Column

清宮幸太郎が歴史に残るスラッガーになるにはしっかりとした準備期間が必要だ

2017.09.12

 第28回WBSC U-18ベースボールワールドカップ一番の注目は清宮幸太郎のパフォーマンスだった。清宮にとってプロ、大学で使用する木製バットを使った真剣勝負を臨める良い機会。清宮がプロ1年目からどのくらいの数字を残すのか?それが想像できる良い大会だった。結果は、41打数7安打 2本塁打6打点 打率.219と悔しい結果に終わった。ここからは清宮が高卒プロ入りした前提で話を進めるが、これまでの実績をすべてリセットして、一から取り組むべき選手だと実感した。

清宮幸太郎が歴史に残るスラッガーになるにはしっかりとした準備期間が必要だ | 高校野球ドットコム
清宮幸太郎(早稲田実業)

清宮幸太郎が歴史に残るスラッガーになるにはしっかりとした準備期間が必要だ | 高校野球ドットコム
南アフリカ戦の本塁打シーン

 周囲が期待しているのは、松井秀喜清原和博級の活躍だろう。2人とも高卒1年目から二桁本塁打を放ったが、清宮もそれができるかというと現時点では厳しい。ただ、将来的にはそのクラスまで成長できる可能性は秘めているが、高卒1年目からそのハードルを設けるのは本人のためにならないように感じた。

 なぜ厳しいのを感じたのかを説明すると、140キロ~145キロ級のストレートに対応ができていないということだ。清宮は力のある投手に対し、力負けするバッティングが目立った。海外の打者を見ると、145キロ前後の速球に対し、振り遅れせず打てる打者が実に多い。その選手たちを見ると振り遅れをしない待ち方、スイングスピードを持っている。清宮がそれができないのかというと、できる可能性を持った打者である。

清宮幸太郎が歴史に残るスラッガーになるにはしっかりとした準備期間が必要だ | 高校野球ドットコム
カナダ戦の本塁打シーン

 ホームランを打った打席を振り返ると、まず南アフリカ戦は、112キロのスライダーを引っ張ったホームラン。カナダ戦のホームランは131キロのストレートを打ったバックスクリーン弾。変化球には合わせるのが上手い選手だが、まだ140キロを超える速球に対してジャストミートして本塁打にすることはできていない。そうなると、清宮が取り組む課題は、140キロ以上の速球をしっかりとコンタクトして、本塁打にできるか?が課題となる。切れの良い変化球の対応は次のステップになる。

 今回の打撃不振。これは実戦不足に尽きる。打撃結果を見ると、木製バットに適応できていなかったという考えになってしまうが、清宮の場合、普段の打撃練習では代表選手の中で最も本塁打を打っている選手で木製バットには対応をしている。しかし打撃練習と実戦は別物。実戦での備えが足りなかったといえる。これは代表入りして、約10日間余りで本番に入ってしまう準備期間の少なさから考えれば致し方ないといえるだろう。

清宮幸太郎が歴史に残るスラッガーになるにはしっかりとした準備期間が必要だ | 高校野球ドットコム
韓国戦の打撃シーン
140キロ台の速球に負けていた

 つまりU-18の例を見れば、清宮がプロに進んだ場合、順応するまで多くの実戦機会を積む必要がある。145キロ前後も打てる、変化球にも対応できる、安定して自分の打撃フォームで打てる。その段階になってからこれまでのスラッガーの成績と比較してよい段階に入るのではないだろうか。清宮はしっかりとした準備期間があれば、想像を超える速度で、進化を見せてくれるのではという期待感はある。

 清宮も、「自分も実力が足りないものが多くあり、悔しさを多く得られました」とかなり悔しがっている様子。その悔しさが今後の練習へのモチベーションになることだろう。

 清宮がプロを選択した場合、ぜひその球団のファンは焦ることなく、多くを求めすぎず、地道にスターの階段を昇る清宮を見守ってほしい。

(文=河嶋宗一

清宮幸太郎が歴史に残るスラッガーになるにはしっかりとした準備期間が必要だ | 高校野球ドットコム
注目記事
第28回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ 特設サイト

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.06.01

大阪桐蔭、山梨学院、慶應義塾…強豪校・名門校の昨年度卒業生はどの進路を歩んだのか?【卒業生進路一覧】

2024.06.01

【愛知】報徳学園は豊橋中央にサヨナラ勝ち、豊川には黒星<招待試合>

2024.06.01

【東京六大学】早稲田大が大勝で7季ぶり優勝に大手!プロ注目スラッガー・吉納が2発、エース伊藤は8回1失点の快投見せる!

2024.06.02

福岡に逸材現る! ケガから復帰後即144キロ! 沖学園2年生エース・川畑秀輔に注目だ!

2024.06.01

センバツ出場の豊川がセンバツ準Vの報徳学園を破る!課題だった投手陣に手応え【愛知招待試合】

2024.05.31

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在34地区が決定、佐賀では佐賀北、唐津商、有田工、龍谷がシードに

2024.05.28

【鹿児島】鹿児島玉龍と樟南が8強へ<NHK旗>

2024.05.29

【宮崎】延岡学園と日章学園がともにタイブレークを制して4強入り<県選手権大会>

2024.05.28

【鹿児島NHK選抜大会】錦江湾が1点差勝利!出水工の追い上げ、あと1点及ばず

2024.05.28

【佐賀】佐賀商と龍谷が、ともにコールド勝ちで決勝へ<NHK杯>

2024.05.21

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.05.15

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.13

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在29地区が決定、愛媛の第1シードは松山商

2024.05.31

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在34地区が決定、佐賀では佐賀北、唐津商、有田工、龍谷がシードに

2024.05.21

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在33地区が決定、岩手では花巻東、秋田では横手清陵などがシードを獲得〈5月20日〉