試合レポート

慶應義塾vs法政二

2014.04.21

息詰まる投手戦は慶應がサヨナラ勝ち。法政二に復活の兆し。

 今冬、関東は例年にない大雪に2度も見舞われた。2月初旬、都心で45年ぶりに25センチ以上の積雪を記録。その1週間後に、同規模の積雪を観測。関東の山あいの集落は一部、道路が遮断され孤立し、物資の流通が停滞するなどの被害が出た。
 北国のチームには積雪により冬に十分な練習ができないという不利な気象条件があるが、今年は関東のチームも少なからず雪の影響を受けたことだろう。しかし、そのような冬の間、各チームが、どれだけ有意義な練習を実践しチーム力をアップさせることができたか、試合でそれを見られるのが楽しみである。

 さて、[stadium]保土ヶ谷球場[/stadium]の4回戦、第2試合は法政二高vs慶応義塾。東京六大学の付属校同士の対戦。12時15分、試合開始のサイレンが鳴る。HOSEIとKEIO、「伝統の一戦」は、息詰まる投手戦となった。

 先攻は法政二高。慶應義塾の先発、右サイドスローの原田は1回表、法政二高打線を簡単に三者凡退に仕留める。その裏、慶應義塾法政二高の先発、河野から先頭の柳町がレフトオーバーのツーベースで出塁。続く2番山本が送りバントに失敗するが、3番三枝が死球を受け、走者一、二塁とチャンスを作る。

 しかし、ここで河野は慶應義塾の4番吉田を外の直球で、5番名幸を落差のあるカーブで連続三振に打ち取り、ピンチを脱する。続く2回裏も慶應義塾は二死から8番亀川が四球、9番田内がサードゴロ、サードの悪送球で出塁し、さらにトップに還って柳町も死球で一塁に歩き、ノーヒットで二死満塁のチャンスを迎える。ここでバッターは2番山本。山本は粘り、フルカウントとなるが、最後は河野の伸びのある直球に手が出ず、見逃し三振。この苦しい場面でも河野は地力を発揮してピンチを凌いだ。

 先発・原田の前に4回までノーヒットの法政二高は、5回、先頭の5番宮下が、風が止んだところで右中間に大きなスリーベスヒットを放ち、無死三塁と先制の大きなチャンスを迎える。 オレンジのシャツが躍動する法政二高の応援席。しかし、続く6番相原がサードゴロに倒れ、7番水上はカウント2ボール1ストライクからスクイズを試みるも慶應義塾バッテリーに読まれて三塁ランナーが憤死。結局、水上もショートゴロに終わり、法政二高は絶好のチャンスを逸する。


 しかし、序盤のピンチを脱した河野は、4回、6回と、慶應義塾打線を3者連続三振に仕留めるなど、快調なピッチングを続け、慶應義塾にもチャンスを作らせない。河野、原田、両投手の好投が続き、試合は0対0のまま最終回に入る。

 9回表、法政二高の攻撃を3人で終わらせた慶應義塾は、その裏、先頭の6番原田が明らかにボールと分かる四球で出塁。ここで法政二高は好投してきた先発の河野をベンチに下げ、ピッチャーを交代。仲島をマウンドに送る。これに対し慶應義塾は代打に大久保を送り、大久保がバントを着実に決めてランナーを二塁に進めると、法政二高は8番亀川との勝負を避け、一塁に歩かせてベースを埋め、ラストバッター田内との勝負を選択。終盤に入り、両チームのベンチが動き、攻防の駆け引きが活発化する。

 しかし、仲島はその田内にストライクが入らず、四球を与えて満塁にしてしまい、トップの柳町に打順がまわる。柳町はこの場面で期待に応え、センター前にクリーンヒット。慶應義塾が1対0でサヨナラ勝ちし、ベスト8進出を決めた。

 法政二高の先発、河野は、力のある直球とカーブのコントロールで慶應義塾の強力打線を相手に8回まで被安打2、奪三振12、無失点の快投を見せた。一方、3死球や、終盤の制球の乱れもあって最終回、マウンドを譲る形になったが、結果的には、この投手交代が試合の勝敗に影響したかもしれない。攻撃面では、5回の大きなチャンスを逃したのが痛かった。

 一方、慶應義塾は勝つには勝ったが、今日は力投する河野の前に打線が沈黙。特に5番、好打者の名幸は3三振と完全に抑え込まれた。昨年の秋季大会では、今春の選抜甲子園に出場した横浜に9回二死から逆転で敗れたものの、同校をあと一歩まで追い詰めた実力は県内トップクラスであり、また今大会も地区予選から3回戦まで圧倒的な大差で勝ち上がってきた慶應義塾だが、良い投手からは、そう簡単には打てないということを痛感できたことが今日の試合の意義となりそうである。

 勝った慶應義塾は26日、ベスト4、関東大会出場をかけて、桐光学園を破って波に乗る公立の実力校、と対戦する。 

 

(文=松田祥二郎

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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