試合レポート

健大高崎vs山形中央

2014.08.22

甲子園に吹く“逆転の風”をものともしない、健大高崎の盗塁攻勢

 健大高崎が初回から“らしさ”を発揮した。

 1番平山敦規(3年)がストレートの四球で歩き、2番星野雄亮(3年)がバントで送り、打席には3番脇本直人(3年)が入るという健大高崎ペース。その初球に平山が三盗するのだが、動揺したのか山形中央の先発・佐藤僚亮(2年)のボールを捕手がスルーする(捕り損ねる)シーンがあった。
健大高崎の足攻はバッテリーのサインミスを誘うほどの威力があるということか。
1死三塁で脇本が遊撃ゴロを打って1点先制と、初回から健大高崎のペースで試合は進む。

 それに対して山形中央は2回表、先頭の4番青木陸(2年)が1ストライクからのストレートを上からしっかり叩いて右中間スタンドに放り込む。

 この大会の逆転劇は点を取られたら即取り返す、というところからスタートしている。
何やら不穏な空気が漂い始めたが、その芽を封じるように健大高崎は3回裏、打者10人を送る猛攻を見せる。

 先頭の8番横溝拓斗(3年)が死球、9番石毛力斗(投手・1年)が四球で出塁し、1番平山が三塁へのバント安打で無死満塁とし、この場面で二塁走者を石毛から持田海斗(3年)に代える。
ここを勝負どころと見た健大高崎ベンチはさすがという他ない。


 星野が一塁ゴロ(三塁走者が本塁封殺)に倒れ1死満塁となり、ここで打席に立った脇本が初球の内角いっぱいのスライダーを下から払うように打って一塁線を激しく破り三者を迎え入れ、試合は完全に健大高崎ペースとなった。

 このときの脇本の三塁到達タイムは超高校級と形容していい11.36秒。しかし、脇本は二塁を回ったあたりで一度スピードダウンしている。前の走者がストップするのかホーム生還するのか迷ったためである。それでも11.36秒で走っているところが超高校級と言われる所以である。

 ここで山形中央は2番手にエース石川直也(3年)を送り、石川は4番長島僚平(3年)をレフトフライに打ち取るものの5番柘植世那(2年)に中前タイムリーを打たれ、5点目を献上する。

 山形中央の投手陣、佐藤僚、石川はよかった。

 佐藤僚は左腕から最速140キロのストレートとスライダー、スローボールの緩急を織り交ぜる“本格・技巧”の味わいで、私は来年のドラフト候補に挙げている。
石川は今年のドラフト候補としてすでに名前が挙がっている選手で、高角度からキャッチャーミットを叩く最速146キロのストレートは今大会屈指と言って間違いない。
それでも健大高崎はわずかなスキを見逃さず足攻を仕掛けてくる。


 中盤以降の健大高崎の盗塁攻勢を紹介しよう。
5回はともに四球で出塁した4番長嶋と6番山上貴之(3年)がダブルスチール。6回はヒットで出塁した1番平山が二盗、続く2番星野の中前打で生還と、効率のよさは70年代の阪急ブレーブスを彷彿とさせる。ちなみに、得点にこそむすびつかなかったが、星野もこのあと二盗に成功している。

 8回は1死後、1番平山が二塁打で出塁、2死後、3番脇本の中前タイムリーで生還。さらに脇本が二盗して4番長島の左前タイムリーで生還と、波状攻撃が続いた。

 山形中央はよく戦った。
5回表には7番高橋稜佑(2年)、8番阿部宏太郎(3年)の連続二塁打、1番高橋裕佑(2年)、2番高橋隆生(3年)の連続ヒットで2点を奪う。

 逆転の風が吹く今大会なら、5回終了時点の3対5というスコアはどう変っていくかわからないと思わせた。

 しかし、ここで反攻は途切れた。6回以降に放ったヒットはわずか1本。
5回以降の健大高崎の盗塁攻勢と併せて見ると、足攻の効果がいかに凄まじいかわかる。山形中央の「反攻しよう」という意志を、健大高崎の足が「それは無理」と抑えつけているように私には見えた。

 なお両校の守りはよかった。
山形中央に2個の失策こそあったが、足攻の脅威は「捕ったらすぐ投げる」という意識を、とくに山形中央のディフェンス陣に植えつけた。健大高崎の脚力がもたらした果実である。

(文:小関順二)

【野球部訪問:第99回 高崎健康福祉大学高崎高等学校(群馬)】

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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