試合レポート

松山聖陵vs徳島商

2017.05.04

徳島県勢・秋春四国大会連敗「15」に見える課題

松山聖陵vs徳島商 | 高校野球ドットコム
徳島商を126球7安打完封した松山聖陵・岡本 文哉(3年)

 この試合中に[stadium]オロナミンC球場[/stadium]で明徳義塾に0対4で敗れた鳴門渦潮に続き、徳島商佐藤 嵐(3年・172センチ77キロ・左投左打・吉野川市立山川中出身)が力投を演じながら「あと1点」が届かず松山聖陵に完封負け。これで徳島県勢は2015年から3年連続春季四国大会初戦敗退で連敗は「6」。

 秋も含めると5季連続四国大会初戦敗退。2014年秋の四国大会2回戦で徳島城南・川島鳴門がそろって敗れてから続く秋春四国大会連敗記録はついに「15」まで伸びた。

 徳島商・森影 浩章監督は試合後、こんな本音を漏らした。
「ウチは県内では勝てないけど、四国大会に出れば勝てると思っていた」。ここに現在の徳島県高校野球が抱える大きな課題が潜んでいる。

 近年、徳島県の高校野球大会ではネット裏に陣取る他校スカウティング部隊の数が増えた。現在、夏の徳島大会5連覇中の鳴門が昨秋県大会初戦で当時選手9人の穴吹に、今春も正規部員8人の名西に敗れ去った一因も、このスカウティングあってこそ。森影監督が「県内で勝てない」と話したのも、徳島商に対して県内他校がスカウティングの網を張っていることを知っているからこその発言である。

 しかしながら、その傾向は四国内・他の3県でも同様。そして昨夏甲子園で、アドゥワ 誠(現:広島東洋カープ)の好投で接戦に持ち込みながら、最後は打線が振るわず北海(北海道)相手にスカウティング不足を露呈した松山聖陵は優勝した県大会に続き、この四国大会でも事前情報や試合中の蓄積データを基盤として配球や守備位置を組み、変化させてきた。

 荷川取 秀明監督が「徳島商の打線は逆方向の意識が強かった。だからやることを精一杯やって悔いのないように、三塁手の吉田 翔斗(3年・三塁手・168センチ68キロ・右投右打・今治市立立花中出身)をラインよりに寄せた」と語った徳島商9回表一死満塁からの三直併殺は、その象徴的出来事。ベンチの選手たちからは「ナイスバッティング!」の声が飛び交ったが、自らの形としてはナイスバッティングでも、チームとして対応できなかったことは最悪。このことは忘れてはならない。

 もちろん、徳島県の高校野球関係者も四国大会連敗記録をよしとしているわけではない。

 徳島県高野連は今年から近年、西部・中央(A・B)・南部のブロック大会に留まっていた新人大会形式を変更。
「センバツ出場権獲得につながる競争力を養うことを主たる目的として」(出原 正人・徳島県高野連前理事長)基本は各ブロック2位校までと夏の徳島大会優勝校が集い、秋の徳島県大会シード権を決める中央大会を復活させることで、四国大会上位躍進への基盤を醸成しようとしている。

 ただ、その目的を達成するにはこれまでの認識を改めることも必須。走・攻・守の向上はもちろんのこと。「スカウティング力」にも向上へ力を入れること。最速150キロ右腕・板野の森井 絃斗(3年)など、毎年能力の高い選手を輩出している徳島県の高校野球であれば、この向上があれば1986年センバツの徳島池田以来、30年以上遠ざかっている全国制覇は決して夢物語ではない。

 敗戦から学び、さらなる切磋琢磨を積み、四国大会連敗脱出の先にある甲子園上位進出へ。徳島県の高校野球が、これを契機に一段高い歩みを進めてくれることを期待したい。

(取材・写真=寺下 友徳

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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