試合レポート

東海大高輪台vs佼成学園

2015.10.24

青木決勝三塁打、東海大高輪台打撃戦を制す

ソロ本塁打を放った速水 誠生(佼成学園)

 春までは投手を中心とした守りのチームであったが、この秋は大西 星夜青木 海斗といった1年生を中心に打撃のチームに変貌した東海大高輪台と、この大会3試合を全て逆転で勝ち上がってきた佼成学園の対決。スタンドは東海大高輪台の大応援団をはじめとして、大勢の観客で埋まった。

 佼成学園の先発はエースの梅田 大樹。この大会好投してきた梅田であるが、初回いきなり、東海大高輪台の強力打線につかまる。

 1回裏、東海大高輪台の1番で主将の嶋崎 草太郎が4球目を逆方向に叩いたボールは、ライトフェンスを越える本塁打になった。嶋崎は本来クリーンアップを打つ打者。
「足は速くはありませんが、甘いところがあったら走ることもできます。今までになく、キャプテンらしいキャプテンです」と、東海大高輪台の宮蔦 孝一監督が語るリードオフマンの一発に続き、2番森田 直人もセンターややライト寄りを超える二塁打を放つ。森田は内野ゴロ2つで生還し、初回から2点を挙げる。

 2回表佼成学園は、5番山崎 佑介の左中間への二塁打と、7番平田 航輝の左中間を破る三塁打で1点を返すものの、その裏東海大高輪台は、2番森田の3ラン本塁打で突き放す。

 それでも、佼成学園は3回表に1番速水 誠生のソロ本塁打で追撃するが、その裏東海大高輪台は、5番青木、6番米倉 凌平の連続二塁打でまたもリードを広げる。ここで佼成学園は、先発のエース・梅田を諦め、1年生の溝口 真矢と交代する。

 エース・梅田の早々の降板は、佼成学園にとっては誤算であった。藤田 直毅監督は、「いい投球をしていたのですが。大観衆の影響なのでしょうか」と首をひねる。

 もっとも東海大高輪台にとっては、3試合連続で逆転勝ちを収めている佼成学園は、4点リードしたからといって安心できる相手ではない。宮蔦監督は言う。「佼成学園の粘りは、思った以上に強力でした。キャッチャー(嶋崎)は、打たれる可能性はあると感じていました」


逆転の三塁打を放った青木 海斗(東海大高輪台)

 佼成学園がその本領を発揮したのは、4回表だ。一死二、三塁の場面で、前の打席で三塁打の平田 航輝が、今度はレフト線よりの二塁打を放ち、2人を還す。さらに二番手投手の溝口 真矢に代える代打に吉川 晴貴が遊撃手の頭を越える、左中間への二塁打で平田を還す。

 東海大高輪台はここで、先発していた背番号10の右腕・日高 拓海に代えて、背番号1の左腕飯塚 啓貴を送る。飯塚は今大会初登板。「右でコントロールのいい日高がはまると思っていましたが、2人とも先発で行く力はある」と宮蔦監督は語る。

 しかし代わった飯塚は、9番田村 翔大にいきなり死球。さらに一塁に牽制するとこれが暴投になり、吉川が一気にホームインで同点。田村も三塁に進み、1番速水 誠生の遊ゴロで田村が生還し、佼成学園が逆転した。

 ここまでは、佼成学園のペースだが、エースが早々に降板した影響は、試合の後半に出てくる。
佼成学園は投手を小刻みに交代させたものの、6回裏東海大高輪台は、中前安打の飯塚と四球の森田 直人で一死一、二塁の場面で、3番若林 樹の左前安打でまず同点。さらに二死一、二塁となったところで、当たっている5番青木 海斗がセンターへの痛烈な打球。中堅手の関口 恵太が突っ込んだが捕球できず、三塁打となり2人が還り、東海大高輪台が一気に再逆転した。7回裏にも嶋崎 草太郎の左前安打で1点を追加し、東海大高輪台は、10対7の打撃戦に勝利した。

 それにしても、半年前までは得点が入らず苦しんでいた東海大高輪台は、短期間でチームカラーをがらりと変えた。「リスクを取りながらも、攻撃を重視しています」と、宮蔦監督は語る。
一定レベルにあれば、守備は多少目をつぶっても、攻撃的に行く姿勢である。その中心的存在が、この日は当たりが出なかったものの、4番を打つ大西 星夜、好調の5番青木、この日本塁打を放った森田ら1年生である。その1年生を経験豊富なリーダである嶋崎が締め、好循環を生み出している。その強力打線が、二松学舎大附大江 竜聖にどう対処するのかが、注目である。

 佼成学園は、敗れはしたものの粘り強い野球は、強い印象を残した。試合ごとにヒーローが変わり、「全員でという気持ちでやっています」と、藤田監督も手応えを感じている。ひと冬越して、どのようにレベルアップしてくるか。絶対的な柱であったエースで主将の小玉 和樹が抜け、懸念されていた佼成学園であるが、むしろ期待を抱かせる秋の戦いぶりであった。

(文=大島裕史&type=manage_writers">大島裕史


関連記事
・2015年秋季大会特設ページ
・あの学校の取り組みは?!東京都の野球部訪問を一挙紹介!

2015年秋季大会

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.28

春の福岡地区を制した沖学園(福岡)、勝利のカギは異例の「決勝直前沖縄合宿」だった

2024.05.28

【鹿児島NHK選抜大会】川内商工が2試合連続逆転サヨナラ勝ち!雨のため2試合が継続試合

2024.05.28

【北海道】北海が逆転勝利、27連勝で4季連続V達成<春季全道大会>

2024.05.28

【鹿児島NHK選抜大会】錦江湾が1点差勝利!出水工の追い上げ、あと1点及ばず

2024.05.28

【大分】佐伯鶴城は4戦3勝、杵築は4戦で1勝<強化試合>

2024.05.25

【関東】白鷗大足利が初、逆転サヨナラの常総学院は15年ぶり決勝<春季地区大会>

2024.05.25

【熊本】九州学院、熊本工が決勝へ<NHK旗>

2024.05.26

【春季関東大会】常総学院・中村虎汰郎が二刀流の活躍で決勝進出に貢献!9回にはサヨナラに繋がるヒット!投手としてはセンバツ後に再転向で連日の好リリーフ!

2024.05.25

首都2部優勝の武蔵大の新入生に浦和学院の大型左腕、左の強打者、昌平の主軸打者など埼玉の強豪校の逸材が入部!

2024.05.25

【岩手】盛岡大附がサヨナラ、花巻東がコールドで決勝進出、東北大会出場へ<春季大会>

2024.04.29

【福島】東日本国際大昌平、磐城、会津北嶺、会津学鳳が県大会切符<春季県大会支部予選>

2024.05.21

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.29

【岩手】盛岡中央、釜石、水沢が初戦を突破<春季地区予選>

2024.05.15

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.13

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在29地区が決定、愛媛の第1シードは松山商