試合レポート

浦和学院vs東海大相模

2017.05.25

浦和学院、強者の野球で2年ぶりの関東大会制覇

浦和学院vs東海大相模 | 高校野球ドットコム
一時、勝ち越し打を打った菊池穣二(東海大相模)

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 今年の春季関東大会の決勝戦も、白熱とした好勝負となった。まず先制したのは、浦和学院。5番山本晃大の三塁打から6番秋山拓海の適時打で1点を先制する。だが、ここから東海大相模は堅い守備を見せる。一死一塁から7番本田渉を併殺で打ち取るなど、要所で東海大相模の好守が目立ち、少しずつ浦和学院が追い詰められていった。

 5回表、東海大相模は先頭の森下翔太が左前安打で出塁すると、二死三塁から敵失で同点に追いつく。そして7回表、東海大相模は一死から5番門馬大が中前安打。さらに門馬が二盗、三盗を仕掛け、二死三塁から7番菊池穣二の左前適時打で勝ち越しに成功する。

 東海大相模は必死の継投策。背番号1の秋田稜吾が、最速136キロのストレートとスライダー、フォーク、スライダーのコンビネーションで、浦和学院打線を1失点に抑えてきたが、7回裏、9番森川怜、1番矢野壱成の連打で二死一、三塁のチャンス。ここで東海大相模は先発の秋田を降板させ、右サイドの大和田聖人を投入する。大和田が必死に抑え、東海大相模ベンチは大きく沸く。

 浦和学院はここで切り札・佐野涼弥を投入。「もう自信のあるスライダー中心でいきました」と語るように、スライダー中心で2奪三振。佐野の快投に乗せられるように浦和学院ナインは、3番手の安里海を追い詰める。安里は作新学院戦後、「大きな舞台を経験して、試合勘を身に付けていきたい」と語っていたが、やはり今大会の登板経験の少なさと連投が影響していたのか、制球が安定せず、一死満塁のチャンスを作り、7番本田が左前適時打を放ち同点に追いつくと、8番佐野が打席に立つ。佐野に送られたサインはスクイズ。緊張がかかる場面だったが、佐野は見事に投手前に転がして、セーフ。勝ち越しに成功した。なんとしても1点をもぎ取りたい浦和学院の執念が勝った瞬間だった。

 9回表、マウンドに登った佐野はどこか落ち着きがあった。初球から縦スライダーを投げ込むが、あまりのキレ味に、分かっていても空振りをしてしまう。3番黒澤昂希、4番森下を連続三振に打ち取り、5番門馬を二ゴロに打ち取り、試合終了。

 大型選手は不在だが、要所で、勝負強さを見せて確実に1点をもぎ取り、そして堅実な守備を守り抜いていく今年の浦和学院の野球はまさに強者の野球。例年同様、3年生が中心となってがっしりと固めていく構図は変わりないが、投手陣の中心は2年生。その2年生たちがしっかりと結果を収めており、この夏だけではなく、秋にもつながる関東大会となった。


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優勝旗を持つ赤岩航輔主将(浦和学院)

 森士監督は「2年生3人は10イニング程度投げているので、良い経験になりましたが、まずは夏へ向けてしっかりとコンディションを整えていきたい」と先を見据えたコメント。3人の投球成績を振り返ると、左腕の佐野が11.1回を投げて、無失点、右腕の近野佑樹が11.2回を投げ、自責点0、187センチ右腕の渡邉勇太郎が、13回を投げ、3失点と好投。これで今大会登板がなかった清水洋炳が控えているのだから、投手陣の層の厚さは相当なもの。2年生3投手が春と同じく好投を見せれば、大きく計算が立つだけに、投手のコンディション管理は最重要課題となるだろう。課題は野手陣の全体の底上げ。個々の能力はもちろんとして、森監督は「どれだけ仲間意識を持てるかですね」
組織、個人のレベルを高め、2013年夏以来の甲子園出場を目指す。

 一方、敗れた東海大相模門馬敬治監督
「負けるといつも思うことなのですが、このチームで夏勝てるのかな?と。選手たちにも伝えたことなのですが、この負けを受け止めるのか。明日から頑張ろうではなく、今、しっかりと受け止めて、自分の中で反省をしてほしいですね」とコメント。とても大事な言葉である。そして夏へ向けてスタートした。時間が限られていることも理解している。
「夏までの準備が神奈川の中で最も短いチームですので、1日1日を大事に過ごしてほしいと思います。準備期間は短いですが、関東大会4試合を経験させてもらったのは収穫でした」
 そして主砲の森下翔太も「監督さんから残り40日間を大事にしてほしいといったように、自分は僅差で打てる選手となるために、しっかりとした準備と練習をしていきたい」と語った。それでも関東大会での8安打はいずれも重要な場面での安打。森下の活躍がなければ、ここまで勝ち進むことはできていない。
 森下だけではなく、今年の東海大相模は、一戦一戦戦うことに強くなった。そして野球に粘り強さも出てきた。

 優勝候補として期待されるこの夏は、さらに強力なチームとなるか、注目だ。

(取材・写真=河嶋宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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