試合レポート

早稲田実業vs共栄学園

2017.04.09

「読む打撃」から「反応」でも打てる打者となった野村大樹

早稲田実業vs共栄学園 | 高校野球ドットコム
野村大樹(早稲田実業)

 「うまく反応で打てました」
会見場で現れた野村大樹(2年)は、4回裏に放った2ランはそう振り返った。この野村の一発は大きかった。1回裏に清宮幸太郎(3年)の適時打を先制し、2回裏には2番雪山幹太の走者一掃の適時二塁打などで5点を入れて、6対0で大きく点差を広げた早稲田実業。4回表、共栄学園は4番菊地奏汰の内野ゴロの間で1点を返されたが、4回裏、野村が2ラン。その後、共栄学園が追い上げて、一時は8対6の2点差まで迫られるだから、もしこの一発がなかったら、もっと苦しい試合展開になっていたかもしれない。それだけ大きな一発となった。

 野村の発言で注目したいのは「反応で打つ」という表現である。中学まで捕手だった野村は、打席に入る前やベンチにいるときから相手捕手の配球を見ており、その配球を読むのが非常にうまい選手である。

 相手の配球を読んで打つのは高いレベルで活躍するためには必要不可欠なスキル。野村は高1年秋にして高次元の打撃ができていた野村がなぜ反応で打てる選手になりたいと思ったのか。それは昨秋の明治神宮大会決勝の履正社戦がきっかけだ。

「真ん中付近に自分が張っていない甘いボールを見逃し三振してしまって、そういう球を打てないと上のレベルに行けないと思いました。打てなかったのが本当に悔しくて、反応を打つ練習をしてきました」
野村は、直球を待って変化球を打ち返す、または変化球を待って速球を打ち返せる練習をしてきた。その練習法を具体的に教えてくれた。

「うちの打撃練習では、2ストライクから投手が好きな球種を投げていいのですが、その時はガチンコ勝負。何を投げるか分かりません。狙っていない球でも甘いボールならば打つ。それができる練習を繰り返してきました」
この取り組みは結果として現れる。選抜では9打数5安打を打ったが、「狙い球ではない球種を打ち返すことができて自信になった」と話す。そして都大会の岩倉戦の本塁打、この試合の本塁打も自分の狙い球ではないものだった。
「真っすぐを狙っていて、甘いスライダーが入ってきたのでそれを打ち返しました」

 これで高校通算本塁打は25本に乗せた。さらに打者として隙がなくなっている野村。ますます手が付けられない打者になってきた。


 この試合は野村だけではなく、ほかの2年生たちの活躍が目立った。「2番を打っていますが、難しい打順はない」と2番を打つ雪山幹太清宮幸太郎、野村につなげることを考えて打席に立つ。自慢の思い切りの良さを発揮し、岩倉戦で本塁打、この試合でも走者一掃の二塁打と結果を残す。またセカンド・橘内俊治(3年)の故障により、代わりにセカンドに入る板谷竜太(2年)も8回裏に本塁打を放ち、大の仲良しの野村と一緒に喜んだ。1番に入った野田優人も連日の快打を見せて競争はますます激しくなっている。

 リリーフとして和泉実監督から大きな信頼を受けている左腕・石井豪(2年)も雨で制球が不安定になりながらも抑えた。

 2年生たちの活躍について、雪山は「自分も含めて2年生の結果が出なかったので大きかったと思うので、そのリベンジを含めて夏へ向けて頑張ろうと話をしています」
 一戦戦うごとに早稲田実業はチームとして厚みが増してきている。

 敗れた共栄学園は、一時は2点差まで追い詰めるなど粘り強い戦いを見せた。
ショートからリリーフを務めた菊地は、120キロ前後ながら、スライダー、フォーク系を低めに集める投球で、清宮に長打を許さなかった。また打っても鋭い打球を連発する投打の中心。この試合、2点適時打を打った1番青木龍也(3年)は逆方向へ鋭い打球を打てる強打の1番打者。冬場の食トレで、169センチ70キロまでビルドアップを遂げた選手で、夏へ向けてますます期待がかかる選手。

 6回、8回に2本の適時打を打った神山貴紀(2年)、代打の切り札として結果を残した伊藤大晟(3年)など多くの選手が活躍を見せた。

 主将の大西亨和(3年)は、早稲田実業と戦う前、「[stadium]神宮第二[/stadium]でプレーするのは初めてで、多くの人が集まる中で野球ができるのは、僕たちは本当に楽しみにしています。相手は本当に強い相手ですので、挑戦者としてぶつかっていきたい」と意気込みを述べていたが、見事に神宮に集まった高校野球ファンを驚かせる野球を見せた。

 夏へ向けて進化が楽しみなチームとなったのは間違いない。

(文=河嶋宗一
(撮影=佐藤純一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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