試合レポート

塔南vs綾部

2014.04.29

大きく効いた初回の3点

塔南vs綾部 | 高校野球ドットコム 

1回に2ランを放った木曽田和也(塔南)

 1回表に3点を先制した塔南が、終始リードを保って綾部にコールド勝ちした。

 先制の場面。まずは2つの四球でチャンスを作ると、4番で主将の前田悟(3年)がレフトへ犠牲フライを放ち1点が入る。
 さらに二死一塁で5番木曽田和也(3年)。1ボール1ストライクからマウンドの綾部足立直(3年)が投じた3球目。「スライダーが真ん中にきた」と話す木曽田が反応。打球はグングンと伸び、レフトスタンドへと入る2ランとなった。
 「(前田が)犠牲フライを打ってくれて、ランナーも少なくなったので、自分のバッティングができた」と喜んだ木曽田。これが公式戦初本塁打だそうである。

 奥本保昭監督と、本人によると、元々はピッチャーで、一次戦はスタメンで起用されることはなかったという。昨年は一年間肘のネズミのため、ピッチャーとしては棒に振る形だったそうだが、ようやく投げられる状態となり、「展開次第では最後に投げさせることも考えた」と奥本監督は話すほど調子は戻ってきているそうだ。本人も、「次の試合(龍谷大平安戦)では投げるかもしれません」と意欲を見せた。

 ゲームは、塔南の先発・大江克哉(3年)が6回まで投げて1失点。7回からは左腕の川瀬智也(3年)に繋いで、8回コールドで終わらせた。


 さて、8回に塔南が4点を挙げた攻防に二つのポイントがあるので、触れてみたい。
 一つは一死満塁で、綾部バッテリーがワイルドピッチをしたのを見て、三塁走者だけでなく、二塁走者も一気に生還した場面。相手の隙を突いた見事な走塁であった。

塔南vs綾部 | 高校野球ドットコム 

綾部ナイン

 「甲子園に出るチームはその辺りのソツがない。選抜の龍谷大平安の戦いぶりを見て、走塁も素晴らしいし、ピッチャーも良いし。全てに置いて、追いついていかないと」と話す奥本監督。身近に甲子園優勝校ができたことで、選手にも刺激となっているようだ。

 そして次の相手は龍谷大平安
「春当たってみて、どれだけの力があるか。戦ってみないとわからないこともある」と指揮官は楽しみにしているようだった。

 もう一つのポイントは考察としたい。それはワイルドピッチに至る前の、一死一、三塁でのこと。
 塔南のバッターは3番藤田海里武(3年)という場面で、綾部バッテリーは初球にピッチドアウトをして、スクイズを警戒した。7対1、あと1点入ればコールドゲームにできる点差とあって、塔南はやはり得点を挙げたい。それを見越してのピッチドアウトだったのだろうが、果たして、その1点は“スクイズで取りにくる”のだろうか。

 これが夏の大会ならば、スクイズも考えられる。しかし春の大会でそこまでして、コールドゲームにするための1点に執着するのかどうか。しかも攻め手は先攻で、裏の守りがある。
 さらに守り手のピッチドアウトは、攻め手のベンチに策を知らすことにもなりかねない。結局初球にピッチドアウトをしたことで、攻める塔南は一塁走者が盗塁を決め、藤田は四球。その後に、ワイルドピッチ二者生還とボークで3点が入ってしまった。

 相手の策を深く読んでのピッチドアウトという手段は悪くはない。だが、春と夏では相手のベンチが考える策には違いがあることが多い。展開、状況、カウントなども頭に入れながら、相手の策をもう一歩深く踏み込み考えて、自らの策を編み出せれば、野球選手としてさらに成長することができるのではないだろうか。

(文=松倉雄太

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.12

【春季新潟県大会】プロ注目右腕・茨木佑太が完封!元プロの芝草監督は素材、メンタル面も絶賛!

2024.05.12

【春季京都大会】センバツベンチ外の西村がサヨナラ打!新戦力の台頭目立つ京都外大西が4強進出

2024.05.12

プロ注目の200cm右腕・菊地ハルン(千葉学芸)がセンバツ出場校との交流戦でまさかの7失点…夏までの課題は?

2024.05.12

【和歌山】智辯和歌山が和歌山東を破って2年ぶり優勝、中西が1失点完投<春季大会>

2024.05.12

学法石川の好捕手・大栄利哉が交流戦で復帰! 実力は攻守ともに世代トップクラス!身長200センチ右腕を攻略し、完封勝利!

2024.05.08

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.11

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在28地区が決定、長野では松商学園がノーシードに

2024.05.07

【鹿児島】神村学園は昨秋4強の鶴丸と初戦で対戦<NHK旗組み合わせ>

2024.05.07

【山陰】益田東と米子松蔭、鳥取城北が石見智翠館と対戦<春季大会組み合わせ>

2024.05.07

【北海道】函館大有斗、武修館などが初戦を突破<春季全道大会支部予選>

2024.04.21

【愛知】愛工大名電が東邦に敗れ、夏ノーシードに!シード校が決定<春季大会>

2024.04.22

【春季愛知県大会】中部大春日丘がビッグイニングで流れを引き寄せ、豊橋中央を退ける

2024.04.29

【福島】東日本国際大昌平、磐城、会津北嶺、会津学鳳が県大会切符<春季県大会支部予選>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.21

【兵庫】須磨翔風がコールドで8強入り<春季県大会>