二松学舎大附vs都立総合工科
1年生バッテリーがさらに進化した二松学舎に安定感
甲子園からさらに成長を見せる大江竜聖君(二松学舎大附)
大型の台風19号の接近が報じられているが、空はどんよりとしてはいたものの、雨もほとんど落ちてくることもなく、風の影響もほとんどない状態で、中断もなく試合は進んだ。試合時間も、1時間47分で、スピーディーな展開だったが、これは、両投手のテンポがよかったからでもある。
二松学舎大附のマウンドは、この夏1年生ながら甲子園のマウンドも経験して、それを自信としてさらに成長したところを見せている左腕大江 竜聖君だ。身体も一回り大きくなったが、球のキレもマウンドでの落ち着きも、ワンランクアップしている。また、それをリードする捕手の今村 大輝君とのコンビネーションも、さらによくなっているという、恐るべき1年生バッテリーである。
一昨日の1回戦(試合レポート)よりも、この日のほうがよりいい内容だったというところにも、試合をしながらの成長が窺えるといっていいだろう。
もっとも先制したのは都立総合工科で、2回に6番の水口南海君がやや出会い頭的に大江君のカーブをとらえて、これが左翼フェンスを越えてソロホーマーとなった。
大江君としては、この試合で唯一の失投だったかもしれないが、それをしっかりととらえた水口君のセンスは評価されていいだろう。
これで、試合展開としては面白くなるのかなと思った人も多かったかもしれないが、一発には一発でお返しとばかり、二松学舎大附は4回に、右中間で出た岡田 浩輝君を二塁に置いて、今村君が水口君とほぼ同じようなところに放り込んで逆転の2ランとなった。同じ捕手で6番打者同士の本塁打合戦となった。
その後の大江君はきちんと自分の投球を見せて危なげがない。都立総合工科の平井君も最速137キロをマークしたこともあるというストレートを主武器に、思い切った投球で歯切れがよかった。しかし、二松学舎大附打線は、平井君のストレートに振り負けない力強さがあった。
6回の二松学舎大附は4番橋本君が左へ運んで二塁打とすると、バントで三塁へ進む。ここで、今村君はきっちり中犠飛を放った。本塁打の次の打席だったが、決して力むことなく場面に応じた打撃ができるというのもセンスの良さの証と言っていいだろう。
2回に本塁打を放った水口南海君(都立総合工科)
二松学舎大附としては、大江君が安定しているだけに、これでもセーフティーリードという雰囲気だった。そして、9回にも島根君、北本 一樹君の連打などでさらに2点を追加した。
その裏、都立総合工科も一死から粘って満塁としたものの、その後を大江君は連続三振で抑えた。ここぞ、というときに三振を奪えるのも大したものなのだが、最後は2回に本塁打されている水口君だったが、三振を狙いに行って奪ったという感じだった。
大江君の好投でほぼ会心と言っていい勝利に、市原勝人監督も、
「いい感じで投げていたといっていいと思います。バッテリーとしても、いい感じで、大江の唯一のミスを今村がバットで返したという感じでした。(今村君は)本当は3番くらいに置いてもいいのですが、リード面の負担とか、そういうことを考えると今の打順で中軸が成長していってくれたら、さらに層が厚くなっていくと思います」と、貪欲さを見せていた。
しかし、その一方では、
「夏に甲子園へ行けたからと言っても、自分たちはまだまだチャレンジャーなんだという意識は失ってはいけないと思っています」と、気持ちは引き締めていた。
また、都立総合工科の有馬信夫監督は、
「4安打と14安打じゃ勝てねぇよ。特に、これからのレベルでは、打てないと勝てないよ。その意識が選手たちにはないんだよね。だから、こっちが期待して起用しているヤツも打てねぇんだよ。ここまでのレベルと、ここからのレベルの差を実感しないとね」と、都立城東監督時代に、「強豪私立に打ち勝てるチームを作らないと本気で甲子園は狙えない」という意識でチーム作りをしてきて、99年にその悲願を果たした指揮官として、改めてその信念が間違いでないということを甲子園帰りの二松学舎大附から感じ取っていた。
その思いで鍛えられて一冬過ごした、都立総合工科にも期待したい。
(文=手束 仁)