盛岡大附vs智辯学園
優勝候補に名乗りを挙げた盛岡大附
盛岡大附vs智辯学園
下馬評は連覇を狙う智辯学園のほうが高かったが、盛岡大附の先発・三浦瑞樹(3年)が左腕から投じる力強いストレートと、角度十分のチェンジアップ、スライダー、カーブの前に智辯学園各打者は凡打を繰り返した。
智辯学園と言えば、1番福元悠真(3年・右翼手)、4番太田英毅(3年・遊撃手)を中心とする強力打線が看板だが、2人が打ったヒットはわずか1本だけ。というより、智辯学園打線が4安打に封じ込まれているのだ。
盛岡大附は1回戦で高岡商と対戦し10対9という乱打戦を勝ち抜いている(試合記事)。この試合の三浦は先発して3回3分の1を投げ、被安打6、与四球2、与死球3、自責点6という投球内容だった。ストレートの最速は139キロで、私は観戦ノートに「グラブ持つ右腕の使い方がヘタ」「右側面で押していく感覚がほしい」「コントロール不安定、左打者の内角高め方向に抜ける」と書いている。それが5日後に前年の優勝校を4安打、1失点に抑えて完投しているのである。
智辯学園各打者は最初、予想外にストレートが多いと思ったのではないか。1回は4人に投じた17球中ストレートが12球。2回は3人に投じた7球すべてがストレートだった。それがひと回りするとチェンジアップ、スライダー、カーブを織り交ぜたピッチングに様変わりする。智辯学園を象徴する福元、太田がどのように仕留められたか、1打席ごとに見て行こう。
【福元】
第1打席:ストレートで三塁ファールフライ
第2打席:チェンジアップで空振りの三振
第3打席:四球
第4打席:3ボールからストライクを取りに来た132キロのストレートをセンター前ヒット
【太田】
第1打席:スライダーを空振りの三振
第2打席:チェンジアップを遊撃ゴロ
第3打席:スライダーを見逃しの三振
第4打席:スライダーを空振りの三振
縦の角度のある変化球を投げていればまず打たれないという投球を見て、智辯学園ナインはどう思っただろうか。あの2人が打てないなら抑えられても仕方ない、と思わなかっただろうか。前年の優勝校を絶望させるようなキレのある変化球があるとは、1回戦の高岡商戦を見ていれば誰も思わなかっただろう。私も思わなかった。
盛岡大附打線に目を移せば、11716(3年)のキレのある緩急に翻弄され。5回まで無失点に抑えられている。そんな中で〝チームの顔″ともいえる1番植田拓(3年・中堅手)が全打席フルスイングを実践しているのが目を引いた。私個人は、空振りしたとき体勢が崩れるほどのフルスイングは必要ないと思うが、「小さく構えるな」というチームの方針がある以上、これは意味のあるプレーだった。6回に2本の長打をつらねて先制し、7回には打者8人を送る猛攻で3点を奪い、勝負を決した。
高岡商戦でストレートが最速145キロを計測した平松竜也(3年)を温存しての準々決勝進出である。優勝候補、履正社相手にどんな投手起用が行われるのか、強力な2枚看板を擁した盛岡大附は一躍目の離せない存在になった。
オススメ!
第89回選抜高等学校野球大会特設サイト