引退後が本当の勝負
現役時にできていたことが引退後には…。
ミーティング中の選手たち(写真はイメージ)
三年生が引退し新チームがスタートしています。秋大会もほとんどのチームは敗戦終了し、勝ち残っているチームはエリア大会で甲子園を目指しています。新チームの指導に行くと、引退した三年生が挨拶に来てくれます。
「お世話になりました。進路は●●を目指しています!」
少し伸びた髪の毛は「引退した野球選手」そのものです。野球をしているときは何事にも一所懸命でしたが、引退してからの行動は誰も見ていないからこそ大事です。あれだけ野球部ではきっちり整理整頓していたのに、引退してからだらしなくなったりする選手もいます。
今までは野球部として取り組んでいたから、自分だけじゃなく周囲の仲間も実践していました。引退して「自分だけ」になると、今まで取り組んできたことを疎かにする選手は多いです。
上級生は下級生の見本となるべき。現役時代は「後輩に何かを伝えよう」と頑張った選手はたくさんいます。自分のことだけじゃなく、後輩のことも考えながら動いていました。
しかし引退して数か月後・・
後輩が「あの先輩みたいにはなりたくないな」、尊敬していた先輩が引退して適当になっている姿を見てがっくりしているケースもあります。校則違反の茶髪や、服装の乱れがある人もいます。
現役中に「なぜ当たり前の実践をするのか」を選手に話します。整理整頓が得意な選手は稀です。大抵は苦手で、意味を唱えながらも最初は「やらされた感覚」で嫌々行います。
口うるさい指導者がいるから仕方がなく始めた当たり前の実践も、引退する直前には自分の意思も入り周囲から褒められるほどの実践になります。実戦の意味を説くときに、人に言われるからやるとか、野球で勝つためにやるのではなく、自分をよくするために実践すると伝えます。
誰もが面倒くさいと思えることを継続することによって、自分に我慢力がついて強くなっていきます。自分がよくなっている感覚が分かった選手は引退後も継続します。サポートしているチームの現役選手たちには必ず「引退後」の話しもします。
本当の戦いは引退してから!
野球で培った我慢力を次のステップに
誰にも管理されない状況だからこそ、本人の意思によって行動は左右されます。
「誰もみていないからやらないのは格好が悪い。誰がみていなくても今まで行ってきたことを継続することは格好がいい。人生は常に自分との勝負、誰がみていなくても実践できる人になって欲しい」
現役時代は自分との闘いをしてきたのに、引退後、自分へ勝負を挑まない選手をみると寂しくなります。引退後は、進学受験で勉強を頑張り、就職に向けて資格を取ったりする人もいます。次のステップに向けて頑張るのですが、できれば野球で培ったものを使って欲しいと願います。
ある選手に聞きます。
「勉強と野球はどっちが大変だ?」
「野球に比べれば勉強はかなり楽です!!」
野球で培った我慢力を次のステップに使えているようです。今までしてきたことを引退してからも継続すれば、心を落ち着けながら何事にも取り組めます。
野球を引退すると、野球がうまかったことやレギュラーだったとか、ホームランを何本放ったなど関係ありません。引退すれば「引退した野球選手」として全員が同じです。野球がなくなった後に、何が残る自分なのか。
プロ野球選手も、社会人野球選手も、大学野球までプレーをした選手も例外なく引退します。引退してからが本当の戦いで、そこからの人間性が「その人」なのです。
先日、あるサポートチームで控えだった元選手と会いました。彼は高校卒業後、大学へ進学して教師を目指しています。教師は「教える立場」です。教える人が見本になれない行動をしているようでは、学生たちも伝えていることを聞かないことでしょう。
彼は立派な話の聞き方をして将来についてはっきりと語っています。現役時代は控え選手だったので少し自信のないような雰囲気でした。しかし、今の彼は背筋が伸びて立派な青年に変身していました。
詳しくは聞きませんでしたが、高校時代厳しい指導を受けてきたことが身についているように思えました。主力だろうが控えだろうが、卒業して羽ばたけば「ひとりの人間」です。彼の立ち振る舞いをみて、「やっぱり引退してからが勝負だな」と思いました。
引退して技術以外を残せる人
当たり前の実践を卒業後も継続しよう
彼には聞いていませんが、当たり前の実践を今も継続して行っていると感じます。高校時代経験したことを「0」にすることなく、良いものは引き継いでいるのです。
まじめにコツコツやる人は、自分を成長させ様々な良いものを引き寄せる生き方をします。野球の技術は野球をしているときには役に立ちますが、野球を引退してからは技術じゃなく「野球を通して培った力」を使います。
今、現役で野球をしている選手は、来年の夏、再来年の夏に確実に高校野球を引退します。卒業後、野球を続ける人もいるでしょうがそれでも数年後やっぱり引退します。
目の前のことを一所懸命にやることと、現役時代取り組んでいた当たり前の実践を卒業後も継続して欲しいと思います。これからも関わる選手たちには大切なことを伝えて行こうと思います。
(文=遠藤 友彦)
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