【長野展望】ノーシードにも実力校ずらり!有力校、有力選手の状況をまとめて紹介!
荒れた春。完成度高い小諸商が制す
高橋 聖人(小諸商)
荒れ気味だった春の長野県大会は、小諸商の61年ぶりの優勝で幕を閉じた。スタメンに2年生6人が名前を連ねるとはいえ、昨秋からほぼ不動のオーダーでこの時期としてはチームとしての完成度で他を一歩リードした内容だった。
選手起用など手探りの部分が多い春の大会だが、小諸商は絶対エース14492(3年)に連投を課すなど夏を見据えた戦いを貫いた。高橋は本調子でない中でもきっちりとゲームをつくれるあたりはさすが。決勝では2番手左腕・柳澤共亮(3年)も完璧な投球を見せており、投手陣は計算がついたといえよう。
攻撃陣は4試合で28得点し、どのタイプの投手も苦にしなかった。4番関優太(3年)は勝負強く、5番の2年生・渡邉大寿の成長も大きかった。メンバーの多くが昨夏のベスト4を経験し、昨秋は県3位で北信越大会でも1勝と、常に上位争いに絡める力を持っていることをあらためて実証した。
準優勝の東海大諏訪は一戦ごとに力をつけてきたチーム。もともと1番勝股裕太佳(3年)を起点にした打線には定評があった。4番宮尾将貴(3年)の復調も大きく、4試合で28得点が攻撃力の高さを裏付けた。一方で不安視されていたのが投手陣。ただ2年生右腕の宮本龍成が佐久長聖、北信越大会では福井工大福井の強豪に対し好投しており、夏へ光も見えてきた。
3位には昨秋の県チャンピオン上田西が入った。県内随一とも言える投手陣を抱えるが、春はその起用法を探った試合内容。絶対エースがいなくても十分に戦える駒をそろえるが、夏までに誰を軸にするかがテーマになりそう。打線は原田真学(3年)が新4番で定着。ただ下位打線に不安を残した。
4位となった東京都市大塩尻は、新エースとなった2年生左腕・高木唯楓の成長が大きかった。高木はまだ華奢な体だが、ストレートの切れは抜群。ただ体力面から夏は3年生投手の奮起が欠かせない。守備力には定評があるだけに、打線の強化が夏までの鍵になる。
夏連覇を狙う佐久長聖は、県大会1回戦で強豪・松商学園に競り勝ったが8強止まり。惨敗した昨秋から大幅に2年生をスタメンに起用し勝負をかけてきた。昨夏の甲子園でも好投したエース塩澤太規(3年)が健在なのは心強い。
このほか松本県ヶ丘、篠ノ井、伊那北の県立校3校がベスト8と健闘した。松本県ヶ丘は自慢の打線、篠ノ井と伊那北は投手を軸にチームが機能した。以上8校が、夏のシード校となる。
松商学園、松本深志、長野商…ノーシードに実力校ずらり
松商学園ナイン
〝荒れた春〟の影響で、多くの有力校がシード権を逃す結果となった。プロも注目する好投手・直江大輔(2年)がたくましさを増した松商学園は、県大会1回戦で佐久長聖と対戦し惜敗。夏はノーシードとなるが、攻守とも十分に上位争いできる戦力を備える。
その松商学園を地区予選決勝で破り1位で県大会に乗り込んだのが松本深志。小林綾・小林絃(2年)の140キロ超の双子投手を擁する実力校だが、県大会1回戦で難敵・上田西に敗れ、こちらもノーシードとなった。
また、昨秋の県準優勝校で地区予選を隙のない戦いぶり勝ち進んだ長野商も、まさかのシード落ち。昨秋、北信越大会に進み高岡商と競り合った飯山は県大会を逃したが、投手陣には自信を持つ。
このほか松本第一、創造学園の私立勢は春こそ今一つかみ合わなかったが、総合力は県上位クラス。地区予選で上田西と小諸商を破った上田染谷丘、好投手を擁する松本工や長野西、強力打線の野沢北などもあなどれず、ノーシードから下剋上を狙う。
上田西と佐久長聖は準々決勝で激突か
第1シードは小諸商。その対角のヤマに入ったのが第2シードの東海大諏訪となる。近年、交互に夏を制している佐久長聖と上田西は、小諸商とは反対のヤマで順当なら準々決勝で対戦する組み合わせになっている。シード校的には小諸商のブロックが恵まれている感もあるが、上述した通り、ノーシードに多くの有力校が回ってしまっただけ、日程面以外、シード校としてのメリットが薄れる可能性も高いといえる。
[page_break:本格派右腕たちに注目]本格派右腕たちに注目
塩澤 太規(佐久長聖)
右の本格派投手が多いのがこの夏の特徴といえよう。佐久長聖で昨夏の甲子園で好投している塩澤の安定感は相変わらず。ストレートは130キロ後半が中心だが、低めへの変化球、打者のタイミングを外す投球術と見た目以上に打ちにくいようだ。上田西の10504(3年)は1年時に夏の甲子園を経験。140キロを超えるストレートを軸に完成度の高い投手だ。チームメートの権田琉成も140キロを超えており、未完成の部分が多いだけに今後も楽しみだ。
小諸商の高橋は身長171センチと高くはないが、がっちりした体から140キロを超えるストレートに威力があり、タフさも兼ね備える。松商学園には直江のほかエース青栁真珠(3年)もともに180センチを超える本格右腕。前述した松本深志の小林ツインズはどちらが投げても遜色ない経験豊富な2年生だ。昨秋の県準優勝右腕の和田直人も140キロを超え、チェンジアップを武器にする。
この春県大会を逃した中にも、松本工の筒井恒匡は先輩・柿田裕太(現・横浜DeNA)を彷彿させるきれいな投球フォームを持ち、松本第一の川船龍星も140キロを超え、評価を上げている。エース級右腕の投げ合いがこの夏を盛り上げるに違いない。
順番通り?ストップをかけるのは?
過去5年間、佐久長聖と上田西が交互に夏を制してきた。その順番からいくとこの夏は上田西。果たして上田西がその番を死守できるのか、待ったをかけるチームが現れるのか。
何といっても注目は小諸商の仕上がり。大会での連投よりハードトレーニングの影響で本来の投球ではなかった高橋がどこまで上がってくるか。また2年生が多いとはいえ固定メンバーでチームとしての完成度は高いだけに、夏に向けてもう一段個々を上げられるかも初制覇には不可欠といえよう。
昨秋、今春とも比較的〝おとなしかった〟佐久長聖は、例年ここからが上げ時。藤原弘介監督が就任して5年連続で決勝進出の実績は無視できない。
絶対的な本命は不在だが、上位争いできる実力校は数校。ただノーシードにも有力校が多いだけに、エンジンがかかる前の大会序盤での対戦となると予想できない展開も十分にありえる。6月24日の組み合わせ抽選会が、いつも以上に運命を左右しかねないこの夏の長野県だ。
(文・小池 剛)