試合レポート

小豆島vs高松南

2015.09.25

「enjoy baseball」小豆島が出した「気迫」

3回表小豆島二死一・二塁から右越同点二塁打を放った6番・石川 生強(2年・一塁手)

「なんのために、今までやってきたんだ!」

 3番・林 颯太(2年・二塁手・右投左打・160センチ57キロ・高松市立龍雲中出身)の2点適時打、6番・原 慎吾(2年・右翼手・左投左打・173センチ57キロ・高松市立国分寺中出身)の適時打に加え。失策後のカバーリングミス、送球ミスetcで高松南に主導権を握られた直後、一塁側ベンチからネット裏まで小豆島杉吉 勇輝監督の怒声が響く。その形相は「enjoy baseball」のトレードマークである笑顔とは真逆の「鬼」であった。その理由を指揮官は明かす。

「できないことはいっぱいあって、本番でもミスはしますけど、そこでできることができない。『できることをやろうぜ』と話をしたんです」

 一方の選手たちもその意図をすぐに悟った。実は小豆島の新チームテーマには1回戦から修正をかけた「肩甲骨でバットを振る」や、「チャレンジして実戦に臨む」の他に大きな目標がある。

 それは「気迫」。攻撃前にホワイトボードを持ち出し、そこに書かれた「気迫」を確認する選手たちの引き締まった顔、顔、顔。そこには全て気迫がみなぎっていた。

 指揮官の檄によって入ったスイッチは即座にグラウンドでの化学反応となる。直後の2回表に二死走者なしから安打、四球、9番・坂口 大和(1年・二塁手・右投左打・164センチ55キロ・小豆島町立小豆島中出身)の右前打で1点を返した小豆島は、3回表も二死走者なしから、安打、四球、6番・石川 生強(2年・一塁手・右投左打・172センチ72キロ・土庄町立土庄中出身)の右中間を真っ二つに破る2点二塁打、7番・宝来 彰太(1年・左翼手・右投右打・182センチ67キロ・小豆島町立小豆島中出身)の右前打で一気に逆転。


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2015年秋季大会

小豆島先発・長谷川 大矩(2年)

 さらに7回・9回の得点も二死から。彼らは粘りを加えて「気迫」を体現した。

 一方、旧チームからバッテリーを組む長谷川 大矩(2年・投手・左投左打・173センチ71キロ・小豆島町立内海中出身)、植松 裕貴(2年・4番捕手・右投左打・170センチ62キロ・小豆島町立内海中出身)の切り替えも見事だった。長谷川は森福 允彦(福岡ソフトバンクホークス)を想起させる左変則サイドから最速130キロのストレートとシンカーをインコース・アウトコース問わず綺麗に投げ分け、植松もテンポを重視したリードで長谷川の94球7安打無四球4奪三振完投につなげた。

「バッテリーはよく相手の分析ができていたし、守備のポジショニングもしっかりしていた。2年生が自ら動くようになった。そこは選手たちが自分で考えて動く流れを作り、最後まであきらめず戦った3年生に感謝です」

 試合後、片づけをしながら、なおも反省と次への課題をあぶりだす「ボトムアップ」な会話を交わす選手たち。杉吉監督はこの風習を作ってくれた3年生たちに改めて感謝の言葉を発する。

 かくして小豆島は2011年以来となる秋県8強。その後、2012年春季香川県大会優勝など小規模校としては特筆すべき結果を出してきた彼らにとって、この逆転勝ちの意義は極めて大きい。

 そして・・・・・・。ひょっとしたら、この試合は後に振り返った時、「小規模校としては特筆すべき」を外し、2017年4月、土庄との統合高校が誕生する前に島へビックニュースを届ける大きなターニングポイントになるかもしれない。

(文=寺下 友徳


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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