試合レポート

川之江vs明徳義塾

2016.05.05

川之江、「確かな挑戦」と「自主性」で明徳義塾に完勝!

川之江vs明徳義塾 | 高校野球ドットコム

川之江1番・江口 敏生(3年・左翼手)

 川之江の完勝であった。3回表には2失策に5番・曽我 大夢(3年・左翼手・175センチ70キロ・右投右打・東加古川レッドアローズ<ヤングリーグ・兵庫>出身)の左前テキサス安打で3点を先制。3対1で迎えた7回には二死満塁から4番・日野 智也(3年主将・右翼手・右投左打・172センチ70キロ・新居浜ボーイズ出身)が右翼手の上を越える3点三塁打と曽我の適時打で4得点。

 さらに9回にもこの日3安打目となる1番・江口 敏生(3年・三塁手&左翼手・右投右打・168センチ62キロ・伊予三島リトルシニア出身)の中前打を犠打で進め、3番・髙下 雄希(3年・遊撃手・右投左打・167センチ・松山ボーイズ出身)の中前適時打で試合を決めた。

「個々のスイングはメンタル的なところも見ながらコーチを交えて矯正しています」。友近 拓也監督の話す通り、第1試合中もギリギリまでスイングチェックに勤しんでいた選手たち。その成果は短く、鋭く、かつ個々の特徴がよく出ているスイングと13安打によって表れた。ちなみに7回・日野の満塁一掃打も2ボールから「まっすぐ一本で打て」の指示に応えたもの。ベンチと選手の一体感は抜群だった。

 さらに言えば、これらの伏線は初回の攻撃にある。二死後、右前安打で出塁した髙下は、続く日野の2球目に二塁送球1.8秒台の強肩を持つ明徳義塾古賀 優大(3年・捕手・右投右打・178センチ75キロ・友愛クラブ<フレッシュリーグ・福岡>出身)の包囲網をもろともせず二盗を成功。その理由はこうだ。

「4番には変化球で来ると思ったし、走るプレッシャーを与えたかった。いい捕手だからこそ引きたくなかったんです」

 司令塔に対するチャレンジ。その効果は絶大だった。この回こそ無失点に抑えた明徳義塾だが、試合を追うにつれて古賀のリードは大きく乱れ8失点。3番としても5打数無安打。最終回は連投となった川之江の2年生左腕・橋本 光太(左投左打・172センチ61キロ・川之江ボーイズ出身)の計135球目を仕留められず併殺で最後のバッターとなっている。


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明徳義塾・濱田 優(3年)

 では、なぜ川之江の選手たちにそんな発想が浮かぶようになったのか?実は川之江は昨年11月より「練習試合期間を終えた後、自分たち選手だけでミーティングをして」(髙下)4部門において以下のメンバーでリーダー性を導入。ここに主将の日野が加わって、より責任を共有した練習に取り組んできた。

バッティング部門:土肥 大星(3年・一塁手・右投右打・165センチ58キロ・川之江ボーイズ出身)
守備部門:太田 義浩(3年・二塁手・右投左打・162センチ54キロ・倉吉ボーイズ<鳥取>出身)
     石川 竜乃介(3年・二塁手・右投右打・164センチ56キロ・川之江ボーイズ出身)
走塁部門:髙下 雄希(3年・遊撃手・右投左打・167センチ・松山ボーイズ出身)
投手部門:糸川 亮太(3年・投手・右投右打・169センチ63キロ・川之江ボーイズ出身)

 今大会は右ひじ違和感のため登板を回避した糸川がピンチでは伝令役となり、「風が強い中でも対応できた」。指揮官が褒めた対応力もこのような冬からの取り組みなくしてはありえなかった。

 その一方、練習最後にはホームベース付近に正座(けが人は直立不動)して黙想し、立ち上がって挨拶練習に校歌。さらにセンター後方から数人がホームに向かって大声でスピーチと、古き良き一体感ある「愛媛野球」も継続している川之江。伝統と挑戦の融合はシード獲得が決定した夏の愛媛大会でも大きな武器になりそうだ。

 最後に敗れた明徳義塾について。守備からリズムを崩され、打撃も振るわず。「センター方向に打っていたのは(6番で4打数2安打2打点の)谷合 悠斗(1年・中堅手・右投右打・179センチ85キロ・岡山メッツ<ヤングリーグ・岡山>出身)だけ」。9安打中5番までの安打がわずか3本とあっては馬淵 史郎監督の口も重い。

 今大会、鳴門戦では確かに安定した精神状態の中で「明徳義塾らしさ」が出ていた。が、夏はその精神状態を4回続けなくては甲子園に到達できない。さらに言えば甲子園では鳴門戦の精神状態を保ちつつ、技術的精度をさらに上げたものを出さなくては勝利など極めて困難である。

 「明徳のユニフォームを着る」とはどのようなことなのか。俗世間から隔離された中で目指すべきものは何か。またメンバーが一新されるであろう5月21日(土)~23日(月)の高知県高等学校体育大会を前に、彼らには今一度、そんな基本的部分を見返してほしい。

 

(文=寺下 友徳

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・2016年春大会特設ページ

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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