試合レポート

大阪桐蔭vs履正社

2017.04.01

大阪桐蔭の「攻める」野球

大阪桐蔭vs履正社 | 高校野球ドットコム
5年ぶり2回目の選抜大会優勝を果たした大阪桐蔭ナイン

 大阪決戦は大阪桐蔭が6回まですべてソロホームランによる得点で3対0とリードする展開になった。履正社が6回までに放った安打は1本だけ。大阪桐蔭の先発、徳山壮磨(3年)のデキがよかったことは間違いない。140キロ台前半のストレートを内外角に投げ分け、スタメンに6人並ぶ右打者の内角を鋭く突いたあと外角に逃がすスライダーが効果的で、履正社打線は凡打、三振の山を築いた。

 徳山の投球で最も象徴的だったのは1回裏。1番石田龍史(3年・右翼手)、2番溝邉冬輝(3年・二塁手)、3番安田尚憲(3年・三塁手)を連続三振に仕留めるのだ。石田はスライダーを空振り、溝邉はスライダーを見逃し、安田はストレートを見逃しという内容。狙い球がことごとく外れている様子が伺われる。

 履正社ベンチは今大会屈指の本格派に対して、普通の攻め方をしても打ち込めないと思ったのだろう。しかし、狙い球を絞ることによって各打者はバットが振れない精神状態に追い込まれてしまった。5回が終わった時点での見逃し率(全投球に占めるストライクの見逃しの割合。数値が低いほうが好球必打)は29%で、大阪桐蔭は15%。単純に見逃しの数を比較すると履正社の21に対して大阪桐蔭は10だった。

 大阪桐蔭の打のヒーローは1回と6回にソロホームランを放った藤原恭大だ。根尾昂(2年)と並ぶ期待の2年生だが、この選抜大会は肩の故障もあり、準決勝までの成績は打率.105(安打2)と低調だった。それでもスタメンから外さないのは、走攻守のレベルが高いから。準決勝までの打者走者の各塁到達タイムを紹介しよう。

 2回戦の宇部鴻城戦(試合記事)、第1打席で二塁打を放ったときの二塁到達は7.72秒(私の計測では今大会2位)、準決勝の秀岳館戦(試合記事)の2打席で二塁ゴロを放ったときの一塁到達タイムは4秒を切る3.99秒だった。バッティングは不調でもこの脚力と俊足を生かした中堅手としての守備が天下一品で、スタメンを外す勇気は大阪桐蔭ベンチになかっただろう。その辛抱が決勝で生きた。

 7回までわずか2安打に封じ込められた履正社が反撃に転じるのは8回だ。2死一塁から打順がクリーンアップに回ると、安田がフルカウントから外角のストレートをレフト前に運び、4番若林将平(3年・左翼手)がレフト前、5番濱内太陽(2年・一塁手)が左中間を破る二塁打を放ち同点に追いつく。

 しかし9回表、大阪桐蔭は西島一波(3年)の代打ホームランを含む6本の長短打をつらねて大量5点を入れ、勝負を決した。大阪桐蔭は好球必打の打線、内角を鋭く突く先発・徳山のピッチングなど、「攻める」という部分で履正社を上回っていた。

 ちなみに、夏の大阪大会はシード制を採用していないので、この両校が初戦で対戦する可能性がある。実際に2015年には2回戦(両校の初戦)で激突し、[stadium]舞洲ベースボールスタジアム[/stadium]に収容人数を遥かに上回る観客を集め、5対1で大阪桐蔭が勝っている。もしこの顔合わせが今年実現したら、全国の2強のうちの1校が初戦で姿を消すということである。こんな理不尽なことはない。大阪大会のシード権の採用を強くお願いしたい。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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