試合レポート

日大三vs由利工

2018.03.24

日大三の主将・日置の大会1号が流れを呼び込む

 第90回選抜高等学校野球大会の2日目。第1試合は21世紀枠で春夏通じて甲子園初出場の由利工(秋田)と、2年連続20回目の出場となる日大三(東京)が対戦した。

最速142km/hの真っ直ぐを武器に昨秋は83回1/3で83三振を奪った由利工の右腕・佐藤 亜蓮(3年)と、4割近いチーム打率を誇り都大会8試合の平均得点が10点を超える強力打線の日大三が相まみえた一戦。

試合を決めは主砲の一発で挙げた先制点だった。

序盤、攻め込んだのは由利工。1回表、先頭打者の土井 幹太(3年)が四球で出塁すると犠打と内野ゴロで三塁まで走者を進めるが、4番・石原 龍之介(3年)はセカンドゴロに打ち取られ無得点。2回表もヒットと四球で二死一二塁とし、9番・佐々木 聖弥(3年)がピッチャーの足元へ鋭い打球を放ったが、日大三の遊撃手・日置 航(3年)が正面に回り込んで確実にさばき得点を与えなかった。さらに、由利工は3回表にも二死一二塁、4回表も二死三塁と立て続けに得点圏へ走者を送るもののチャンスであと一本が出なかった。

 一方、由利工の先発・佐藤亜はセットポジションからゆっくりと足を上げて、力みのないフォームからキレの良いストレートを投げ込み、変化球もカットボール、スライダー、チェンジアップ、カーブと多彩な球種を駆使。初回の立ち上がりこそ先頭打者を四球で出し犠打で一死二塁とされるが、注目の好打者・日置を中飛、4番・大塚を二ゴロと、ストレートでどんどんインコースを突いていく強気のピッチングでピンチを切り抜けた。3回からは球速も上がっていき、良いリズムになっていくかと思われたが、4回裏。この回、先頭打者の日置が1ボールからの2球目をレフトスタンドへ今大会第1号となるソロホームラン。高めに浮いた甘いスライダーを逃さずにとらえた一発だった。

 この頼れるキャプテンの一打で流れは一変、ペースは日大三へ。この回、さらに一死から5番・中村 奎太(3年)、6番・飯村 昇大(3年)の連打で一三塁と攻め、柳澤 真平(3年)の中犠飛で追加点。6回裏には大塚がこれまで苦しめられてきた内角のストレートを振り切り、詰まり気味ながらもパワーで左中間へ。好走塁もあって二塁打とすると、暴投で三進し、飯村のレフト前適時打でリードを3点に広げた。さらに日大三は7回裏にも日置のタイムリー、8回裏には齊藤 龍二(3年)にもタイムリーが出て5得点。守っては、4回から登板した二番手の井上 広輝(2年)が最速147km/hのストレートを中心にスライダー、チェンジアップといった変化球も冴え、危なげないピッチング。5回から8回までの4イニングはノーヒットに抑え、9回表は安打で走者を一人許すものの、最後の打者をライトフライに打ち取りゲームセット。日大三が5対0で由利工を下した。

 由利工の佐藤亜は自己最速に並ぶ142km/hを計測し、6回裏は一死満塁のピンチを迎えるも、ストレート2球で追い込み、低めのスライダーで内野ゴロを打たせてゲッツーを取るなど粘りも見せた。守備陣もノーエラーと練習の成果を見せたが、チャンスの場面でのバッティングに課題を残した。

 勝負を決めるカギとなったのは、やはり先制点だった。押され気味だった日大三は3回まで1安打だったが、4回裏に先制して以降は10安打で5得点。逆に、押し気味だった由利工は4回表まで毎回、得点圏へ走者を送っていたが、5回以降はわずか1安打に抑えられ、1度も2塁まで走者を進めることはできなかった。まさに先制点をきっかけに真逆の展開となっただけに、流れを変えた日置の一発が日大三に勝利を呼び込んだと言えるだろう。

(文=大平明

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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