試合レポート

都立墨田工vs錦城学園

2015.04.05

何試合分かの要素を含んだ試合は、タイブレークの末、墨田工が制す

都立墨田工・青木君

 昨秋は都大会ベスト16(試合レポート)に進出した都立墨田工。この実績は間違いなく選手たちの自信にはなっているはずだ。チームとしては初めてと言ってもいいシード校として迎えた今大会も、初戦で日体荏原を下した都立千歳丘を退けて(試合レポート)、自信の進出である。

 その中心となっているのが青木君だが、身体は大きくはないがいいフォームで投球のフォロースルーもきれいな形だ。その青木君が好投して、都立墨田工がいい形で得点を重ねていったのが前半。

 それが、一つの邪飛の落球から大きく流れが変わり、錦城学園が逆転。背番号15をつけた7番の高納君が5回は追撃のソロアーチ、そして8回には勝負を決めたかと思われた逆転の3ランを、いずれも左翼席に放り込んだ。
2ケタ番号の下位打者が1試合で2本の本塁打を放つというのは、ついこの間のセンバツ甲子園で見た光景だったが、その再現でもあるかのようだった。

 ところが、それでも錦城学園は波に乗り切れなかった。
3点リードしたその裏だったが、四球と送球ミスもあって、1点を返され二死三塁となる。9番永瀧君がファウルで粘って四球を選び一三塁となり、1番山瀬君が左前打して1点差。さらに、南木君の打球は当たり損ないの投前の打球だったが、雨で打球が転がらず内野安打となり同点。

 お互いが失策でリードを不意にする流れを作ってしまったという、野球の怖さを目の当たりにするような試合でもあった。そうして結局、前半の展開では想像できないような7対7のスコアで延長タイブレークに突入することになった。

 今大会では、無死一二塁という設定で行うタイブレーク。錦城学園は5番の目黒君から始めることとした。というのも、7番の高納君が3打数3安打の2本塁打と当りまくっているということもあったが、玉木信雄監督としては、その前を打つ松岡君がブロック予選では外れていたのだが、今回はメンバー入りしてその思いにもかけたいということもあったようだ。

 しかし、バントで送って一死二三塁として投ゴロ本塁アウトとなり、高納君を敬遠して、代打木村君が三振となり、錦城学園は0で終わってしまった。

 こうなると、1点を取りに行けばいいので後攻が俄然有利になるが、都立墨田工は2番南木君から始めて、まず送りバントをするのだがこれが安打となって無死満塁。そして、次の1球が暴投となって、あっけなく都立墨田工のサヨナラ勝ちとなった。

 都立墨田工は、前半いい形で試合を進めていた。青木君が好調な滑り出しで、3者凡退で終えると、その裏に2四球とバントなどで二死一三塁としたところで、5番姉崎君が右線へ二塁打して2者を迎え入れる。
2回に犠飛で1点を失うものの、ここでも飛び出した一塁走者を冷静な判断で刺すなど落ち着いたプレーが光っていた。

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錦城学園・根岸君

 そして、3回にも南木君と上島君の連打で好機を作ると、相手失策に乗じてさらに2点追加。5回に高納君にソロホーマーこそ打たれたものの、青木君としてはいいリズムで自分の投球を続けていた。

 ところが7回、打ち取ったはずの松岡君の邪飛が落球となり、その直後に死球。ここからリズムが崩れて、一死一二塁となって、錦城学園は代打佐藤豪君が起用に応えて左前へ2点タイムリー打。試合は振り出しに戻り、次の8回に高納君の3ランが飛び出す。

 しかし、その裏に今度は錦城学園に守りの乱れもあって、すぐに3点が入る。
こうして、勝利の女神はなかなか結論を出さないで、タイブレークにもつれ込ませたのだった。

 行ったり来たりの展開の末に、初体験のタイブレークを戦った錦城学園・玉木監督は、「タイブレークに関しても、3番から始めるということで練習してきたんですけれどもね。やっぱり、パターンを崩してはいけませんね」と、反省していた。そして、「難しいですねぇ」と、考え込んでいた。

 一度は逆転されて完全に流れを失ったかに思えた試合を制した都立墨田工の中島豊雄監督は、「何だか、2つも3つも試合をしたように気分ですね」と感想をもらした。そして、「青木は7回の頭で代えてもよかったのですけれども、ちょっと引っ張りすぎましたかね」と投手起用に関しては、永瀧君を送り出すタイミングを課題としていた。

 また、タイブレークについては、「表を守り切ることができれば、後攻めが圧倒的に有利になると思っていましたから、無死一二塁をしっかりと守るという練習もしてきました」と、守り重視のタイブレーク対策が功を奏したと分析していた。

 無死一二塁という設定でのタイブレークは、それぞれのチーム事情によって戦い方も異なってくるのは確かである。タイブレークという制度を導入する以上、チームとしてはタイブレークを前提とはしていないまでも、想定はしておく必要はあるということだろう。

(文=手束 仁

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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