2018年セ・リーグ首位打者のダヤン・ビシエド(中日)が大事にする「ボールの見極め」と「ヒッティングポイント」
今年のセ・リーグで首位打者を獲得したのがダヤン・ビシエド選手だ。2016年から中日ドラゴンズに入団したビシエド選手は日本1年目で22本塁打を記録。年々、打撃が磨かれていき、2018年の今シーズンは打率.348、26本塁打、99打点とキャリアハイの成績を残した。ビシエド選手はキューバ出身で、キューバリーグで活躍し、MLBでは5年間で66本塁打を記録。3か国でスラッガーとして活躍するビシエド選手に自身の打撃論、これまでの経験を存分に語っていただいた。
ちょうどよいポイントで打つことが最も打球が飛ぶ
ビシエド選手(中日ドラゴンズ)
―― ビシエド選手はキューバでプレーされていましたが、バッティングなどはどのような指導を受けていましたか。
ビシエド選手(以下、ビシエド) キューバは日本と同じように、みんな小さいころから上手で、色々なカテゴリーがあり、7~8歳、9~10歳、11~12歳というようになっていて、最初は基本的なことですね。ティーボールを当てて打つ、そしてそのスウィングをしっかりと確立させる。だんだん良くなると、ピッチャーが投げるボールを打つ段階に入ります。
―― 長打力は当時からあったのでしょうか。
ビシエド 私の場合、打撃面については少しずつ能力が高まっていき、練習していくうちに良くなっていきました。パワー自体は小さい頃からありました。
―― 日本人から見ると、キューバの選手は非常にパワーがあり、遠くに飛ばす技術がすごいと感じるのですが、教え方は統一しているのでしょうか?
ビシエド いえ、それは人によって違います。みんな一緒の教え方はしません。バットのスウィングスピードや、ボールに当てるということ、日本の選手でパワーがなくてもスピードで飛ばす方はいますよね。ボールを飛ばすということはパワーだけではありません。
―― なるほど。ビシエド選手なりにボールを遠くへ飛ばすために意識していた事はありますか。
ビシエド やはり、ボールをしっかり捉えるということです。パワーというのは助けにはなりますが、ポイントが前のほうで打ってもダメですし、丁度いいポイントで打たなければ、ボールは飛びません。良いポイントで打つという事ですよね。そうすれば、ボールは飛んでいくと私は考えています。
ティーバッティングを行うビシエド選手(中日ドラゴンズ)
―― キューバリーグの後、ビシエド選手はメジャーリーグでプレーされましたが、メジャーリーグ、マイナーリーグでバッティングについて教えてもらったことは何ですか。
ビシエド アメリカでの経験、指導は個人的に良かったです。コーチが個人につき、そのレベルになれば、逆に悪いところを個人的に指導されます。メジャーリーグは、欠点があればそこを直すような指導でしたね。
―― ビシエド選手のバッティングを見ると、センターやライトに広角にホームランを打っていますが、これはメジャーリーグ時代からできているのですか。
ビシエド これは野球を始めた時からです。センターを中心に打つバッティング、レフトだけでなく、ライトにホームランを打てるというのは、始めからです。もちろん練習もしなければいけませんが、才能という部分もあります。それが続くように、どういうスウィングをすれば自分は一番飛んでいくのか、というのを見つけます。
―― ピッチャーとの駆け引きについてですが、ピッチャーにタイミングを合わせるためにはどんなことを意識していますか。
ビシエド タイミングを取るのはメジャーよりも日本のほうが難しいです。日本の投手はタイミングを外そうとして時間をかけて投げたりしますからね。メジャーはピッチャーの球速は速いですが、タイミングをとるのは簡単です。実際に対戦しながら、体感で掴むという感じですかね。ネクストサークルでタイミングを合わせたりなどをします。
―― 今シーズンは打率.348と高打率を残し、首位打者を獲得されました。その理由や秘訣について教えてください。
ビシエド 悪い時期が少なかったことが一番だと思います。調子の波を少なくして、また調子を持続できたことが一番の理由だと考えています。
[page_break:ボールの見極めをよくする構えも見つけよう]ボールの見極めをよくする構えも見つけよう
ティーバッティングを行うビシエド選手(中日ドラゴンズ)
―― 高打率の要因として、日本の解説者の皆さんは、ビシエド選手はインコースが打てるようになったといいますが、それについてはどうですか。
ビシエド 自分もそう思います。やはり内角を打つというのは難しいですからね。あとストライクゾーンの見極めですよね。ここをしっかり見極めれば打率が上がります。
―― そのインコースを打つためにコーチから指摘はありましたか。
ビシエド 近めのボールは基本的にはボールと捉えていますので、近めのボールはあまり手を出さないようにしています。
もちろんあとは練習で強振しすぎない。リラックスして対応をするという感じです。
―― 日本の高校野球は最近では強く振る、フルスウィングという意識が出ていますが、それについてはどう思いますか。
ビシエド その年代は良いかもしれませんが、また上がっていく、ピッチャーがさらに強くなった時に、それに適応しなければなりません。
自分もその年代の時は力強くスウィングしてたので、そういう時代もあっていいとは思いますが、上にいくと自分自身で分析してそんなに力を入れてスイングはしなくていいと思いますね。
―― これはやはり必要な過程だと思いますか。
ビシエド 僕が打撃で一番大事なのはボールをしっかり見ることだと考えています。全てのボールがホームランにできる訳はなく、ピッチャーも打たれないようにしているわけですから、今の段階ではそんなに力を入れなくても、見たら良いボールを打って、ホームランになっていることはあります。
強い打球ではなく、良い技術、しっかりボールを捉えることが出来ればボールは飛んでいきます。
ビシエド選手(中日ドラゴンズ)
―― つまりビシエド選手は普段のバッティング練習から、自分がよくボールを見える構えやタイミングの取り方を作っているということでしょうか?
ビシエド そうですね。やはり自分のいいポジション、それこそしっかりバッティングができているという感覚を練習では持ちたいですね。
―― 高校野球では、進塁打を打つためにゴロを打つなどが結構ありますが、それは意識したほうがいいですか。
ビシエド それは大事な考え方だと思います。高校野球をやっている時期は成長段階ですから、そういうことを覚えるのも大事です。野球において、ランナーを進めるバッティングも必要ですし、でも普通のバッティングも極めることも必要ですよね。バッティング、進塁打。それをすべて自然と出来るように練習することが大切だと思います。
―― バッティングにおいてスイングは色んなコースとかピッチャーに合わせてそういう芯にあてるバッティングが大事ということですか。
ビシエド そうです。しっかりボールを捉えることが出来れば問題ないです。
―― ビシエド選手に憧れる高校球児に一言お願いします。
ビシエド とにかく一生懸命練習すること、それが一番大事だと思います。個人練習ではバッティングをして、自分の考えでうまくなることを追求する。そして自分で興味を持ってコーチの話を聞いてやってほしいです。
(文・河嶋 宗一)