試合レポート

木更津総合vs千葉黎明

2018.05.07

力と力のぶつかり合い 最後は木更津総合のスラッガー・野尻が決める!

木更津総合vs千葉黎明 | 高校野球ドットコム
最速143キロを計測した林直樹(千葉黎明)

 千葉県大会準決勝。第1試合は2年ぶりの関東大会出場を決めた千葉黎明と、昨夏甲子園出場の木更津総合の一戦はハイレベルな一戦となった。

 先制したのは木更津総合。1回裏、一死満塁から5番野尻 幸輝(3年)が中犠飛を放ち、1点を先制する。

 だが千葉黎明も3回表、二死一、三塁のチャンスから4番渡邉が高めのストレートを狙い撃ち、中前適時打で同点に追いつくと、4回表一死二塁から8番佐久間がセカンドへ強襲安打。セカンドがはじいた打球がセンターへ転がる間に二塁走者が生還し、勝ち越しに成功する。

 千葉黎明の先発・林直樹(3年)は回を重ねるごとに良くなっていく。ワインドアップからゆったりと始動し、左足を上げたとき、右足一本でしっかりと立ち、滑らかな体重移動から球持ち良く投げる姿は三浦銀二福岡大大濠―法政大)を彷彿とさせる。ストレートのスピードは常時135キロ~140キロ(最速143キロ)を計測し、3回裏には、犠飛を打たれた野尻には内角へ142キロのストレートで見逃し三振。4回裏にはこの日最速の143キロを計測するなど、140キロ以上を1イニングに5球は投げており、速球の能力は本物。ただ速いだけではなく、回転数も高く、キャッチャーミットを突き刺すような威力ある速球は簡単に前に飛ばすことはできず、さらに140キロは7回まで計測しており、スタミナも十分だった。

 また、120キロ前後のスライダーは外だけではなく、右打者の内角ボールゾーンからストライクゾーンに投げるフロントドアを使ったり、130キロ台のツーシームや、100キロ前後のカーブなど変化球の精度も高い。

 5回裏、林は二死一、二塁から6番太田に三塁線を抜ける安打を打たれて1点を失ったが、7番小池 柊稀(2年)を142キロストレートで空振り三振に打ち取る。

 林は1年夏から公式戦で投げているが、この時は線も細く、球速も120キロ台だった。しかし徐々に体が大きくなり、2年秋に135キロ、そして3年春に143キロを計測するまでになったのだから、素晴らしい成長である。ピッチングの総合力を考えれば、東千葉ナンバーワンピッチャーといえるのではないだろうか。


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野尻幸輝(木更津総合)

 そして6回表、千葉黎明は5番岡澤 倫太郎(3年)がレフトへ本塁打を放ち、勝ち越しに成功。だが6回裏、木更津総合は林を攻め立て、二死二塁から2番田中斗暉也(3年)の二塁内野安打と敵失の間に二塁走者が生還し、再び同点に追いつく。7回裏、ここまで投手として力投を見せていた野尻が、林が投じた内角直球をフルスイング。打った瞬間、本塁打と確信したのか、人差し指を突き上げ、ゆっくりと歩き出す。打球は弾丸ライナーでライトスタンド上段へ突き刺さり、勝ち越し本塁打となる。満面の笑みでダイヤモンドを回る野尻。

 野尻にとって待望の一発だった。これまで角度のあるフライを打つたびに悔しさを表していた野尻。この春、初めての本塁打にほっとしたことだろう。

 勢いに乗る木更津総合は8回裏、二死二塁から3番東 智弥(3年)がセンターの頭を超える適時三塁打を放ち、5対3と突き放した。

 木更津総合は2番手でリリーフした背番号1の白井 直人(3年)が2回無失点の好投で千葉黎明打線を抑え、決勝進出を決めた。

 木更津総合は林の投球に苦しめられ、終盤まで苦しい試合運びだったが、土壇場で力を発揮し、逆転勝利を収めた底力はさすがであった。

 千葉黎明は失策絡みの失点が多かったのが反省点。やはり強豪校と対戦すると、1つの守備ミスが命取りになる。林の投球は、強打の木更津総合打線にも十分通用することを証明しただけに、夏までの宿題としてクリアしていきたい。

 木更津総合は決勝、千葉黎明は3位決定戦に臨み、そして関東大会に進んでいく。レベルの高いチームと対戦できるのは、より成長のきっかけとなる。少しでも夏につながる試合になることを期待したい。

(文・写真=河嶋宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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