Column

県立徳島商業高等学校(徳島)

2016.02.23

「インサイド・アウト」実現へのティー打撃

 さる1月29日、強打を武器に昨秋明治神宮大会を制した高松商の20年ぶり26回目センバツ出場が決定し「四国4商復活」に沸く四国の高校野球。ただ、実は四国4商復活の先陣を切ったのは徳島商である。

 5年前の2011年夏、4年ぶり23度目の甲子園出場を決めると藤代(茨城)から11年ぶりに夏1勝3回戦では光星学院(現:八戸学院光星)に惜敗したが、秋の山口国体では1回戦東洋大姫路(兵庫)、2回戦作新学院(栃木)を破り、準決勝では髙山 俊明治大~阪神タイガーズドラフト1位2015年インタビュー)ら黄金世代が躍動し夏の頂点に立った日大三(東京)相手にも2対3の好勝負を展開。その原動力となったのは各打者による鋭い「インサイド・アウトスイング」だった。

 では、彼らはどのようにして「インサイド・アウト」を具現化するのであろうか?今回はスイング伝道者である森影 浩章監督指導の下、実際のティー打撃練習を題材に徳島商の打撃向上策を紹介していきたい。

「インサイド・アウト」のステップとして「気持ちよくティーを打たない」

「気持ちよく打つ」メニューは存在しない(県立徳島商業高等学校)

「ティーは『気持ちよく打たない』が大原則です」
「ティーは気持ちよく」の予測を裏切り、のっけから目からウロコのティー話を始めたのは、2010年の春季県大会優勝で12年間の最後を締めた小松島では1回戦ボーイから春3回(200120062008年)・夏1回(2003年)の甲子園出場を積み重ね、母校・徳島商でも2011年夏の甲子園出場を果たしている森影 浩章監督である。

 そんな森影監督の打撃理論の中枢にあるのは「インサイド・アウト」。内側からバットを出し、インパクト後に大きく運ぶ。徳島商ではティーを三段跳びでいうところの「ステップ」・2番目においている。まずは素振りでフォームを100点に近づけ「ホップ」、ティーでコースの対応力を学び「ステップ」、タイミングは実際のバッティングでつかんで「ジャンプ」という手順だ。

 となれば対応力を学ぶ以上、ティーは冒頭の通り気持ちよく打つ必要はない。むしろ「打ってはいけない」。よってティーの種類も多岐に渡る。「バットが立っている感覚で打つティー。股関節を柔らかく、膝を意識するティー。逆方向を意識するティー。へその前で打つティー」。森影監督はすぐに数種類のティーを紹介する。もちろん使うバットも時期や状態によって重さや長さを変えながら、身体に「インサイド・アウト」を染み込ませていく。

「だから大会前には特に『単純なティーはやめろ。ならば前から手投げのボールを打て』と言いますね。よほど気を付けないとドアスイングになりますから」。最終目標は試合につなげるため。それが徳島商における「ティー打撃」である。

 では徳島商のティーは、どんな意識を持って行っているのだろうか?今回は主将の中野 飛騎(捕手・右投右打・176センチ70キロ・那賀町立鷲敷中出身)、指揮官いわく「僕が教えていた小松島高時代から器用さを持っていた」昨年、巨人育成ドラフト1位を受けた増田 大輝徳島インディゴソックス)の実弟、最速138キロ右腕・増田 将馬(投手・177センチ68キロ・徳島市立南部中出身)に、二塁手の須藤 優(181センチ76キロ・阿南市立加茂谷中出身)、中堅手の橋川 佳季(174センチ72キロ・徳島市八万中出身)の右打者4名。

 さらに三塁手の齋藤 広夢(178センチ78キロ・徳島湘南<ヤングリーグ>出身)、三塁手・右翼手をこなす市原 弘仁(173センチ72キロ・徳島東リトルシニア出身)の左打者2名も含め、計2年生6選手に「インサイド・アウト」へのティーを実演して頂くことにした。

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[page_break:「試合へ進む」ための様々なティー]

「試合へ進む」ための様々なティー

股関節を意識させる開脚ティー(県立徳島商業高等学校)

 グラウンドでは「へその前で打ち、手首を柔らかく使い、左右対称に振る意識を付ける」(中野)8の字スイングやフォロースルーをより意識するための竹竿素振りをする横で、3組ペアになってのティーが始まった。

最初のメニューは100本連続ティー。ではなく、振るのは100回でも、素振りとティーを交互に50セット行うティーである。「このメニューは竹田コーチが考案したんです」と森影監督。

 では、小松島では2年春に遊撃手として2008年センバツ出場。3年時には徳島商杉本 裕太郎青山学院大JR西日本~昨年、オリックス・バファローズドラフト10位)と共に徳島県選抜チームに選ばれ、ハワイ選抜とも対戦。その後、日体大を経て徳島商コーチ2年目を迎える竹田 幸成コーチに解説してもらおう。

「これは自分が日体大でやっていたもの。単純な連続ティーだと流されてしまうので」。確かに「ホップ」の素振りを入れることで力がうまく抜け、よりへそを使ったティーができている。連続ティーの裏側にある「機械的に振っているだけで、実はしっかり振れていない」弊害もこれなら解消されそうだ。

 2番目は股関節の柔軟性をうながし、綺麗な軸回転を作るティー。思いっきり股を開いての開脚30本ティーだ。前の低いところに投げたものを打つ。しかもスイング後の返しも逆スイングで打つ意識を忘れない。「実際に後ろにティーネットを置いて打たせるパターンもあります」(森影監督)。音の高低でヘッドスピードや個々の柔軟性の有無が否応なくあぶりだされる。「(太腿)四頭筋が痛くなりますね」橋川が苦笑いした。

 3番目は高め・真ん中・低めの順で打ち込む30球連続ティー。確かに実際の試合となれば、同じコースに何十球も投げ続けられる投手は稀。正に「対応力」を鍛えるメニューである。「兄から森影先生の打撃理論は聞いていたんですが、コースを変えるティーは最初軌道が残ってしまうので合わないんです。今は少しずつ馴れてきましたが」と増田。

 それでも「ポイントでしっかり捉えている選手は音が違います」。森影監督や竹田コーチが指摘するとおり、木製バットから放たれる音が高いと鋭い打球が飛んでいる。「インサイド・アウトは懐に右ひじを入れてヘッドを立てて打つので最初は違和感しかなかったですが、手元まで呼び込むと最短でボールを捉えられるので打球が伸びていきます」。橋川はその効果を語る。

 指揮官からも中軸への期待が高い齋藤も話す。「ティーでは逆方向を意識してスイングするんですが、カウントが追い込まれた時も最後までボールが見えるんです」。確かに二次的効果も期待できる。

2011年夏の1番打者だった増富 太鳳(日体大4年)は不器用で当てに行ってしまうタイプだったので、振ってファウルを打たせる練習もさせました。そこからよくなりましたね」と森影監督はそこに関する逸話も披露してくれた。

 さらにヘッドが下がり気味になった時の修正バットのヘッドを立てたまま打つティーや、高めを数球、真ん中を数球の順でランダムにスイングするティーなど。「試合をイメージして色々なコースをこう打つイメージで振っています」主将の中野がティー時の共通ポイントを説明してくれた。

 最後は入学時にインサイド・アウトの形を覚えるために使うバスターティー。最初はグリップ間を空けたままヘッドを立ててティーを打ち、今度はバスターで同じ形を作って打つ。「最初はむちゃくちゃ違和感がありましたけど、ヘッドを立てることで以前よりボールを見ることができるようになりました」とここは須藤が1年10ヶ月前を振り返ってくれた。

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[page_break:センバツ王者相手に過程を確認し、夏は聖地へ]

センバツ王者相手に過程を確認し、夏は聖地へ

素振りと交互に50セット行うティーのひとこま(県立徳島商業高等学校)

 ただ、ここ近年の徳島商は「打てていない」事実が存在する。昨秋県大会も2勝はしたものの、内容は10安打・3点と8安打・2点。準々決勝では優勝した鳴門に2対10・7回コールド負け。左腕・河野 竜生に4安打に封じられた。
「私が徳島商に異動した時、2011年夏に出場した3年生たちは私が小松島で打撃のチームを作っているのを1年間見ていたからか、みんな打撃に飢えていましたね」と振り返る指揮官も「教えすぎてがんじがらめになっている部分があるかもしれない」と分析する。

 ただ、最後の冬を迎えた2年生たちに関してはその心配は無用のようだ。「連続ティーの時にはインパクトと目線より高い弾道が出るように意識している」増田や「ティーは木製バットで振るので芯に当てることを意識している」橋川をはじめ、しっかりと個々の課題を分析し、前に進もうとしている。
「自分たちで考えて野球をして、楽しまないと。自分たちの知識が入っていないと思い切ったプレーもできないので、まずは積極的にやって失敗して知識にしていきたい」生徒会長も務める須藤の言う通りである。

 そんな徳島商に、昨年に続いて格好の舞台が用意された。3月12日(土)練習試合の初戦は[stadium]JAアグリあなんスタジアム[/stadium]でセンバツ前合宿中の敦賀気比(福井)と対戦。昨年は平沼 翔太(昨年、北海道日本ハムドラフト4位2015年インタビュー)から6回3得点に終わって3対8で破れ、センバツ制覇への好発進を飾られている。

「セカンドの頭を越えた打球があっという間に右中間を破ったり、林中 勇輝(2年)はインコースをレフトに本塁打したり・・・・・・打撃の差を感じました」と1年前・二塁手を務めていた中野。ただ、今回は「敦賀気比は試合前の素振りもゆったりとしてインパクトのところだけ力強く振っていた。だから、ティーの技術を身に付けてなおかつスイングのスピードを付けていく」(須藤)方法論は見えている。彼はその過程を確認する舞台として、センバツ王者との再戦を活用していく。

 そして夏までには「先輩方の築いてきた徳商を引き継ぎ、冬やってきた打撃で相手に上回れるようなチームにしたい」(主将・中野)。そして全員が「打倒・鳴門」に深くうなずいた4連覇中の王者を倒した先には、5年ぶり24回目の甲子園と「打撃の徳商」復活が待っている。

最後に、徳島商の選手たちが実際にティーバッティングを実施している動画をお届けします!

(取材・写真:寺下 友徳


注目記事
【2月特集】実践につながる ティーバッティング

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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