擦り傷への対応
スライディングによる擦過傷なども菌が侵入すると化膿して痛みを引き起こすことがあるので注意しよう。
野球は他人との接触が比較的少ないノンコンタクトスポーツに分類され、突発的なアクシデントやケガはラグビーやサッカーなどのコンタクトスポーツに比べると少ないと言われています。しかし他人との接触は少ないものの、スライディングやデッドボールなど人との接触以外で起こる急性期のケガは決して珍しいものではなく、擦り傷などは日常的なケガといっても良いでしょう。
ところが膝をすりむくなどして出来た擦過傷(さっかしょう:すり傷のこと)をそのまま放置し、プレーを続けているとそこから菌が入って患部付近が腫れてしまうことがあります。これを蜂窩織炎(ほうかしきえん)といい、素足で競技を行う柔道選手や力士などによくみられる化膿性炎症ですが野球の現場においてもしばしば見られることがあります。蜂窩織炎は傷口や毛穴、小さな傷などから細菌が侵入し、リンパ節付近が腫れて熱感をもつようになります。
膝をすりむいた場合、膝そのものというよりも膝より上の大腿部が赤く腫れ上がり、股関節の付け根付近(リンパ節)に痛みを感じるようになります。また体温を計ってみると37℃を超えていることもしばしばです。はじめは虫刺されのように小さな刺し傷と腫れが見られる程度のことが多く、虫刺されと間違いやすいのですが、患部に熱感があったり、リンパ節の腫れがみられたり、体全体も何となくだるさを感じるような場合は早めに医療機関を受診することが大切です。
軽度であれば抗生物質などを服用することで、症状は軽快することが多いのですが、程度がひどい場合は医療機関で点滴を行うこともあります。さらに程度がひどくなると入院を余儀なくされることもあるので注意が必要です。
野球の場合、擦り傷によるものが多いのですが、深爪をしてしまった指先や足の巻き爪などでもこうした炎症症状を引き起こすことがあります。小さな傷口などでもそこから菌が入ってしまうことで起こる可能性がありますので、汗をかいたままの状態や清潔ではない状態を長く放置せず、流水などできれいに洗い流してガーゼ等で保護をするといった応急処置をキチンと行うようにしましょう。
文:西村 典子
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