試合レポート

履正社vs日大三

2017.03.20

投打の”超高校級”が激突。直接対決を制したのは―

履正社vs日大三 | 高校野球ドットコム
石田龍史(履正社)

 日大三の先発、左腕の桜井周斗(3年)が抜群の立ち上がりを見せた。縦に割れる127、8キロのスライダーのキレが素晴らしく、1~3回まで毎回三振を2つずつ奪い、6回が終わった時点で被安打4、奪三振10、失点2という内容。ストレートは最速142キロを計測し、「超高校級」というにはあと3、4キロほしいが、〝名人″と形容したくなるスライダーのキレを備えているので、私は違和感なくその称号が受け入れられる。

 とくに見応えがあったのが打の超高校級、履正社の3、4番、安田尚憲(3年・三塁手)、若林将平(3年・外野手)を迎えたときのピッチングだ。ストレートを1、2球見せ球にした徹底的なスライダー攻めを敢行したのだ。安田は1~3打席すべてスライダーを空振りして三振、若林は第1打席がスライダー、第2打席がチェンジアップ、第3打席がストレートを空振りして三振。実に10奪三振のうち6個をこの2人から奪っている。しかし、6回を投げ終わった時点で桜井の球数は90球に達し、ここを境にしてピッチングが激変する。

 櫻井の投球フォームは右肩上りに特徴がある。プロ野球選手でいえば、元広島のエース・川口和久が近い。前肩が上り、一本背負いのような形でボールを押さえ込みにいく。これが6回までのピッチング。7回以降は前肩が上ったままボールを押さえ込めず、高めに抜ける球が非常に目立った。7回表は2つの四球、1つの四球と左前タイムリーで1点を失うが、よくこれくらいで済んだと思う。

 9回に先頭打者に四球を与えたところでマウンドを2番手の岡部仁(3年)に譲り、岡部が2番溝邉冬輝(3年)にタイムリーを打たれ、打席にそれまで3三振の安田を迎えると、櫻井が再びマウンドに向かった。


 安田の立場で考えると、これほどなめられた場面はない。すでにスタミナが切れた櫻井だが、安田と若林が相手ならスライダーを投げておけば打てないだろう、そんな日大三ベンチの思惑が見て取れる。それでも打てなければ安田は「超高校級」の称号を返上しなければならない。

 岡部のスライダーに対して大きいスイングで引っ張りにかかっていたのが、この9回の打席は逆方向に狙いを定めていた。櫻井の初球はスライダー勝負の伏線にするためのストレート。見せ球だからもちろん甘いコースには投げない。外角低めのヒットにするには難しい球だが、それまでの大振りから一変した振幅の小さいコンパクトなスイングで捉えた打球は鋭いライナーとなってレフトフェンスを直撃する二塁打となって二塁走者を迎え入れた。

 日大三履正社を上回る13安打を放ったが2~6回、調子の出ない竹田祐(3年)を攻め切れず加点できなかったことが敗因と言っていい。竹田の出来はよくなかった。昨年秋の明治神宮大会と比較すると下半身がまったく使えず、手先のピッチングに終始した。その竹田に対して2回裏が一、三塁、3回が二塁、4回が一、二塁のチャンスを作りながら、あと1本が出なかった。櫻井の継投の時期とともに、日大三には悔いの残る試合となった。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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