試合レポート

三重vs豊川

2013.10.29

三重vs豊川 | 高校野球ドットコム

エース今井を中心に歓喜の輪ができる

優勝か敗者かを決めた紙一重のプレー

 三重が8回裏に鮮やかな逆転劇を演じ19年ぶりとなる秋季東海王者に輝いた。

 初回に豊川は先頭打者・中村胤哉(2年)の右中間を破る三塁打でチャンスを作ると、二死から5番・伊藤竜平(2年)がタイムリーを放ち先制。さらに2回にもチャンスで中村に打順が回ると、今度はレフト頭上を越す三塁打で2点目を挙げた。

 三重は夏の甲子園で2イニングを投げた経験もある新チームのエース今井重太朗(2年)が登板。序盤に2失点を喫したが、その後は7回まで追加点を許さず我慢の投球を続けた。

 再び試合が動いたのは8回。豊川は二死二塁のチャンスで、再び中村がこの試合2本目のタイムリーヒットを放ちリードを広げた。
 3点のリードをもらった豊川のエース田中空良(2年)は7回まで三重打線に6本のヒットを許しながらも、大事なところで自慢のスライダーが冴え完封ペースで終盤を迎えた。

「決勝戦で緊張してしまいチームがバラバラになっていた」三重のキャプテン長野勇斗(2年)は5回終了後のインターバルに選手同士で「もう一度ひとつになろう」と声をかけた。
 長野は打ち損じてきたスライダーへの対抗策もチームメイトに示した。
「曲がる前にバットに当てるため、立つ位置をやや前にした」という8回の打席ではスライダーを狙い打ち。左中間を深々と破る三塁打で反撃の口火を切った。

 この一打で導火線に火が付いた三重打線は長打を浴びてリズムを乱す田中に襲い掛かる。2番・内田蓮(2年)の内野安打で長野が生還し1点を返すと、後続も連打で続き逆転のランナーを含む二死満塁の場面を作った。


三重vs豊川 | 高校野球ドットコム

捕球体制に入る島快莉選手(豊川)

 この試合最大の山場で三重の6番・山本庸真(2年)が放った打球は2塁手・島快莉(1年)への強いゴロ。
 一瞬目の前を横切った走者が視野に入った島は、打球に向かい前進するのを躊躇した。
「落着いてバウンドに合わせてキャッチすれば良かったが、中途半端に打球を待ってしまった」と島。捕球直前で跳ね上がったボールはグラブの土手に当たった。豊川はエラーによる失点で1点差に詰め寄られた。
「田中が苦しんでいるところでは笑顔でマウンドに行くようにしている」と捕手の氷見泰介(2年)。県大会から1人で投げ抜き、この試合でも100球を超えたエース田中を励ました。

 勝敗を分けたのは紙一重のプレーだった。三重は1点差で二死満塁、一打逆転の場面で7番・佐田泰輝(2年)が初球をひっかけた。三遊間に転がるボテボテのゴロ。打球へダッシュした豊川の遊撃手・高桑平士郎(2年)は難しい体勢からランニングスロー。
 一塁ベースへ頭から飛び込む三重の佐田。ワンバウンドの送球が一塁手のミットに収まったかに見えた瞬間、舞い上がった土埃の中からボールがこぼれ落ちた。

 三塁走者は生還し同点。さらに二塁走者の西岡武蔵(2年)も三塁を蹴って一気に逆転のホームベースを踏んだ。

 値千金の好走塁で勝利を呼び込んだ西岡。
「二死だったので打った瞬間ホームを突くことだけを考えてスタートした」と足で奪い取った決勝点を振り返った。

 毎試合堅実な守備で田中の好投を支えてきた豊川。今井陽一監督は決勝戦の重要なところで出た守備のミスを悔やんだ。
「野手はここまで良く守ってきた。でも究極の場面でエラーが出たのは残念。打球へチャレンジした守備だったのか2人には聞いてみたい。チャレンジ精神がまだ足りなかったのかもしれない」とメンタル面での成長に期待する。悪送球が記録された高桑は
「スコアボードの『E』の表示を目に焼き付けた。絶対に忘れたくない」と勝利を掴み損ねたワンプレーを心に刻む。

9回を投げ抜いた三重の今井は、最後の打者を9つ目の三振で斬り高らかに両腕を上げた。今年の夏に続き、来春の甲子園をほぼ手中に収めている三重。東海大会3試合も勝ち抜いた新チームは公式戦8試合負けなし。県大会に続き東海大会でも優勝し11月16日から始まる神宮大会へ駒を進めた。

(文=加藤千勝

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.06.14

【福岡】九州国際大付は小倉商、東海大福岡は小倉南、春日は大川樟風、福岡大大濠は輝翔館と対戦【2024夏の甲子園】

2024.06.14

15日に夏の甲子園抽選会!超激戦区・愛知が誇る逸材を一挙紹介!素材の宝庫・愛工大名電、中京大中京の149キロ右腕…そしてモイセエフはどこまで成長したのか?今年も全国クラスの逸材が点在!【注目選手リスト】

2024.06.14

慶應&大阪桐蔭が四国の5チームに伝えた「全国で勝つための方法」とは!? 香川・徳島招待試合がもたらした財産

2024.06.14

【群馬】甲子園春夏連覇に挑む健大高崎は勢多農林と藤岡北の勝者と対戦、同ブロックに桐生第一【2024夏の甲子園】

2024.06.14

【北海道】名寄支部では、稚内大谷が名寄と対戦【2024夏の甲子園】

2024.06.14

【福岡】九州国際大付は小倉商、東海大福岡は小倉南、春日は大川樟風、福岡大大濠は輝翔館と対戦【2024夏の甲子園】

2024.06.11

センバツ出場・東北のレギュラー左翼手がプロボクサー挑戦へ! エースはENEOS、主力は國學院大、国士舘大などへ進学【卒業生進路】

2024.06.14

15日に夏の甲子園抽選会!超激戦区・愛知が誇る逸材を一挙紹介!素材の宝庫・愛工大名電、中京大中京の149キロ右腕…そしてモイセエフはどこまで成長したのか?今年も全国クラスの逸材が点在!【注目選手リスト】

2024.06.10

【沖縄】11日に抽選会!春の覇者・エナジック、ノーシードの沖縄尚学の対戦相手に注目<夏の甲子園県大会組み合わせ>

2024.06.11

【北海道】十勝支部は12日に抽選会!帯広大谷、白樺学園の初戦の相手に注目<夏の甲子園予選組み合わせ>

2024.05.21

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.05.21

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在33地区が決定、岩手では花巻東、秋田では横手清陵などがシードを獲得〈5月20日〉

2024.05.19

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在30地区が決定、青森では青森山田、八戸学院光星がシード獲得

2024.05.31

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在34地区が決定、佐賀では佐賀北、唐津商、有田工、龍谷がシードに

2024.05.20

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在31地区が決定、宮城では古川学園、仙台南、岩手では盛岡大附、秋田では秋田商などがシードを獲得