Interview

ロサンゼルス・ドジャース 前田 健太投手(PL学園出身)「投球も守備も上達する野球の向き合い方」

2016.12.26

「メジャーはすべてにおいて日本よりもレベルが高い世界でした。その中で先発ローテーションを1年間守ることができましたし、優勝も経験することができた。ものすごくいい1年でした」

 充実感に溢れた笑顔で2016年シーズンを振り返ったドジャース・前田 健太投手。メジャー1年目の今季は32試合に登板し、リーグ5位タイとなる16勝をマーク。日本人投手としては7人目となるメジャー1年目での2桁勝利を達成し、チームのリーグチャンピオンシップシリーズ進出にも貢献した。NPB時代は通算5度のゴールデングラブ賞を獲得。投手としてのフィールディング力にも長けた28歳右腕に自身のグラブに対するこだわり、守備上達のコツを聞いた。

グラブのポケットを大きくしている理由

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前田 健太投手

――高校時代から一貫してミズノのグラブを愛用されていますね。

前田:中学時代から僕はずっとミズノです。革の質が一番いいと感じられるのが最大の理由ですね。

――メジャー移籍後も日本で使っていたのと同じ型のグラブを使用されていたのですか?

前田:形や機能面などは一緒ですね。変えたのは色だけ。ユニフォームとの相性を考慮して、オレンジから黒に変更しました。

――前田投手のグラブに対するこだわりをお聞かせください。

前田:僕は形のくずれたグラブが嫌いなんです。ピッチャーって投げる時にグラブをぐっとつぶすように握るので、けっこうグラブのポケットが崩れてしまっている選手が多いんですよ。でも僕はポケットの形をきれいなままずっとキープしたくて。

――きれいな形を常に確保するため、どのような工夫がグラブに施されているのですか? 

前田:グラブのサイズ自体は大きすぎず、小さすぎずなのですが、ポケットを大きめに作ってもらってます。ポケットが小さいとつぶれたままになりやすいのですが、ポケットが大きいと、握った瞬間にいったんつぶれても、元の形に戻りやすいんです。それにポケットが大きいとグラブの中でボールの握りも変えやすく、クセも出にくいというメリットもあります。昔は小さめのグラブが好きだったんですけど、1軍で投げ始めるようになってからはクセが出ないようにという意識が高まり、現在のサイズに変更しました。

守備よりも投球を優先したグラブを

――グラブの重量にこだわりはありますか?

前田:僕は少し重めがいいですね。捕球することだけを考えた場合、軽いグラブの方がいいのですが、投げることを考えた場合、グラブに重さがしっかりあった方がやはり投球も安定するので。投げることをあくまでも優先した結果、標準よりも少し重たいグラブを使用しています。

[page_break:守備よりも投球を優先したグラブを / 積極的にノックを受ける理由]
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前田 健太投手

――前田投手のグラブはヨコトジなんですね。ピッチャーの中にはタテトジのグラブにこだわる方も少なくありませんが、以前からずっとヨコトジ派ですか?

前田:僕は昔からヨコトジ派です。ヨコトジの方が投げる際にグラブをつぶしやすい感覚があるんですよ。自分の手の閉じ方、使い方がヨコトジと相性がいいんでしょうね。

――ウェブは毎年のように変えるタイプですか?

前田:ウェブはグラブの中で遊べる部分なので、毎年のように変えてます。同じタイプを使うのは長くても2年ですね。

――投手用のグラブにはいつしか人差し指を入れる指カバーがついていることが当たり前になった感がありますが、前田投手は指カバーの効果をどういった場面で感じますか?

前田:ホームでのタッチプレーの時などに走者のスパイクから指を守る意味合いもありますし、打球から指を少しでも守るという意味においても指カバーがあったほうがいいとは思います。でも1番効果を感じるのはバントのような弱いゴロを捕球するときですね。指カバーがないと、グラブから出した人差し指がゴロを捕球する際に土や芝生に引っかかってしまうことがあるんです。グラブトスをする際も指カバーがあった方が人差し指が地面に引っかかることを防げるので、僕は指カバーは絶対につけていますし、指もきちんと中に入れています。

――グラブの手入れはどのくらいの頻度で行うのですか?

前田:ゲーム用のグラブに関しては、シーズン中は登板日の前日にオイルの類を使って手入れをするのがルーティンなので、だいたい週に1回程度。ピッチャーですが、捕球面にもしっかりとオイルを塗るタイプです。

積極的にノックを受ける理由

――投手守備にも定評がある前田投手。練習中もノックを受けているシーンをよく目にしますし、守備に対する意識の高さを感じます。

前田:「自分は野手なんだ」と思いながら、普段から守備練習をしていますね。ピッチャーは守りが苦手でも許されるところがありますが、自分はやはり少しでもうまくなりたい。本職のショート、セカンドになったつもりで「上手な内野手になるぞ!」と思いながらノックを受けています。内野手は捕って、小さく素早いステップで送球することが求められますが、これは投手守備にも絶対に生きてくる要素なので。

――内野手のようなショートスローを苦手にしている投手は案外多いですものね。

前田:短い距離を正確に素早く投げることが苦手な投手はプロでも多いですよ。そういう投手はやはり守備からスキを突かれてピンチを招いてしまう機会が多くなってしまう。投手だって内野手のような送球力を身につけておいて絶対に損はないと思いますね。

[page_break:投手守備向上の鍵は日々のキャッチボール]

――ノックを受ける時は練習用のグラブを使用するのですか?

前田:試合用のグラブでノックを受けすぎると柔らかくなりすぎてしまい、形も崩れやすくなるので、ミズノさんに練習用として作っていただいた内野手向けの小さめのグラブでノックを受けることが多いです。やはりグラブは小さい方がゴロは捕球しやすいですし、内野手気分にも浸りやすいです。

――以前、投手部門で通算8度のゴールデングラブ賞獲得経験のある西本 聖さん(元巨人、中日ほか)に守備の話をおうかがいした際に「自分は毎球投げるごとに、打球が自分の所に飛んでくるものだと思いながら投げていた」と語っていたのですが、前田投手にもそういった意識はあるのでしょうか。

前田:僕はそこまでの意識はないですねぇ…。飛んでくるものと思いながら1球1球投げていると、僕は投げる方がおかしくなってしまうんです。あくまでも「打球が飛んで来たら、素早く反応する」という意識で投げています。

投手守備向上の鍵は日々のキャッチボール

ロサンゼルス・ドジャース 前田 健太投手(PL学園出身)「投球も守備も上達する野球の向き合い方」 | 高校野球ドットコム

前田 健太投手

――前田投手は相手が仕掛けてきた送りバントを処理し、素早いターンで二塁や三塁で封殺してしまうシーンも多いですが、バント処理が上手になるコツはありますか。

前田:キャッチボールの時に捕球したらすぐに利き手に持ちかえるクセをつけておくといいと思います。すぐに投げなくてもいいので、素早く持ちかえる技術を日々のキャッチボールの中で磨いておく。結局、バントの処理の際にいくらターンが速くても、正確に速くボールをもちかえることができなければ、正確でクイックな送球につながらないんですよ。

――なるほど…。納得です。

前田:キャッチボールの時にピッチャーはブルペンや試合で投げる時のようにゆったりと足を上げて投げたり、2,3歩助走をつけて全力で遠投をしたり、というパターンが大半ですが、ここに内野手のイメージを持ち込んで、ワンステップやノーステップで投げる要素も入れていく。時には横や下からも投げたりするのもいい。キャッチボールに取り組む意識を変えるだけで、バント守備を含む、投手としての守備力は格段にアップすると思いますよ。

――最後に球児へのメッセージをお願いいたします。

前田:「おれはピッチャーだから…」という気持ちがあると野球選手としての成長の邪魔になりがちです。投手であろうと、打撃も守備も走塁もすべてにおいて貪欲に取り組むこと。その結果、野球選手としてのレベルを上げることができれば、投手として成長を遂げている自分にも出会えるはずです。高校球児のみなさん、頑張ってください!

(インタビュー・文/服部 健太郎

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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