敦賀気比vs青森山田
敦賀気比・上中尾の走者一掃二塁打で逆転、決勝進出
漆館 伊皇選手(青森山田)
歴代、この神宮大会の準決勝は、控え投手が先発することが多い。その分、チームとしての総合力が問われる試合になる。
本日の試合の先発は、敦賀気比は背番号10、サイドスローの西本 汰生。青森山田は背番号11の漆館 伊皇であった。中でも漆館は、公式戦初先発。
青森山田の兜森 崇朗監督は、「普段の練習から好調でした。ストレートの球速はさほどでもありませんが、バッターを打ち取れるボールを投げることができます」と語る。
実際漆館は、ストレートで120キロの後半で、100キロ程度の変化球を多く投げる。その緩急と、ストレートの球速以上に伸びを感じるストレートで勝負する。
3回表敦賀気比は、この回先頭の7番・小島 誠人が漆館のインコースをうまく引っ張って、レフトポール近くのスタンドに入る本塁打を放ち、まず1点を先取した。
その裏青森山田が反撃に出る。
一死後、1番・内山 昂思が死球で出塁し、すかさず盗塁。2番・相坂 大真の右前安打で内山は三塁に進み、3番・村山 直也の左翼手への犠飛で内山が還り、まず同点。さらに一塁走者の相坂が飛び出しているとみて、左翼手から一塁に中継されたボールが暴投となり、相坂は二塁へ。4番・三森 大貴の左前安打で相坂が還り青森山田が逆転した。
試合が大きく動いたのは5回表敦賀気比の攻撃。この回先頭の7番・小島が四球、8番・本間 太一は三塁手強襲の内野安打。続く9番の西本が送って一死二、三塁。ここで青森山田は、漆館に代えて、前日先発した坪井 友哉をマウンドへ送る。降板した漆館は、「相手は甲子園の常連校だし、体も大きいので緊張しました」と語った。
代わった坪井は、1番の植村 元紀に四球で満塁。ここで打席には2番・上中尾 真季。上中尾はフルカウントからの6球目を叩くと、打球は右翼手の頭を越える二塁打に。3人の走者が一気に還り、敦賀気比が逆転した。
上中尾 真季選手(敦賀気比)
1年生の上中尾 真季はこの日中堅手で出場しているが、投手でU15の日本代表に選ばれた逸材。
「あそこはしっかり打てました」という上中尾は、「今は野手でやっていきたい」と語る。もちろんそれは、山﨑 颯一郎という先輩のエースの存在を意識しての発言のようだ。敦賀気比は6回表にも天野 涼太の二塁打などで2点を追加し、試合の主導権を握る。
一方敦賀気比の先発の西本 汰生は、3回に本塁打を打たれて以降は、落ち着いた投球をする。青森山田の先発メンバーは6人が左打者であり、アンダー、サイド系には不利であるが、西本が「低めに集めることを重視しました」と言うように、丁寧な投球が光る。
ただ8回裏、三森 大貴に四球の後、5番・齊藤 孔明がライトに本塁打を放ち、青森山田が2点差に迫ったところで、西本は降板。エースの山﨑がマウンドに上った。「カウントを取りにいたところを打たれました」と西本は少し残念そうに語った。
サイドスローの西本から身長188センチの山﨑に代わり、打者の目線は下から上に代わったが、それでも青森山田打線は食らいつき、9回裏には1点を返したが、敦賀気比も9回表に足を絡めて2点を取っており、結局8対5で敦賀気比が勝ち、決勝に進出した。
敗れた青森山田の兜森監督は、「サイドスローの投手にもう少し粘り強く行けたら」と言いつつも、「(エースの)堀岡に頼り過ぎることなくやれました」とこの大会の収穫を語った。それほど飛び抜けた選手がいるわけではないが、守りがしっかりしている。青森の厳しい冬を経て、チームがどう成長するか、楽しみである。
勝った東 哲平監督は、「ちょっとミスが多いけど、打って勝てました」と語り、チームの状況には満足していない。それでも今年の高校野球は敦賀気比のセンバツ優勝から始まった。そして今年最後の公式戦である決勝戦にも残っている。来年のセンバツに向け、1年を締めくくる好ゲームを期待したい。
(文=大島 裕史)
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