントを残した。
 実際、大方の予想も熊本西が勝つには、接戦に持ち込むしかないというものだった。

 そんな中で始まった試合だが、まず先制点を挙げたのは熊本西だった。
 2回裏、4番・堺祐太、5番・霜上幸太郎の連続ヒットで、無死一、三塁のチャンスを作ると、6番・浦田健太郎が二併殺に打ち取られる間に、三塁ランナーが生還する。名門相手の先制点に、一塁側アルプススタンドは、大きな盛り上がりを見せた。

 熊本西の先発は、エースの霜上幸太郎。昨秋の映像を見たときは、技巧派のイメージが強い投手だったが、実際に見ると球速も130中盤を記録するなど、思っていた以上にストレートにも力がある投手であることに驚いた。
 霜上は、このストレートを最大限に生かすために、カーブやチェンジアップをコーナーに織り交ぜながら、上々の立ち上がりを見せた。

 だが、そんな霜上に対しても智辯和歌山は冷静だった。打順が一回りすると、徐々に霜上が捉え始める。
 3回表、智辯和歌山は一死一、二塁のチャンスから、2番・西川晋太郎のライト前タイムリーで1点を返すと、続く3番・黒川純平もライト前タイムリー。その後、熊本西のミスも絡んで、この回一挙4得点。試合の流れが一気に智辯和歌山へと傾いていった。

 「二巡目に入るときに、アクセルを変えようとか、配球を変えようとか何か声変えすればよかった」
 試合後、熊本西の横手監督がそう語ったように、二巡名以降の智辯和歌山の各打者は明らかにスイングが違った。緩急差をつける霜上のピッチングをもろともせずに、猛攻を浴びせていく。

 4回には4番・東妻純平のスリーランホームランなどで7点、6回にも6番・佐藤樹のタイムリーなどで2点を挙げた智辯和歌山。試合を完全に我がものとし、接戦に持ち込みたいという熊本西の思惑は、どんどん遠ざかっていった。

 結局試合は13対2で智辯和歌山が勝利し、2回戦進出を決めた。
 試合後、熊本西の横手監督は智辯和歌山打線に脱帽しながらも、名門を相手にベストを尽くした選手たちを称えて前を向いた。
 「もう少し点が少なければ、エンドランなど仕掛けることが出来ましたが、あれだけ点差が開くと打つしかない状況になってしました。選手たちは良く戦ったと思うので、夏に向かって練習したいと思います」

 また13失点を喫したエースの霜上も、悔しさを見せる一方で、全国トップレベルのチームと対戦できたことを大きな経験と捉えて、前を向いた。
 「悔しいですが、全国トップレベルのチームを知ることが出来たのは大きいです。夏に向けて、どれだけ近づくことが出来るかが鍵だと思います」

 熊本西はこの後、4月末から鹿児島で開催される春季九州地区大会を控えている。この経験を糧に、どんな戦いを見せるか注目だ。

(文=栗崎 祐太朗

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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