明徳義塾vs敦賀気比
岸潤一郎、平沼翔太。2人の二刀流に迫る
【2試合連続本塁打を放った岸潤一郎(明徳義塾)】
期待すべき場面で必ず打つ。
スター性がある選手はこのことをいうのだろう
4回表、1点ビハインドの場面で回ってきた岸潤一郎(3年)。無死一塁フルカウントから振り抜いた打球は、レフトスタンドへ飛び込む豪快な本塁打となった。
岸はこの本塁打に、
「ちょうど高めだったので、バットが下から出ずに振り抜くことができました。とはいえ、出来過ぎです」と振り返る。
スカウトの間では野手として高く評価されているが、18Uと国体で打者・岸を見て、確かに野手として評価されるのも頷ける内容を見せている。
高校1年までは窮屈なスイング軌道だったが、ここにきてだいぶスイング軌道が改善され、水平な軌道でボールを強く押し込み打球を遠くへ飛ばすことが出来ている。打球の角度の高さ、打球の速さ、飛距離の長さ、どれをとっても素晴らしい。
18Uでは、木製バットの練習をしないまま、シングルヒットを何度も記録していたので、本格的に練習を取り組めば、今のような当たりが木製バットでも出来る期待はある。
また、投手としての完成度も高い。140キロ前後の速球、キレのあるカットボールを自在に投げ分ける投球は、高校生として優秀だ。ただドラフト候補に挙がる投手のボールと比べると角度があまりないのが懸念材料。大学ではよほど球速面と投球の幅を広げていかない限り、プロのスカウトが投手として評価することは厳しいだろう。
二刀流として期待されているが、打者として磨きをかけていった方が良いと考える。また岸は8回の第4打席でも、レフト線を破る二塁打を放ち、これで今大会は9打数6安打2本塁打6打点と大当たり。さらに準決勝、決勝戦でも当たりを見せることができるか。
【好投を見せる平沼翔太(敦賀気比)】
そして同じ二刀流という事では、敦賀気比の平沼 翔太も魅力だ。2年生ながら選手権4強に導いた好右腕。
本人曰く、
「調子が甲子園が10だとすると、今は5ぐらいですね」と振り返るようにまだベストの状態ではない。それでも常時135キロ~140キロを計測。同じ135キロ~140キロでも他の投手に比べて勢い、角度が違うのだ。
8回表に登板した平沼は1回三分の2を投げて無失点に抑える投球を見せた。そして9回表の打席でも岸から中前安打を放ち、投打で活躍を見せていた。
現在、状態を上げるために取り組んでいることは「キレを出すこと」だ。
平沼は甲子園後、激戦での疲れを取るためにケアの時間に充てて、しばらく本格的に追い込む練習はしなかった。だが甲子園の時と比べると身体のキレが落ちているので、再びキレを出すトレーニングをしている最中だという。
甲子園を経験したことで、「この世代のナンバーワンになりたい」と気持ちが少しずつ高まっている。投手としては最速150キロを目指し、さらに打たせない投手へ成長すること、そして打者としては、今は中距離打者だが、いずれはここぞという場面で、一発が打てる選手を目指している。
将来的な目標は、ヤングリーグ「オールスター福井」に在籍していたときに指導者だった小林繁氏(巨人、阪神で活躍し、通算139勝)のような投手になること。
この1年で、岸のように周囲の期待に応えられるようなスター性を持った選手へ成長していくか。注目をしていきたい。
(文=河嶋宗一)